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#30 渡英3週目突入も、トルコ文化ばかり触れている矛盾 30代からの英国語学留学記 2018年2月26日

この日で渡英3週目に突入。
しかし一向に英語力が向上している気がしない。焦る。


だがシナンが強いたハードワークのせいで筋肉痛が酷い。

昨晩の時点で既に酷かったか翌朝になると余計に酷い。階段を降りるだけで一苦労である。異国で深刻な筋肉痛に苛まれるとは思わなんだ。

「NO PAIN, NO GAINだ!筋肉痛ということは成長しているということさ!」


ペンギンウォークでバス停まで向かう僕を見てそう励ますシナン。
あいつは全く平気とのこと。何故なんだ!

通学バスでは運よく座れたため、先日物理的に出来なかった宿題を車内で済ます。30過ぎて英語の宿題を必死にバスで解くなんて惨めである。2階建てバスの2階部分のため車内が揺れて非常にやり辛い。

「宿題なんてやめろ!バスの中はスマホでゲームやSNSをすべきだ。」

何故か妙に不機嫌になり、僕を怒り出すシナン。
それもこれも元はと言えばお前のせいだぞ。

知り合いが目に付く場所で宿題やら仕事をしていると興醒めし、若干不愉快になるのは分かるのだが、わざわざそれを口に出しちゃうのが、シナンという男である。

オックスフォードのシティーセンターの石畳を全身筋肉痛で歩き、学校へ向かう。いつもより距離が遠く感じる。肝心の授業も身体が痛くて中々身に入らない。
3週間経っても未だに授業にはなれないし学校にも馴染めないことへの焦りばかりが募る。構ってくれるのはもうすぐ母国へ帰るカルロスと、面倒なトルコ人のオヌール、そしてシナンしかいない。

3人もいれば十分じゃないか、うん。そう思い込むことした。

特にシナンは同居人であり、異常に押しが強いが何かと世話を焼いてくれる良い奴である。彼と同じ家に住めたのは最大の幸福である。
そもそもホストファミリーが全然構ってくれないのは残念過ぎる話なのだが

昼休み、カルロスは帰国までの最終週ということで、何かとやりたいことがあるようで、今週はあまり一緒になれないとのこと。

オヌールと二人っきりは勘弁、と心の底から思ったのだが、普段は他のメンバーとランチを食べているシナンがたまたまフリーとなっていたため、3人でケバブ屋に行くことになった。

しかしケバブ好きな連中である。
特にオヌールの昼食はほぼ毎回ケバブ。渡英して3週間なのに既に10食は食べている。
トルコ人にとってケバブは主食のようなものなのだろうか。折角の機会だからチャレンジしろよ、と思うのだが


カジュアルな店であったが、店員含め、僕以外全員トルコ人

そのため店内ではトルコ語のみが飛び交っている。
シナンもオヌールも、店員や他の客と母国語で何やら熱く盛り上がっている。
週末に行われたトルコ国内フットボールリーグの一連の試合について話をしていたらしい。

だが二人とも話に夢中になり過ぎており、午後の授業が始まる直前になっても店を出る気配がない。午後の授業がないシナンはともかく、オヌールにも午後の授業がある。

早く店を出るよう促すも二人とも全くこちらの話を聞く気配がない。
仕方がないので一人で店を出ようとするが、二人に遮られた。

トルコでは独りで食事を終えて席を後にすることは、非常に無礼なことだからやめろ!!、とのこと

ここはトルコじゃねぇよ。
イギリス、イングランドのオックスフォードだよ

ここの語学学校は遅刻に非常に厳しく、1分でも遅れると出席自体認められない。僕は仕事を辞めて自腹でここまで来たのである。こんなしょうもない理由で授業を受けられないのはやりきれない。

遅刻すると授業受けられないから!俺は一人で出るぞ!改めて強く主張し、やっと二人は僕を解放してくれた。
オヌールは授業よりも母国語によるフットボール談義を優先させたわけだが、僕にはちょっと理解できない。親のすねかじりめ!

