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文化放送 超!A&G+「ラジラブ!」で紹介したマンガ(1/24回)

 沢山の人に伝えたいと思っている“好きなもの”を一人だけで30分自由に語り尽くすことのできるラジオ番組、文化放送A&G+「ラジラブ!。第4期パーソナリティを務める、ちゃんめいです。2024年1月10日より、隔週水曜放送で1クール(全6回)担当させていただいとります!

 普段はマンガのレビューやコラム、漫画家さんインタビューなどを担当させていただくマンガライターとして活動中です。というわけで、私が「ラジラブ!」で語るのは大好きなマンガの話。といっても、ただ好きなマンガを語るだけではなく一応テーマがありまして。毎回「人間の感情」の中からピックアップ。例えば、喜び、悲しみ、怒り、驚き……など様々な感情からイメージされるマンガを紹介していきます。下記YouTubeよりアーカイブ視聴が可能です。

 本記事ではラジオ内で紹介したマンガを紹介。詳細や推しどころはぜひアーカイブをご覧いただきたいのですが、あ、あとで読んでみよ〜! と気になった方の積読リストに……という気持ちでまとめています。ぜひラジオと共にチェックしてくださませ〜!

 2024年1月24日回では「怒り」をテーマに5作品をセレクトしました。


フールナイト(安田佳澄先生)

 物語の舞台は、草木が枯れ果て酸素が薄くなった遠い未来の地球。生命活動に必要な酸素を補うために、死期が近い人間を「霊花」と呼ばれる植物にする「転花」という技術が開発され、人々は「霊花」から生み出されるわずかな酸素で生き延びている。そんな「霊花」になることで得られる国からの莫大な支援金を目当てに自ら「霊花」なることを選んだ神谷十四郎と、ディストピアを生きる人々の物語を描く本作。

 人類に迫られるのは過酷な格差社会で”人”として生きるか、それとも一時の裕福さを手に入れて”植物”として死んでいくか.......。霊花になることを選んだ(それしかなかった)者たちの、もはや諦めへと昇華されてしまった怒り。霊花手術を施す側のやるせない怒り。そして、この世の不条理に対して怒りを露わにし、霊花反対活動を起こす者たち。挙げ句の果てには、怒りから生まれたといっても過言ではない“意識を持った霊花”が人間を襲い始める。

 斬新な設定と各々の立場で描かれる果てしない怒り。残酷な設定、物語ではあるけれど、一度読み始めたら抜けられない面白さが詰まっている。

水は海に向かって流れる(田島列島先生)

 主人公は、高校進学を機に叔父さんが暮らすシェアハウスで生活をすることになった直達くん。そこで彼が出会ったのは26歳のOL・榊さんだった。今まで接したことがない大人の女性かつ、常に物憂げな表情を浮かべる榊さんに出会って、直達くんは次第に心惹かれていく。

 だが、一緒に暮らしていくうちに直達くんと榊さんは、不倫親の子ども同士という不思議な縁?業で繋がっていることが明らかになる。同じ業を背負う者として「彼女が背負うものを僕も半分持ちたい」と願う直達くん。彼目線で本作を見ると、年上女性との少し複雑な恋愛ドラマとして捉えることができるが、榊さん目線で物語を見つめると少し違う。
 
 表面的には平穏に暮らしているけれど、幼い自分を捨てて不倫に走った母親に対して、ずっと怒りの感情を抱えている榊さん。いつもはその怒りに蓋をしていたが、直達くんと交流していくなかで、彼女は再び怒りを再認識していく。「あぁ、私は怒っていたんだ」「この怒りは母親と会えばなくなるのか?」「でも、本当は誰に対して怒っていたのか?」と。そんな自身の怒りを、時に荒ぶりながらも咀嚼していく榊さんに注目すると『水は海に向かって流れる』は1〜3巻に渡って一人の人間の”怒り”の行き着く先を描く物語として捉えることができる。
 
 怒りといえば「解決策を探す」や「許す」「忘れる」という答えに行き着きがち。だけど、『水は海に向かって流れる』は違う。新しい怒りの行き着く先を見せてくれるし、読後は心に優しい風が吹いたような気持ちになる。

じゃあ、あんたが作ってみろよ(谷口菜津子先生)

 女性はこういうもの! 料理っていうのは…….! 的な一昔前の価値観に囚われている男性が、長年付き合った彼女からフラれたことをきっかけに、料理を通してアプデしていく奮闘紀。

 タイトルからして本当に痛快。一昔前の価値観を人に押し付ける主人公(表紙を飾る勝男さん)は読んでいてイライラするけれど、「俺がおかしいのか?」と自分を疑う姿勢が本当に素晴らしい。

 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』という怒りをモロ感じるタイトルではあるけれど、決して主人公を叩く話なのではなく、各々の常識を疑ってアップデートしていく様子が描かれている……そんな希望のある作品になっている。

この世は戦う価値がある(こだまはつみ先生)

 激務、パワハラ、セクハラにモラハラ彼氏……。現代社会の負をフルで背負い、ある日怒りが限界突破したOL・紀理が、とある“1枚のカード”を切り札に自分の人生をリベンジする物語。

 リベンジというと、派手な復讐劇や復活劇を想像するかもしれないが、彼女のリベンジ方法は実にユニーク。それは、貸借対照表のように紙を半分に区切り、左には「貸し」として相手に返したい今まで受けてきた傷み、あるいは今までやりたくても我慢してきたことを。右には「借り」として、今まで自分が相手からもらったモノや感謝を伝えたいことを書き連ねていくというもの。

 まるで人生を総決算するかのように「貸し」と「借り」を着実に実行していく紀理の姿は段々と気迫が増していくというか、強い生命力を感じる。なんだか胸ぐらを掴まれるかのように、次のページへと引き込まれていく作品。

なんくるなんない(野原多央先生)

 沖縄を舞台に、ある日突然サイキックに目覚めた反抗期娘と自衛官の父が織りなすホームコメディもの。

 キャッチコピーをつけるなら「世界一派手な親子喧嘩」。でも、なんだかんだ非能力者の父が一番最強! ってとこが良い。あと、相手に本気で怒れるのは、ある種「信頼の証」でもあるんだろうなと。

 前作『水曜日のシネマ』でもそうだったのだが、野原先生が描く年配の男性キャラ超好き!


次回の放送は2月7日(水)16:30〜。第3回のテーマは「悲しみ」。人間の「悲しみ」の感情をテーマにマンガをご紹介します。ぜひお耳をお貸し下さいませ。

お便りやリクエストは【radilove@joqr.net】まで。お待ちしております!

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