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スランプ?

 高校〜大学で弓道部にいたときはたびたび「スランプかな」という状況があった。症状は色々あったけど、一番分かり易かったのは「的にあたらない」であろう。次点として「弓を引いたときの違和感」、深刻なものとしては「早気(引き切った途端に矢を離してしまう)」「離した瞬間に弓を落としてしまう」もあった。
後者二つは経験がないが、「早気」はちょくちょく見かけた。

 楽器を演奏するようになって、こう言ったスランプはあっただろうか。

多分これだという経験なら、ある。

チェロのスランプ(スランプなのか?)

 はっきり簡単にいうならば「四十肩」だったことが半年ほどあった。ひどい時は肩の高さまで右腕を上げることができず、従って右手のボウイングがものすごい苦痛だったのだ。
当時はまだ第1ポジションで練習曲も鈴木1巻で激しく弓を動かす練習はなかったものの、「弓をいっぱい使って弾く」ことは到底できなかった。当時の先生には四十肩を患ったことを伝えて「動かせる範囲で、辛くなったら休みましょう。」と言っていただき、それでも「痛い・・・つらい・・・」とぼやきながら弾いていたっけ。3ヶ月ほどで痛みが軽減してきたところで恐る恐る弓を動かして、やっぱり疲れてくると腕の痺れが出てきて・・・。不安なく弾けるようになるまでやっぱり半年くらいかかってしまった。

ホルンのスランプ(割と大変だった)

 私は2022年に新型コロナウイルス、2023年には人生初のインフルエンザに罹患している。いずれも発熱はさほどではなかったが喉の痛みと声枯れ(実際にはほとんど声が出ない状態)、激しい咳込みはいわゆる隔離期間を過ぎても1ヶ月ほど続いてしまった。
 咳という呼吸器症状は厄介で「吹く」動作へのダメージは甚大であった。
新型コロナの時は息を吸うと咳、吹いている途中で咳という状況で、加えて演奏を中断するとどっと咳が出るという体たらく。ちょうど8月のお盆の季節で楽団の練習自体が空いていたのは実にラッキーだった。
 翌年2023年の12月、発熱と激しい咳、咽頭痛からインフルエンザAに罹患。割とすぐに解熱したけど、やっぱりというか咳はなかなか止まらず。
 当時も隔離期間明けがクリスマスで、そのまま楽団は年末年始の休業状態になったので、実際の練習参加には全く(!)影響はなかった。奇跡である。
 隔離期間中、発熱が軽快してきたのでそろそろホルンもリハビリかなあと楽器を唇に当てたら・・・

「音が出ない」

唇が全く振動しないのである。別段ひどい緊張も力みもないのに唇が拘縮したかのように固まってしまったのだ。
マウスピースだけでバズィングをしてみると、こちらも音が出ない。

気分的には悲鳴をあげたいくらいだったが、咳と声枯れでそもそも声が出ない状況だったのが逆によかったのかもしれない(笑)。

まず楽器をつけずにマウスピースのバズィングを毎日短時間、あまりやり込まない程度に始めた。幸い1週間ほどでバズィングは音が出るようになった(音程の調節はまだまだだったが)。
 次に「吹けなくても元々」と割り切って楽器をつけてみた。案の定中音域のロングトーン以外は音が出ない。吹けないことよりは「出せる音がある」という方向に考えを向けて中音域のスケールをゆっくりと、やはり短時間の区切りで始めた。
 ここで「年末までに低音〜中音〜高音のスケールが吹けなかったら春の演奏会不参加の相談をしよう。」と決めた。
低音〜中音はなんとか回復したが高音域で唇が固まってしまう症状がなかなか治らず、正月休みの終わり頃にこっそりとパートリーダーに相談した。
「わかった。とりあえず年始の初練習は出てみようよ。そこでとてもきつかったら考えよう。アシをつけてもいいし、パートの交代もまだ間に合うからさ。」
普段は割とちゃらんぽらんにも見えるリーダー氏、この時ばかりはこの緩いアドバイスがありがたかった(笑)。あとはひたすらゆっくりスケールとリップスラーを短時間ずつ続け、曲の楽譜は初合奏の前日にうっすらさらう程度に留めた。

 そうして迎えた初合奏は1月の中旬だった。リーダー氏は私の状況は他の方には黙っていてくれたようだった。ただ休憩時間のたびにチラッと「で、どう?どんな感じ?」と。
「きついけど体力的な問題だと思います。音は・・・このペースで回復すれば春には間に合うと思います。もう少し練習を続けても良いですか?」
「もちろん!よかったじゃない!」
 結果的には4月の演奏会にはちゃんと参加できて、現在も絶賛練習中である。

結果オーライといえばそうなのだけど、このときの「リハビリ」は「2度と経験したくはないけど学ぶことは多かった時間」であったと思う。年末年始という絶対的な休業期間と重なってことも良かったと思う。
*焦らない
*曲の練習は一旦リセット
*ひたすら基本のキみたいな練習からやり直す。
*焦って練習量を増やさない。

この時間からはこんなことがTake Home Messageみたいなもんになりそうだ。
付け加えるなら
*「絶対以前のように吹けるようになる」という気持ちを持ち続ける。
かな。
こういうリハビリを自分でイメージできたのは、おそらく弓道で幾度となく不調期間を経験したからだろうとは思っている。

これが誰かの助けになるとか、自分の指導信条みたいなものになるということは考えてない。ただ私自身の大切な経験値にはなった。
ついでに言うと、年末年始に吹けなくなったことは未だにリーダー氏以外の人には話していない(話すタイミングを逸しただけ)。
まあ、それで良いんじゃないかな。

長々と失礼しました。

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