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「今の仕事を走らせながら新たな仕事を走らせる」「視点と視座で企画を立てる」…人気ライター・佐藤友美が語る“書き続けられる”ライターになるために大切なこと

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昨年、ライターとして生きていく人のための教科書『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス)を上梓。今年からは「さとゆみビジネスライティングゼミ」を開講するなど、後進育成においても精力的に活動されているライター・コラムニストのさとゆみこと佐藤友美さん。

今回は、そんなさとゆみさんに“書き続けられる”ライターになるために大切なことをたっぷりと聞かせていただきました。ライターとして活動を始めたけれど、思うように書き続けられないと思い悩んでいるそこのあなた…必見です!

佐藤友美(さとうゆみ)
ライター・コラムニスト。テレビ制作会社勤務を経てファッション誌でヘアスタイル専門ライターとして活動。その後、書籍ライターに転向し、現在は様々な媒体にてエッセイやコラムを執筆する傍ら「さとゆみビジネスライティングゼミ」を主宰し、後進育成においても力を入れている。代表作は『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、『髪のこと、これで、ぜんぶ。』(かんき出版)『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス)など。
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第一の心得「ライターという仕事は基本的に失客していくもの」

――書き続けられるライターになるにはどうしたら良いのでしょうか?WebメディアやSNS全盛期の今、副業やフリーランスとして文章で情報を発信するライター業が人気を博しています。一方でライターデビューを果たしたものの様々な事情で継続的にライター活動ができないと悩みを抱えている方が多いようです。

まず、ライターという仕事は基本的に失客していくものであることを頭に置いておいた方が良いと思います。継続して同じ仕事をしている方もいるかもしれませんが、そもそも執筆先の媒体がなくなる可能性だってあるし、担当が変更になって違うライターに依頼することもある、いろんな可能性がありますよね。ちなみに、私は今年でライター21年目になるのですが、1年目の時に受けた仕事で今でも残っているものは1つもありません(笑)。

――失客、または仕事先からの失注はライターに限らずフリーランス全般に言えることですね。

だから、今の仕事を走らせながらまた新たな仕事を走らせていく、という意識を持ち、戦略を練って置いたが良いと思います。周りにいうと結構びっくりされるんですけど、私は今でも企画書の持ち込みをしますし、営業もしています。運とご縁だけでやっていけるほど甘くないですよ(笑)。むしろ、運とご縁をこちらに引き寄せるために、自分から動かなければならないこともいっぱいあるんです。

――でも、企画書の持ち込みや営業は、ハードルが高そうなイメージがあります。

ここでいう営業とは、わざわざアポを取って営業にいくというよりも、今の仕事相手に次の提案をしたり、執筆ジャンルを広げるような活動や勉強をしてみるとか…。次に繋がることをする、ということなんですよね。そうしていかないと、どんどん次の世代が控えているわけだから、次の仕事に繋がるアクションが自分で取れなければ、書き続けられるライターになるのは難しいと思います。

――書き続けられるライターになるためには、まず仕事を増やすための活動をすることが大事だと。

あとは蓄積されていく価値を増やしていくことかな。例えば、人間は、生きているだけで経験値が毎日増えていくじゃないですか。それが人としてはもちろん、仕事の深みにも繋がっていくと良いと思うんですよ。

みんな歳を重ねていきますし、人によっては結婚や出産、病気や大切な人との別れなど色々なことを経験しますよね。そこでの経験や気付きを活かせる場所を探したり、原稿に反映していく…。そういう風に、自分の中に蓄積されたものをどんどん価値に変えていくことも大事だと思います。

企画が立てられない!時間がない!問題

――駆け出しライターの中には企画が立てられない、時間がない…といった悩みを抱えていて、それが原因で書き続けられなくなってしまう方も多いようです。

企画はね、立て方を知らないと立たないんですよ(笑)。立て方のコツについては、色々な本が出ていますけど、自分にフィットするものを実践していくのが一番良いと思います。

私の場合は、企画を立てる時には視座と視点を意識しています。例えば『mi-mollet』で連載している「ドラマな女たち」は、ドラマに登場する女性たちを髪型の視点で読み解くドラマ評なんですが。視座はヘアライターとしての私、視点は登場人物たちの髪型で設定しています。

これは、どこから(視座)なに(視点)を見るのか…ということでして、つまり「ドラマな女たち」は、ヘアライターの私が登場人物たちの髪型に注目して書いた記事なんですよね。視座と視点、この2つを意識して切り口を作ると、企画って立てやすいんです。視座なら過去の私や仲の良い友達。視点であればメイクや服装。この視座と視点をつなげたら面白いだろうなというボールをたくさん持っておくと良いと思います。

――時間がないという悩みについてはいかがでしょうか?

