【まくら✖ざぶとん】⑦④『無限階段』
今や学生諸君は夏休みに突入して向こう一か月はレジャー放題、今年は猛暑だけに海やプールもいいけど涼しい美術館も狙い目、てなわけで昨日の昨日まで大盛況だったミラクル・エッシャー展のレビュー放談。
版画ながら漫画にも汎用できそうなキャッチーなキャラクターは〈でんぐりでんぐり〉、えっしゃほいしゃと魚に鳥や蜥蜴のモチーフを重ねて連ねて繰り返して反復する模様に紋様は平面に広がる万華鏡。
錯視をもたらす策士は策に溺れることなく見る者だけを視覚のトラップにハメるトロンプ・ルイユたるだまし絵で視点をぼかす化かし絵、片方のパターンが浮き彫りになるや他方のパターンが沈み込む様子こそ彼方を見れば此方が見えず、でんぐりでんぐりからのぢれんまぢれんま。
多元化した画面の空間万有引力を無力化するのも得意なら無限化した模様で観る者の空間認識能力を無力化するのも得意、人間の視覚現象をもとに現風景を認知する回路の限界を認識させて幻術忍法のごとく幻風景を見せつける…にん・げんがむ・げんに重なり連なって繰り返されるのがこの絵。
稀代の版画家の作風と手法を画面から文面に描き出してみるべく技巧の限りを尽くしてもぎこちなかったのはご愛嬌、遊び心に満ちた絵を見れば言葉遊びもしたくなろうもの。展示の目玉たる《上昇と下降》の無限階段ことぐるぐる堂々めぐりの永久回廊なる永久回路は西洋美術のA級絵画。オチに落としたくとも無限階段からは落ちることもできずに堂々でんぐりでんぐり!
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!