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詩の世界

最果タヒ展
われわれはこの距離を守るべくうまれた、
夜のために在る6等星なのです。

輪っかの中に入って文字を読むのは初めてだった。
印象的な言葉がそこに在って、ハッとさせられるような不思議な気持ちになった。

天井から吊るされている幾つもの言葉たち。
それらは空調の風にひらひらと舞い、白と黒の裏表、たくさんの言葉が私の目から頭の中にするすると入り込んでいく。くるくると廻るので一つ一つを読むことは難しいけれど、気づいたら夢中で言葉を追っていた。
揺れてなびく。音が無いかのように静かでゆっくりと流れる時間。ひとつのことに集中することすら久しぶりで、自分の中に沁み渡っていく、そういう風だった。

愛や恋、孤独、いつかの景色、私の中にあるようでないような感覚の世界。ありふれているはずの単語から紡ぎ出される、それは紛れもなく最果タヒさんからうまれた言葉たち。そして、とても綺麗だ。写真に撮られようが、インターネットに載っていようが、消費されない強さをもっている気がした。

美しい活字に飢えていたと気づく。きちんと吸い込める日に、言葉を見るために足を運んで本当によかったと思う。