筋肉痛で痛む身体をおして学校まで急ぎ、何とかギリギリ授業には間に合ったのだが、こんな経緯があったのでいつにも増して全く集中できなかった。


渡英してからトルコ人とばかり絡み、そして振り回されている。


僕は英国文化と英国英語を学びにイギリスのオックスフォードまで来たのに何故かトルコ文化ばかりに触れている。なんてこったい。

日本在住では出来ない貴重な経験と言えば経験なのだが。

中々これが疲れる。

ここで同居人のトルコ人シナンについて。

22歳と若く、太陽光発電関係の仕事に就いた後、英語を勉強するために一時休職をしてここオックスフォードに来たとのこと。

初めて来たときは英語が全く分からなかったらしいが、持ち前のコミュ力でひたすら色々な人に話しかけまくったり、毎日Netflixで英語のドラマを見まくっているおかげでだいぶ力をつけたとのこと。

そんな彼とはほぼ毎朝毎晩一緒にご飯を食べているのだが、その度に彼のインスタグラムのタイムラインを見させられる。

シナンや地元の友人たちの日常写真や動画だけであれば微笑ましいのだが、大半はトルコでバズっている面白画像・動画集の類を得意げに毎度見させられる。

これが日本人で既に三十路である僕の感覚では、正直キツイと言わざるを得ない代物ばかり。

通行人に吐しゃ物を吐きかけたり、公共の場でロケット花火を爆発させる類の悪質な悪戯、えぐい交通事故などの物理的に痛い事故の瞬間などのグロ動画、黒人やアラブ人を矮小化し皮肉っている動画や画像、やたら尻のでかい女子のセクシー画像や動画等多岐にわたるのだが、正直これがキツイ。

加えて大抵の動画には如何にもなトルコの民族音楽がバックで流れており、スローモーションやリピート等のエフェクトがクドイぐらいに多用されており、それが何とも言えぬキツさをより高めている。

一方でトルコ建国の父であるムスタファ・ケマル・アタテュルクの名言集がタイムラインにシレっと混じっているのが興味深い。なおシナンだけではなく、オヌールもムスタファ・ケマルのことを心の底から大変尊敬しており、トルコ人の若者なら全員そうだと主張してはばからない。
グロ画像・動画に交じって建国の偉人がタイムラインに混じるのはそれでよいのだろうか、と僕の感覚では思うのだが。


そんなものを見させられながら一応話を合わせるために、it's so funny!などの乏しい語彙力で相槌を打つのは神経を使うのだが、これも英語力向上のためだ、と割り切っている。

これが2018年のトルコの若者文化であり、僕も同じ年代だったら心底楽しめたのだろうか、とふと考えることがあるが、根本的な所で価値観が大きく異なるため、それはないだろう。

多分、年齢の問題ではない。

シナンは情に厚く感情表現豊かで愉快な人なのだが、恥じらいもなく黒人やアラブ人への差別発言を公言したり、相手不在の親切の押し売りが強いなど、妙に攻撃性が異常に高い所が時に恐ろしく感じる。

また女子へのアプローチというか圧力が凄い。シナンは外見も整っておりコミュ力もあるからなのか、トルコ本国にガールフレンドが6人もいるらしく、ここオックスフォードでも学校の内外で様々な若い女性と話をしている姿を良く見る。シナンに限らずオヌールでさえも女子へのアプローチには積極的だ。トルコ人男性特有の気質なのだろうか。

シナンは女性関係に関するクライシスを何度も経験してきたので、一人ではなく複数の女性と同時に付き合うことで誰が自分に一番合うのか試しており、それは相手の女性にとっても良いことであると宣っていたが、正直自分の価値観とは大きく異なるものであるため、時にモヤモヤした気持ちにさせられ、反論したい気持ちにかられるのだが、そこまでの語彙力がないため、結局諦めて適当に相槌をうってしまっているのが情けない。

ただシナンのように、向こう見ずなまでの前向きな気持ちを持ち続けるのが上手く人生を渡っていける鍵なのだろうな、と思うこともあるが、素直にそうだと認めたくない気持ちも同時に僕の中にはある。

基本的には良い奴なんだけどね。
これも貴重な経験、だがやはり心身ともに疲れる!

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