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第二話 【ラオスへ行けない】2008年2月28日午前 タイ・ラオス旅行記

空港へとんぼ返り

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不安を抱えてはいるものの、眠い時は実際眠れてしまうもの。
だが出来るだけ時間を無駄にしたくなかったので朝6時に起床。睡眠時間はわずか3時間。でもちゃんと起きれた俺は偉い!

タイにしては良い値段のホテルだったので、皮肉なことに寝心地ははっきり言って僕の下宿よりよかった。お湯つきシャワーがでない環境に慣れているため、お湯がでるシャワーを浴びれるほど使えるのは非常に嬉しいことなのだ。

まぁもうこの際高い値段払ってしまったことは忘れることにしよう!

金よか安全よ!

そう呟きながらチェックアウトを済ませる。
すると空港までなら無料で送ってくれる、というので送ってもらうことに。
そもそも送ってもらえなかったら途方に暮れる以外の何物でもない状況もいだったので格別感謝の念は沸かない。

早朝の空港までの道は深夜と違って非常に長閑。あの怪しげな雰囲気は何処いったんだ!
通勤用原付の大群、我が物顔で道に居座る野犬の群れ、トラックの荷台に載せられて移動する人間、などを車窓で見ながらタイにやってきたという事実を再認識。


そして空港に再び舞い戻る。

深夜と違って不穏な空気は全く感じられない。
きっと普通の旅行者はこの空気をまず最初に感じるんだろう。深夜到着の格安航空券だったからこんな嫌な思いをまずしてしまったのだ。


まぁそんなこと言っても仕方が無い。空港を再度脱出する必要がある。対策を練るために適当なレストランに入り食事を済ませる。腹が減っては何とやら、という奴だが、今思うとあのホテルは1000バーツもとって朝食すらない、というのは本当に酷い。

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ただ頼んだアイスハーブティーに砂糖が沢山入っているのに萎えた。いきなり出鼻を挫かれた。今後は砂糖なしと注文をつけて頼もう。
タイ料理は今や日本でもかなりメジャーになったので格別感慨はなかった。あと流石空港に店を出すだけあり、結構値段も良かったが(150バーツ)かなり辛いことを除けば味も中々。

空港脱出計画


空港からバンコク市内に入るには主に4種類の方法がある(注2008年当時)

1:リムジンを使う(最低700バーツ 注2500円ほど)
2:メータータクシーを使う(約185バーツ 700円くらい)
3:エアポートバスを使う(150バーツ 550円くらい)
4:路線バスを使う(最高で30バーツ 100円くらい)


もう四番しかないだろう


ということで路線バスのターミナルとなる場所へシャトルバスで移動することに。
しかしシャトルバスの停留所が全く分からない
地球の歩き方の地図に書いてあるところに行ってもそんな気配は全く感じられない。空港の地図や標識を頼ってもやっぱり無い。何だかんだで30分くらい空港をウロウロ。その間何回も客引きに声をかけられたが無視。

ようやく人が沢山溜まっている場所を見つけ、そこにバスのマークがあったのでそこで待つことに。一応シャトルバス専用の停留所らしいのだが、全然関係ない個人のバンや、何処にいくのか分からない路線バスも容赦なく停まり、現地人が悠々と乗っている様子を外国人である僕はただ恨めしそうにみるしかなかったのがただただ悲しい。

15分ほどして漸くシャトルバスが来たので乗る。シャトルバスだけあって殆んどの客が空港の敷地で働くブルーカラーの人々。なんか場違いなところに来てしまった、という思いが頭を過る。
10分ほどして空港にあるバスターミナルにつく。因みにこのシャトルバスは無料。無料ということはぼったくりのリスクがゼロということなのだ。

しかしこのターミナルで問題が。

どの路線バスに乗ればいいのか分からない


僕は極力長い間ラオスにいたいので(それが旅の目的)さっさとバンコクにある鉄道まで行きたいのだが、その駅まで行く路線バスの番号が書かれているバスが全く無い。
タイの路線バスは凄く複雑で、それでいて現地慣れしていない人間を置いていく様な仕組みになっている。バスにはただ番号が書かれているだけで、その番号ごとに路線が決まっているのだが、その番号が何処に行くかは路線表を見ないと分からない仕組み。

