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『エインヘリヤル』第一話 脚本

第一話のシナリオ
シーン①

見た目は普通のおっさんである会社員、北島枝郎には、誰にも言えないある秘密があった。それは、神話マニアであることだ。海外の神話を研究することが彼の趣味だった。枝郎が神話にハマったのはつい最近の話。甥っ子に勧められてプレイしたゲームがきっかけだった。

枝郎→(と言っても、いい歳したオヤジが急に神話にハマったなんて言えば、会社の若い女の子から引かれるかオタク扱いされるだけだから、誰にも言えてないんだけどね)

ある日、仕事を終えて、いつもの道を通って自宅に向かう枝郎
枝郎→(よーし、今日は帰ったらゲームやりまくって疲れを発散するか!)

その時、信号無視した高齢ドライバーの車が歩道に突っ込んできた
枝郎→「!!???」
突然目の前が真っ白になり、周囲の音が聞こえなくなったことに不安を覚える枝郎。しかし、急に枝郎の頭の中に謎の幸福感が広がり、目の前には走馬灯のように、今まで送ってきた自分の人生の映像が次々に脳内にフラッシュバックした

そして、枝郎の意識は徐々に光の世界の中に吸い込まれていった。

シーン②
枝郎→「声が聞こえる。ここは…天国か?」「私は…死んだのか?」
恐る恐る目を開ける枝郎。てっきり目の前には美しい見た目の天使か神がいると思っていたが、そこにいたのは、白い口髭をたくわえた高齢の男だった。見た目はぱっと見、魔法使いのようだった。

枝郎→「あ……あなたは?」
オーディン→「目が覚めたか」「お主、ここがどこだか分かるか?」

枝郎は、そこがどこかの美しい宮殿のような場所であることに気づいた。
枝郎→「ここは…天国ですか?」「そうだ…あの時信号無視した車が突っ込んできて……」「やはり私は死んだのですか!?」
オーディン→「いや、ここはヴァルハラ。私の住まいだ」
突然頭が真っ白になる枝郎「……え?」「ヴァルハラって…どういうことですか?それってまるで………」
オーディン→「ついてこい」

そう言ってオーディンは、枝郎を連れてバルコニーに向かった。そこから見える景色に驚愕する枝郎。
枝郎→「これは………!」

そこから見える景色は、まるでファンタジーの世界だった。空に浮く島。翼を持った天使。空を覆うほど巨大なドラゴン。地上には巨人や妖精が仲良く共存していた。よく見ると、普通の人間もいるようだ。

オーディン→「これで分かったろう。ここは、お主の大好きな北欧神話の世界そのものだ」
混乱する枝郎→「………!!!??」「な……何で私はここにいるんですか?」

オーディン→「今、この世界は危機に晒されている。お主なら知っておろう、この世界にどんな恐ろしいことが起こるかを」
枝郎「まさか、ラグナロク!?」
オーディン→「そうじゃ」「今このヴァルハラには、戦える戦士が少ない」「非常に少ないのだ」
何だか嫌な予感がしてきた枝郎
オーディン→「そこでじゃ!」「地上で死んだ人間の魂にも共に戦ってもらおうと思ってな」「お主の魂もワルキューレに頼んで連れてきてもらったのじゃ!」

その時枝郎の頭には、二つのショッキングな情報が一気に入ってきて困惑していた。一つは、自分が交通事故で命を落としたのは事実だということ。もう一つは、自分がヴァルハラの戦士としてラグナロクで戦わなくちゃいけないかもしれないことだった

枝郎→「ま……待ってください!」「私は戦士でもないですし、ただの会社員で、今はスポーツもろくにやってないんですよ!?」「ゲームの中でならラグナロクは何度もプレイしたことはありますが……」
オーディン→「お主は大学までラグビーとやらをやっておった」「そうじゃな?」
急に過去の経歴を指摘され、会社の面接の時のような緊張感を感じた枝郎。
オーディン→「見たところ、お主の体はとても引き締まっておる。筋肉もあるし、はっきり言って戦士にピッタリじゃ!」

もうすぐ60代を迎える枝郎は、自宅の鏡で何度も自分の肥満体を見てきた。
枝郎→(引き締まった体なんてもう大昔の話だ。この老人は何を言っているんだ?)(やはり、これは脳が快楽物質を分泌することで見える幻覚なんだろうか?)

オーディンは枝郎の心情を読んだかのように、枝郎の目の前に鏡を持ってきた。その鏡に映った自分の姿を見て驚愕する枝郎。鏡には約40年前の現役バリバリのラグビー選手だった時の自分の姿が映っていた。

オーディン→「皆、死んであの世に行くと、その人にとって全盛期だったころの肉体に再び逆戻りするんじゃ」「今のお主なら、鍛えれば最強の戦士になり、ラグナロクで戦果を上げることだって夢ではないだろう」

少し自分に自信を取り戻した枝郎は、思い切ってオーディンに質問した
枝郎→「だ……だれが僕を鍛えてくれるんですか?」
オーディン「ふーむ、わしが直々に鍛えたいところじゃが、わしは公務で忙しいからな」
するとオーディンは、自分の息子を呼びつけた
オーディン→「こいつはわしの息子トールじゃ」「こいつにお主の鍛錬を任せる」「頼んだぞ!トールよ」

目の前に現れたトールの巨体を見て一気に緊張感が増す。
枝郎→(確かに北欧神話は大好きだけど、まさか自分がラグナロクで実際に戦うことになるとは)

ヴァルハラの中にある修行の間に案内される枝郎
オーディン→「ここは修行の間。お主はこの部屋でトールに修行をつけてもらう」
そこには、様々な国や時代から連れてこられた人間たちが厳しい鍛錬に励んでいた。

オーディン→「では、期待してるぞ!枝郎くん!」「お主は今日から『エインヘリヤル』」「この世界の運命を背負ったヴァルハラの戦士じゃ!」
枝郎→「エイン……ヘリヤル……」

シーン③
それから数ヶ月後、トールの修行で剣技と体技を極めた枝郎。見た目も以前の何倍も逞しくなっていた
トール→「よくここまで耐え抜いた」「お前はもう、立派なヴァルハラの戦士だ」
ニヤリと笑う枝郎

こうして、北欧神話の世界に転生した枝郎は、エインヘリヤルとして、来たる最終戦争ラグナロクに向けて戦士として修行の日々を送ることになった

第一話〈完〉

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