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#映画感想文242『帰れない山』(2022)

映画『帰れない山(原題:Le otto montagne)』(2022)を映画館で観てきた。

監督・脚本は、フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ファンデルメールシュ、主演はルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ。

原作者はパオロ・コニェッティ。

2022年製作、147分、イタリア・ベルギー・フランス合作。

ピエトロ(ルカ・マリネッリ)はトリノで暮らす都会っ子。小学生の彼は両親と一緒に北イタリアの村で夏を過ごす。そこで、村の子どもであるブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)と出会う。ブルーノは賢い少年なのだが、学校に行かせてもらえず、牛や馬の世話をして暮らしている。

小学生の二人は親密になり、あることをきっかけに十代後半から二十代後半のあいだは離れ、三十を前にして再び近しい関係になっていく。

ピエトロはフリーターのようにふらふらしながらも、登山などをテーマにした文筆家となり、ヒマラヤに長期滞在したりもしている。一方のブルーノは、山の民であると自認し、畜産業を営んでいく。

ピエトロとブルーノ、どちらの人生も、危なっかしいのだが、やはり、教育を受けておらず子どもの頃から親に単なる「労働力」として扱われ、親の都合に振り回されてきたブルーノは、危機に見舞われたとき、踏ん張りがきかない。牛の世話はうまくても、ビジネスをうまくやっていくことはできず、大きな挫折に見舞われ、そこから彼は立ち直ることができない。

一方、エンジニアの父親に反発して、父親の人生を全否定しても絶縁されなかった、甘ったれのピエトロのほうが、自己肯定感があり、自己受容ができ、長い目で見れば安定している。この、どうしようもない格差を前にどうすべきか。

山は孤独な人を惹きつける魔力を持っている。山に自ら飛び込んでしまう人は、映画『神々の山嶺』でも描かれていた。

自然は人間を癒してもくれるのだけれど、人間は人間がいないと、やはり行き詰ってしまうのかもしれない。ラスト30分から、急にホラーっぽくなるので、ちょっとビビったけれど、なるほどと思わせる結末でもあった。


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