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酔いどれ小説【ベロベロノベロ】alc.2%『終電』


終電がなくてよかった。

そう思ったことが、一度だけある。
いつだったか、そこまでは思い出さなくていい。
幾度も別れては付き合った昔の恋人と何度目かに別れた日、今となっては何回分の一の別れかもしれないけど、当時はそれに慣れていたわけでもまた付き合うだろうと思っていたわけもなく、一回一回が真剣そのもの、いざ別れるとなれば胸は大騒ぎ、頭は空回り。

別れ話ったらもう、だらだらと長引くものだ。
同じ問答、似たようなやりとりがループする。
そのうちに、終電がなくなった。
相手は徒歩圏内で、自分は電車移動だ。
ようやく独りになったとき、綯(な)い交ぜになっていたのは、やりきれなく思うニヒリズム、やりきったと感じるカタルシスだった。
今となってはもうできないし、やったとしてもすぐに諦めるだろうけど、その境地が僕を、走らせた。
別れを告げたのは、自分のほうだ。
相手は泣いていたけど、自分は泣かなかった。
涙のかわりに、汗を流した。
終電が、なかったおかげで。

えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!