時間…。私もなくて困っています(泣)。でも、一番現実的な解決策としては、自分のキャパシティをログで測ることだと思います。人って「自分はこれくらいで書けるはず!」というのをかなり見誤っていることが多いんですよ。

――わかります(笑)

だから、原稿を書き終えるのにどれくらいかかったのかを、ストップウォッチで測っておいた方が良いと思います。それが分かれば、何時間の余裕を持っておけば大丈夫なのかというのが見えてきますよね。そうすれば、今月仕事を受ける量はあとどれくらいなのかすぐに分かるんです。

――見える化するって大事ですね。

あと、時間に関してはもう一つ大切な観点があって…。執筆時間をログ化するというと、書いている時間だけカウントしているかもしれないけれど、原稿って出戻ってきてからも結構時間がかかったりしますよね?この時間をカウントしておくことも大切なんだけど、そもそも原稿を出戻らせないことがすごく大事なんですよ。

そのためには、多少時間を取ってでも編集者とコミュニケーションを取ったり、事前に構成案を出しておいたりして、記事のゴールイメージをすり合わせておくと良いですよ。その分に時間を使うだけで、出戻りがすごく減るんですよね。

もちろん100パーセント出戻らせないというのは無理ですが(笑)。例えば構成から考え直してくださいって言われたらほぼ最初からやり直すことになるじゃないですか。それは絶対に避けたほうが良いんですよね。

――なるほど…!納品後に意外と時間を取られることってありますよね。

例えば取材記事なら、重要なポイントや、反対に記事化するのはNGな情報だったり、そういったことを事前に確認しておくのとおかないのでは全然違いますよ。取材が終わった後の5分間の使い方って、スケジュールを大きく左右すると思います。

仕事のクオリティを上げるために相手を知る

――世の中の駆け出しライターが抱える、書き続けられない問題についてアドバイスいただきましたが、そもそも駆け出しライターが一番に意識すべきことってなんだと思いますか?

編集者とたくさんコミュニケーションを取ることかな。先ほどの記事のゴールイメージをすり合わせておくという話にも結び付きますけど、基本的に自分で勝手に判断しない方が良いですよね。もちろん、その媒体の過去の記事を読んだり、自分で事前に調べておくことは大切ですけど、それでも判断がつかないことってあるじゃないですか。それを自分の推測でやらないことを意識したほうが良いと思います。

ーー編集者とのコミュニケーションでいうと、他にどんな話をすることが多いですか?

「ご担当されている記事の中でどれが一番お好きですか?参考にさせてほしいのでぜひ読ませてください!」とか「どうして編集者になったんですか?」とか私はよく聞きますね。こういう質問をするのは、相手に媚びているのではなくて…。相手のことを知っておいた方が仕事のクオリティが上がるからなんですよ。

――ごくたまに威圧的な編集者もいらっしゃるので、相手のことを知ろうとする一歩が踏み出せない時もありますよね。

その昔、私も周囲からの評判が良くない編集者と仕事をしたことがあったんですけど。この人がなぜ編集者になったのか、どんな記事が好きなのか、どこにこだわりがあるのか…それらを一つずつ知っていくと「やりづらいな〜」と思っていたことにも実は理由があったりして、コミュニケーションや仕事のクオリティもどんどん上がっていったんですよ。

もちろん無理矢理好きになる必要はないけど(笑)、相手のことを好意的にとらえて知ろうとするアクションは取った方が良いと思います。コミュニケーションや仕事のクオリティが上がると、仕事そのものが楽しくなりますし。

今ライターを始めるなら、さとゆみさんなら何をする?

