【まくら✖ざぶとん】①⑨①『伊勢・尾張紀行』
えー、ご時世もご時世ならいつとは云わぬが旅に出かけてきたらその一節を書いて一席をかけねばならぬのが紀行文、前回の東北方面に続いて此度は東海地方へレッツラゴー。
いやはや参った、とばかりに食べたい物がまったくもって思いつかなかったとある晩のこと、尾張に名物のモーニングでも食いに行くか、と思い立ったが吉日ならぬ吉時、深夜から家をあくせく出発してアクセル踏み込んで車を走らせること数時間、尾張に達するあたりで時計はしかし午前五時前、モーニングを出す喫茶店はまだやっていないが思いつきの旅にゃ守るべき予定も辿るべき行程もあってないようなもの、勢い余るがごとく尾張をあっさりと通り過ぎて到着したのはお伊勢さんこと伊勢神宮。いやはや参った、とばかりに外宮から内宮を詣でた後に寄ったのが神社に合わせて早朝営業している赤福本店、モーニングを食べに出かけた流れで赤福餅にありつくこのくだりこそ棚からぼた餅ならぬ朝からぼた餅。
まくらの紀行文といえばついてまわるのが動物園めぐり、足を伸ばした世界に名だたる鳥羽水族館はジュゴンにマナティー、パンダイルカにアリゲーターガーまで珍しい水獣たちが目白押し。中でも目を引いたのは〈生きた化石〉ピラルクと〈笑うクジラ〉スナメリ、ピラルクの頭部に刻み込まれた複雑な紋様とスナメリの全身を包み込んでいる純白の質感はいずれも神秘的ではあれど同じ神さまの作品とは思えぬほど、例によってキャッチフレーズをつけるならそれぞれ〈神さまの こうげいひん/しさくひん〉。
水族館を出たと同時に腹から出たのはぐうの音、鳴くのなら・食ってしまおう・ヒツマブシ、モーニングは食べ損ねてもランチがあるぞ、と遅れ馳せながら尾張に寄っての「なごやめし」は深夜から駆けずり回った強行軍のシメくくり。目星をつけた店は昼メシ時をとうに過ぎてるのに満席、順番を待つ間のひまつぶしになったのは店にやって来た〈ウーバーイーツ・UberEats〉の配達員。老舗っぽいうなぎ料理屋も都心部に二号店や三号店をどんどん出店する尾張の地ではひつまぶしさえもデリバリー、思わず飛び出たのがこのセリフ、あれぞすなわち〈ウーナーギーツ・UnarGEats〉だぎゃ。
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!