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『メタ認知』

2024年5月4日、みどりの日。ニセコの花園地域にあるホテルで目が覚めた私は、本日が14年ぶりに実現した家族旅行の2日目であることをさっと理解し、重い頭を傾げて枕元のアナログ時計に目を配った。

自律神経の乱れにより睡眠に苦労していたここ最近。体温が下がらずに一睡もできない日が続いたり、仕事のトラウマを想起させる悪夢にうなされること、あるいはびっしょりと寝汗をかいた状態で深夜に目が覚め急いで冷水のシャワーを浴びることもあった。

時計の針が5時半を少し過ぎたあたりを指していることを確認した私は、この日は大きな問題なく睡眠にありつけたことに少し安堵する一方で、5時間ほどしか眠れていないことに少し苛立ちつつ、白のブラインド越しに部屋に入り込む日差しに抵抗するようにして二度寝を試みた。

結局、二度寝は成功しなかった。7時ごろに入眠を諦めた私は、眠い目を指でこすりつつ、冷水と温水のシャワーを交互に浴びていた。今日の旅程におけるToDoを頭の中で整理する傍ら、ここ最近のメンタル不調から脱するヒントを得ようと読み漁っていたいくつかの自己啓発本で共通して取り上げられていたメタ認知について思い出した。

メタ認知とは、自らの感情や体の感覚、思考、行動などを客観的に捉えて制御する手法のことで、認知のゆがみの把握に役立つ。認知のゆがみとは、物事を自分の考え方のクセに従って解釈し、客観視しづらくなっている状態のことで、認知のゆがみが強いと、自分の思考でストレスを抱えることがある。例えば自らの過去の失敗を何度も思い起こして自責をしてしまう場合、「私は過去の失敗を思い出して、自分を責めてしまっている」と「私が〜している」と自らを俯瞰した視点から表現してあげることで、反芻思考に陥っている自らの思考のクセを把握することができる。

このメタ認知はメンタルの回復力にとって重要なのはいうまでもなく、例えばスポーツにも有効だ。例えばローイングにおいてオールのブレードを水面に対して平行から垂直に回転させてあげること(=フェザリング)のタイミングが遅いという行動のクセがある場合、ただ他人から指摘されるだけではなかなか解決に結びつかない場合が多い。そこで客観的視点から撮影された映像が役に立つのだ。映像を通じて自らのフォームを把握することで、理想に対して自らがどれくらいフェザリングのタイミングが遅れているか、腑に落ちることで、行動の修正が容易になる。

シャワーから上がって身支度を済ませた私は、家族とともに朝食会場に向かう途中で、大窓から望む羊蹄山の姿に息を呑み、思わずカメラを向けた。大自然の畏怖を目の当たりにすると、174センチの私が抱える悩みごとなんてちっぽけに思えてしまう。それもまた、いい意味で私の思考のクセなのかもしれないと、noteに記しつつ思う次第であった。


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