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知らぬ間に、初夏

窓を開けてレースのカーテン越しに浴びる、ささやかな光と風。少しだけ片付けをしたからか、部屋の空気はいつもよりいくらか余所余所しく、休日の空気を孕んでいた。窓を開けたままでも、もう肌寒くはなくなっていて、気づけば瞼の重みに身を委ねてしまう。

目が覚めたときにはすっかり西日が沈み始めていた。

さらりと泳ぐような雲と褪せた色の空。恋人から明日は雨が降るから洗濯物を取り込んでおいて、と連絡がきていたから、これは曇りなのだろうか。それともまだ辛うじて晴れているのだろうか。分からなくてもいい答えをなんとなく探してしまう。そういう癖が私にはずっとある。

ベランダから振り返れば、わたしの影とぱっちり目が合ってしまった。不思議な感覚だった。暖色の柔らかな光が私を映す。ドキッともしたけどすぐに楽しくなって、写してあそんだ。

数日ぶりの外へは、とっておきの白とベージュとスカイブルーでお出かけ。

いまだに春気分だった。

しかし外へ出たら思ったより風は生温く、半袖の人が何人も通り過ぎていく。もう終わっていることに、ようやく気がついた。
春に別れを告げることもなく急に初夏になったことへの戸惑いは隠せない。でも今は受け入れるしかないのだ。失った春は、また取り返せばいい。

だいすきなバンドのTシャツを着られることは私の夏の好きなところだったなと思い出して、早速お気に入りのTシャツに身を包んでいる。今はないあのバンドと一緒に眠りにつけるのだから、切なさと寂しさと同じくらいうれしい。

https://note.com/enumafumiya/n/nbf28c7fde7aa

それから今日も。
作ってくれたばかりの、ななころび。
なんにも考えず、でもそっと、大切に聴きます。