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第3回 学校のピンチを、研究でチャンスに変えて(後編)

明星大学 通信教育課程

石黒 康夫 専任教授(桜美林大学 リベラルアーツ学群 資格・教職センター)

前編では、中学校の校長を務めながら、明星大学の通信制大学院で生徒指導システムについて研究していた時のことについて語っていただきました。

 後編では、それまでの研究をさらに深めた博士課程でのお話と、これから通信制大学院への入学を考えている方に向けてメッセージをいただきました。どんな立場であっても、何かを解決したいという思いがあれば学びの扉は開かれている。今現在、課題を抱えて悩んでいる方も、お読みいただければ、きっと勇気がもらえると思います。


博士課程に進まれてから、生徒指導システムの研究はどのように発展しましたか?

 より実践的なものになっていきました。例を挙げると、抽象的な理念と、具体的な行動の結びつきについて掘り下げていきました。私が校長として勤めていた荒川区の中学校で生徒や教師とつくった望ましい行動のルールは、「友達を大切にする」とか「素直になる」とか、抽象的なものです。これを具体的な行動にするためにどうしたらいいかを考えました。

 実際にやってみたのが、たとえば「友達を大切にする」ということはどういう行動なのだろうかと、学活などで生徒に考えさせることでした。まず自分で考えて、グループで考える。発表して、クラス全体で意見を集約する。そうすると、「名前にさんを付けて呼ぶ」とか「休み時間に一人で遊んでいる子に声をかける」とか、友達を大切にするという行動はいっぱいあることに気づきます。

 ここで大事なのは、「友達を大切にするということは、名前にさんを付けて呼ぶことだ。名前にさんを付けて呼ぶことは、友達を大切にすることになるんだ。」と、抽象的な理念と具体的な行動を頭の中で行き来して、理解することです。そうすることによって、ひとつの理念に対して、生徒たちの捉え方が多面的になり、より汎化が進むのではないかと考えるようになりました。

前編で、生徒と教師でつくり上げたルールを一過性で終わらせず、継続させるための仕組みづくりを課題に挙げられていましたが、どのような解決策を見つけましたか?

 今回お話ししているスクールワイドPBSをベースにした生徒指導のシステム以外でも、学校では生徒が卒業したり、先生が異動したりするたびに、どんなにいい取り組みであっても数年で消えてしまうということが多々ありました。そうしたことがないようにするために、どうしたらいいのかを考えた結果、「毎年、必ず中身を見直す」という答えにたどり着きました。

 その時々の生徒会が主体となって、全校生徒と教師で大切にすることを見直す。新たに課題になっていることは加えて、達成できていることは項目から外す。引き続き課題に感じていることは残す。ということを毎年やる。そうすることで、また新たに自分たちでつくったルールになり、代々続いていくのではないかと考えました。
 実際、最初に取り組みをはじめた荒川区の中学校や、その後に赴任した世田谷区の中学校では、今でもずっと受け継がれています。私が中学校を離れて10年近く経ちますが、学校案内のパンフレットに「五つの大切」が載っていたり、新しく来た先生に研修してほしいと呼ばれたりすることもあり、本当にうれしい限りです。

現在でも当時校長をされていた中学校のパンフレットには「五つの大切」が
(※一部画像を加工しております)

今後は、どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

 研究者や大学教員としての活動と並行して、研究成果を教育現場の課題解決につなげたいという思いから、書籍の執筆も行なっています。今は、校種・教科を問わずに実践できる学習能力を高める「子どもの言葉で問いを創る授業」や、応用行動分析学を用いた「子どもの良さを認める指導」。解決志向型の汎用型会議法の「ブリーフミーティング」の研究を深めていて、現場の先生たちに役立ててもらえるようにしたいと考えています。

 また、大学教員として、未来の子どもたちのために、授業やゼミを通して人間性豊かで学問的な背景をもつ指導力がある教師を育成していきたいと思っています。いずれもなかなか難しいことですが、丁寧に根気強くやっていきたいです。

通信制大学院への進学を検討している方に、メッセージをお願いします。

 大学院は、社会人であっても目的意識がある人には最高の学びの場です。学びたい人は、自分が何をやりたいのか?という目的意識がハッキリしている必要があると思います。それさえあれば、理論の体系化は、私にとっての島田先生がそうであったように、教員の方々がしっかりサポートしてくれます。あらためて振り返ってみても、私の場合は荒れた学校を何とかしたいという切実な思いと、明星大学通信制大学院の先生たちの手厚い指導があったおかげで、成功に結びついたのだと思います。

 実際のところ、校長として働きながら、研究するのは大変でした。行き帰りの移動中や部活動の合宿の合間に本を読んで勉強したり、休日に論文を書いたり。でも、明星大学の通信制大学院で一生懸命に取り組んだことで、学校の秩序も改善に向かい、私自身の教育者、研究者としての道も拓けました。

 また、人脈も広がり、折々でさまざまな方が大きな力を与えてくれたおかげで、研究と課題解決が一気に進みました。何かを解決したいと思っている方は、ぜひ明星大学の扉を叩いてみてください。きっといい出会いが待っていると思います。


温厚な語り口の中にも熱い気持ちを感じられるお話でした