酔いどれ小説【ベロベロノベロ】alc.1%『すききらい』

人間は、自分の好き嫌いのことばかり話す。
何を好きになり、何を嫌いになるか、それこそが自分のアイデンティティであると思いがちだけど、突き詰めてみるとそうではない。

好き嫌い
ってのはつまり、喜怒哀楽喜怒喜びと怒りのことである。
喜怒哀楽哀楽哀しいときは涙が出るし楽しいときは笑顔になるけど、喜び嬉しい怒り腹立たしいはそこまで単純ではない。無表情で喜ぶ人もいれば仏頂面で怒る人もいるが、傍から見ると見分けがつきにくい。
喜びと怒りは、胸の内にふつふつと湧き上がってくるものである。湧き起こってきた感情を分類するために、人は言葉にしてみようとする。言語化するってことはつまり、説明するということだ。
喜び(=嬉しさ)を説明するうちに、人はそれを好きなのだと自覚する。
怒り(=腹立たしさ)を説明するうちに、人はそれを嫌いなのだと自覚する。

それがアイデンティティなのではなく、説明のほうにこそアイデンティティは表れる。
ここに喜びを感じるから、私はこれが好き。
ここに怒りを感じるから、私はこれが嫌い。
ここに喜びを感じるのが、私。
ここに怒りを感じるのが、私。

人間は、自分の好き嫌いのことばかり話す。
でも、好き嫌いは簡単に裏返ったりもするから、先に、そして常に喜びと怒りについて語ったほうがいい。
あなたの喜びは。
あなたの怒りは。

えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!