勿論路線表は買ったのだが、それを見てもどうも合点が行かないところが沢山。バス停には停まるであろうバスの番号がふってあるのだが、何故か乗ってない番号のバスまで平気で来ており、外国人を混乱させる。
そしだけなら良いのだが、望む番号のバスが来ない。バス停にその番号が書いてあるにも関わらずである。

空港のバスターミナルで30分ほど待ったが、埒があかないのでまた空港のコンコースに戻る。そして地球の歩き方で酷評されていたエアポートエクスプレスに乗ることを決意。何故ならそのエアポートエクスプレスの終着点がラオス国境まで行けるタイ国鉄の駅、フアランポーン駅だったから。

もうわけ分からん。評判悪くてもとりあえずバスだし安全面は大丈夫だろう
凄く損した気分になりながらも背に腹は代えられぬとエアポートエクスプレスに乗る。

中々出発しない、と書かれていたが運が良かったのか20分くらいで出発
悪評のせいか乗客が僕を含めて3人しかいない。こんなんじゃ破産するだろ……30分ほどバスに揺られようやくバンコク市内へ。

バンコク市内へ。悪徳職員との闘い

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バンコクは本当に都会、いや大都会。高層ビルが並び、あちこちに背高の看板が並ぶ。その一方で何処かしらで工事をしており、鉄骨がむき出しになった建物も多く見られるが、その傍らには朽ち果てた廃墟、トタン屋根の長屋が立ち並び怖ろしく汚いスラムなども共存しており、東南アジアの覇者の首都らしい、というのが率直な感想。

あとマンションでもアパートでも長屋でも皆洗濯物を鬼のように大量に干しているのが何だか笑えた。数が多すぎ。

車内では何のトラブルもなく意外なほどすんなりとフアランポーン駅に着く。

だがここで突然運転手に呼び止められる。


何かまずいことしたか!いや絶対大丈夫!無視無視!
早々と逃げようとしたが、外で待ち構えていた他の職員に見事捕まってしまう。複数の人間に囲まれ身動きできず。もう嫌でも話を聞かなくてはいけない。


「Hey Sir!! 電車に乗るんですよね?何処までですか?」
「え、あ~ノーンカイ(ラオス国境沿いの町)です」
「なら私たちのところのバスに乗りませんか?電車は高いし、時間もかかるし不便です!」

そういいながら時刻表を見せるタイ人たち

「電車なら1680バーツもかかりますが、わが社のバスなら1000バーツです!どうです!絶対こっちの方がいいでしょ?」

もうこういうのは完全にぼったくりだと相場が決まっているし
よく分からないところの夜行バスなんてそれこそ死にに行くようなもの。

何度もNo!と言って拒絶の意思を示してるが意に介さず夜行バスのチケットを売りつけてくる。

空港脱出までスムーズだったので、油断していたがこういう事があるからエアポートエクスプレスは評判が悪いのかと納得。だが今はこの状況を打破しなくては何処にもいけない。まさににっちもさっちもどうにもブルドッグという奴である。

I hate Buses! SORRY! I hates Buses!

そう叫びながら相手を突き飛ばしつつ囲いを強行突破。我ながら I hates Busesとはなんと滑稽なフレーズなのだ。追いかけてきそうで怖いので重いザックを揺すりながらも駅構内に早々に入る。駅構内には(彼らも信用できるとは限らないが)沢山の鉄道警官がいて、流石にそこまで深追いはしてこなかった。
だが恐る恐る遠目から外を覗くと、その客引き連中はずっと駅の入り口で僕を待ち構えていた。南国タイにも関わらず嫌な冷や汗が出た。

タイ国鉄の職員から切符を買う

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もうさっさと電車に乗ってタイを脱出したい!!目的はあの平和な国ラオスなんだ!

何処を探しても時刻表や料金表が無いので困るが(地球の歩き方にも載ってなかった)外国人専用窓口があったのでとりあえずそこに並んで切符を買うことにする。まぁ何とかなるだろう、一応奴らは国鉄の公務員だし多少は信頼の置ける連中ではあるだろう。と、希望的観測を胸に抱いて、窓口の若い男に話しかける

だが何度話しかけてもその男は全くこっちを見ようとしない

わざと目線をそらしてひたすらパソコンのF11キーを連打

何度も何度も声をかける

しかし全く相手にしてくれない
それどころか机の中からガムを取り出し噛み出す職員、そして包み紙を捨てに行くためなのか、いきなり席を離れ出す。

こいつ本当に大丈夫なのか?不安は募るが数分後、戻ってくると一応相手はしてくれた。

行き先を告げるとダルそうにしながら切符を発券する若い職員
そして発券中も何故かF11キーをひたすら連打。ガムの噛み方が悪党官僚のようで凄く印象が悪い。例えるならウルトラセブンに出てくるロボット長官の脇でコリコリ音を言わせている憲兵みたいな奴にソックリ!


