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多様性はなぜ重要なのか?

「多様性」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか?

多様性を、単なる道徳的な観点と捉える人もいるかもしれません。人種や性別、宗教などで差別するのは良くない、多様性を認めるべき、という文脈で語られることが多いからです。

そういった議論はもちろん必要だと思うのですが、実は多様性は、複雑な課題解決をし、組織やチームを成功に導くために必要なものだと言われています。

マシュー・サイド「多様性の科学」はこの多様性の理解を深めるための良書です。マシュー・サイドは、太平洋戦争の日本軍の敗戦を、組織学から読み解いた「失敗の科学」の著者でもあります。

この本の趣旨は「単純な目的であれば(例えば陸上のリレー)、単一の能力に秀でていることを最優先してチームの構成員に選んで問題ないが、目的が複雑な課題解決になればなるほど、チームの構成員に“多様性”が重要になる」ということです。

筆者はアメリカの9.11を防ぐことができなかったCIAの失敗の原因に、多様性の欠如を指摘しています。アメリカの中流階級の白人でメンバーの大半が構成されていたCIAは、分析や問題感知の観点が画一的で、多様な人種や文化背景があるメンバーであれば簡単に察知できたであろうテロ組織の動向に気づけなかった、というのです。

この「多様性」の重要性は決してCIAのような我々一般人からすれば別世界の特別な組織の話だけではなく、一般的な会社組織でも同じです。

似たようなキャリアバックグラウンドや、専門分野の人を集めて、偏った分析観点から議論してプロジェクトを進めることで、安心してしまっている。そんなことはないでしょうか。

トップの意見に下が同調せざるを得ない空気が蔓延し、反対意見、多様性のある意見が出なくなり、ずるずる業績が落ちているような状況がないでしょうか。

成長市場で、大して複雑な対策や意思決定を必要としない場合であればそれでも良いかもしれません。でも、競合が多く変化の激しい市場などでのビジネスであれば話は変わってきます。複雑な状況を多角的な観点から分析し、対応策を議論する必要があるからです

私が現在働いているグローバル企業では、この多様性を非常に重視し、様々なバックグラウンドを持つ人たちが働いています。これによって、組織が硬直せず、イノベーティブなアイデアや事業が生まれると考えられているのです。また、個人としても、多様性がある職場環境には「こうあるべき」という暗黙のルールやプレッシャーが少なくなり、伸び伸び働けるように感じます。

「多様性は組織にとっても個人にとっても意外と重要」という話でした。

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