――最後にさとゆみさんならどうする?という質問をさせていただきたいんですけれど。今って、noteやTwitterなど自分を発信するツールがたくさんありますよね。もしもさとゆみさんが今この時代にライターのキャリアをスタートさせるしたらまずは何をすることから始めますか?

まずは、ライターの知り合いを探して、その人たちにヒアリングをしますね。ライターとはどんな職業なのか、誰から発注されるのか、報酬の相場感など…。それがわかったら、もうストレートにライターを募集している編集部にアタックしにいきます。

あと、ライターに応募するのと同時に、ライター講座にも通うと思います。講師の先生からライター業界のお作法について教えてもらったり、講座に通っている同期たちと仲良くなって横の繋がりを持つために。

――すごくシンプル…!でも最近だと、noteやTwitterを利用して自分を発信するという方法もありますよね。

作家のように創作活動をする人にとってはnoteやTwitterってすごく相性が良いと思うんですよ。それを見た編集者から作家にお声がかかるなんてこともあるかもしれないですし。でも、ライターがnoteやTwitter経由で編集者に見つけてもらうのってすごく難しいと思っています。編集者は、作家ではないライター(Webメディアや誌面で執筆するライター / インタビューライター)を探す目線でnoteやTwitterを見ていないのかなと…。

ただ、文章の練習としてnoteやTwitterを活用するのは全然ありだと思いますし、そこから仕事に繋げる方法もゼロではないと思います。

――noteといえば、さとゆみさんはビジネス書や自己啓発本を読んで、そこに書かれていたアドバイスを愚直に実行すると本当にその通りになるのか?という検証記事を書かれていましたよね。そのnoteが書籍ライターの仕事に繋がったという話を聞いたことがあるのですが…。

書籍ライターの仕事をやりたいと思った時に、どうしたら関係者の目に留まるんだろう?私の名前を知ってもらえるんだろう?って考えたんですよね。それで、私が一緒に仕事をしてみたいと思った編集者さんが担当している書籍について、1万字くらいのボリュームの記事を書いたんです。

――noteやTwitterを使って発信することが目的ではなかったんですね。

自分が目指しているゴールからしっかりと逆算していくと、どんなアクションを取るべきなのかが見えてくるんです。私の場合は、いつか一緒に仕事をしてみたい編集者さんの担当書籍のレビューを書くことが、数あるクションのうちの一つだった。その手段としてnoteを活用したんですよね。もしもnoteやTwitterなどのSNSから仕事に繋げたいのであれば、最終的なゴールを決めてスタートすることがポイントになると思います。

これは、noteやTwitterに限らず言えることですが、大切なのは最初に“勝つと決める”ことかなと。そう自分で決めたら、あとは勝つために何をすべきなのか、投資をすべきなのかを考えて、行動するのみです!

(取材・文 / ちゃんめい)


ライターとして勝つと決めた時、何をすべきなのか。そんな書くこと以上に大切な書く仕事に迫った『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス)は、ライターとして活動中の方はもちろん、これからライターを目指す方にとっては必読の一冊です。

編集後記

さとゆみビジネスライティングゼミ」の課題の一環で、さとゆみさんに取材させていただきました。さとゆみさん、本当にありがとうございました!

私は、漫画をテーマにレビューやインタビュー記事を執筆する漫画ライターとして活動しているのですが、「企画力とインタビュー記事のクオリティ向上」を目標に「さとゆみビジネスライティングゼミ」1期生として参加させていただきました。

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さとゆみさんが1期生全員に贈って下さった名入りボールペン

昨日、最終講座を終えたのでこれにてゼミは卒業になりますが、本記事の取材はもちろん、全講座を通して、ライターとして生きていくために大切なメッセージをたくさんいただきました。また、ゼミで「書く」を志す、優しくて強い仲間たちと出会えたことも大きな財産です。

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最終回のみ対面講座でした。その後に開催された懇親会でさとゆみさんと。(※参加者は全員検査を受けた後開催)

さとゆみさん、ゼミ1期生の皆さん。ありがとうございました!皆さんとお仕事できる日を目指して精進します。

最後に、本記事で「さとゆみビジネスライティングゼミ」に興味を持った方へ。2期生の募集開始時期などはまだアナウンスされていないので、さとゆみさんのオフィシャルサイトや各SNSを随時チェックすることをおすすめします!

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