【まくら✖ざぶとん】⑤②『愚痴漫談』
ねえちょっと、そこのアンタ、聞いてんのかい、とはじまったのはほかの誰でもないこのアタシのハナシさ、なにやら風物詩人だの言業師だのと気取った噺家が続々と出てきたようだけど女の噺家はこのアタシただひとり、やることやらなきゃ男は廃るけど女は流行りにのっかってけばいいってわけ。
言っとくけどね、オネエじゃないわよ。正真正銘、言いたいことは歯に衣着せずなんでも言っちゃう純真無垢な女なんだから。御意見番がコメンテーターならクレーマーの御文句番ことアタシの一席は愚痴漫談、二言三言じゃ済まず小言を白のパンダのごとくどれでも全部並べ立てなければ気も済まないし、高座にのぼったら語るに語るカタルシスにのぼせあがるだけ。
のぼせあがるといえば、そうそうアタシの好きなタイプの男はね、美男子に貴公子からあわよくば御曹司でもいいけど皇太子はいきすぎ、単純にイケメンっていうよりも叶姉妹の呼び方を借りてグッドルッキングガイよ。叶姉妹ももういっそのことカムトゥルー・シスターズなんて名乗ったらどうかと思ったりもするけどそれだと大柴ルーの匂いがしちゃうかしら。
イケメンなんて言葉は使い勝手がいいから使い古されてるだけ、その点グッドルッキングガイたるもの文字通り見た目が十割の潔さ。すらっとした長身に顔の小さい八頭身男子がいたらその胸にガバッと投身。品もよければお行儀もよくて、アタシのニガテな料理なんかをスマートにこなしながらニヒルな笑みでチクリとヒニクるような男がいいわね。そうね、有名人でいえば向井理、呼び名ならぬ読み名は「むかい・り」みたいな人が現れたらもう有無を言わさずアタシの家系に迎え入れる「むこい・り」上等、嫁入り下等!
そんな理想の高いアタシがよ、まだ見ぬ向井理を求めてクラブくんだりまで繰り出してみたってのが今日の噺。爆音の重低音にノってステップを踏みつつフロアに横目をチラリと走らせてグッドルッキングガイを探せども、カゲもカタチもカタオチもカタオクレもいやしない。そのうちに目が血走ったらもう血眼、タタラを踏んでジダンダも踏んでたら寄ってたかったのはどいつもこいつもバッドダンシングガイのそろい踏み。この状態ってあれでしょ、まさに百ガイ在って一理なしってことで、お後もご機嫌よろしくって。
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!