だが発券が完了しても、全くその券を渡す素振りは見せない。
そもそも値段も出発時刻も全然教えず、いきなり発券を最初にしてきているのもオカシナ話である。

これはもしかして賄賂を要求しているのか?でも何でこんなことで、ただ切符を買うだけのことで賄賂を渡さねばならぬのだ!

こうなったら根競べである。

2分ほど冷たい時が流れたが、相手も根負けしたのか漸く話しかけてきてくれた。

「クラスはエコノミー?なら673バーツね」

673バーツ!エアポートエクスプレスの連中は1680バーツと言ってそれらしい時刻表を見せたのに!
全く以って信用なら無い連中だった。観光客をぼったくることしか頭に無いのか?無理矢理でも振り切ってよかった。

改めてこの国の恐ろしさをかみしめながら最高紙幣である1000バーツ札で払う。

しかし今度は中々お釣りをよこさない。
それどころか乗車券も全くよこす素振りを見せない!!


これはまずい!金を上げてしまった以上こっちが不利。
もらっていないデース!とポケットナイナイの水掛け論に持っていかれる危険性もある。やらかしてしまったか!と後悔の念に襲われる。

その間、ただF11キーをひたすら連打する職員。実に不快。何か端末を操作している風を装っているのだろうが手元が丸見えであり、ただF11キーしか押していないことをこちらは分かっている。


もうこっちも腹が立ったので「Ticket & Change Please!!!」と何度も叫ぶ。
今日は朝から叫んでばかりである。


2分ぐらいでやっと職員は折れてくれたのか、無事お釣りとチケットをやる気なさそうに何の誠意も込めず渡してくれて一安心。
一応お釣りも確認。ちょろまかしはなし。わざと職員の見えるところでゆっくり数えて確認して少しでも溜飲を下げようとする。意味のない嫌味な行為を異国でする自分の器の小ささよ。

とりあえず、ラオスへの道がまた一つ縮まった!安心するのはまだ早いが、一つでも障害を越えると言いようのない安心感が出てくる。達成感というより安心感という言葉の方がこの時の心理を正しく表している。

このチケットがあれば国境まで行ける!
感動のチケットを見てみると

departure:20:30

夜八時かよ!遅すぎ!


後でわかったことだが、そもそもタイの鉄道は本数が極端に少ないらしく、これでもまだ早い方とのこと。因みに今の時刻は12:40くらい。
そもそも朝起きたのは6時頃だったことを思うと、たったこれだけのにことをするのにここまで時間がかかってしまったことに軽い絶望を覚え、さらに鉄道に乗るまでまた時間を潰さなければいけないのか、と思うとまた絶望的な気持ちになった。

電車出発まであと7時間

折角だからバンコク観光でもするか!と気持ちを切り替える。しかしこんな胡散臭い連中ばかりいる都市に長期間いたくない、というのがこの時の正直な感想。そもそもバンコクにあまりいる気がなかったので、事前調査を殆んどしてこなかった。

知っているのは飛行機の中で読んだ地球の歩き方バンコク編に書かれていることだけ。でもピンチはチャンス!世界有数の観光都市であるバンコクを観光するのは非常に良い機会であることには違いない。
気持ちを新たに駅を出ようとすると、さっきの悪質業者がまだウロウロしていて早速躓く。
途方に暮れたが、駅のホーム(当時は駅のホームへの出入りが自由だった)に入り、線路を直接歩いて適当な所で道路に移っていた現地人が何人かいたため、彼らの後ろをついて行って無事裏口から脱出。例の悪徳業者を無事巻くことができた。何事も観察は大事である。


だが何でタイまで来てこんなことしなきゃいけないんだろう?

ともかく残り7時間。できるだけバンコクを満喫しようと心に決めたのであった。

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