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映画『コレクティブ 国家の嘘』(2019)の感想

アレクサンダー・ナナウ監督の『コレクティブ 国家の嘘』を映画館で観てきた。ルーマニアのドキュメンタリー映画である。

2015年、ルーマニアのライブハウス「コレクティブ」で火災事件が起こる。出入口が一つしかなく、消防法を守っていないのに営業許可を出していたことが判明する。また、多数の死者が出たうえに、火傷で病院に搬送された人たちも、亡くなってしまう。病院にも何か問題あるのではないか。そこから映画が始まるのだが、政府、政権与党と癒着したメディアのふるまいに目を覆いたくなった。

スポーツ新聞の記者であるトロンタンと、若干33歳で保健相に就任したヴォイクレスクを軸に、ルーマニアの政治と病院の腐敗が明らかになっていく。

政府の言っていることを書くだけのメディアは政府広報に過ぎない。日本のメディアにトロンタンはいないではないか。いたとしても、記者会見を締め出されたり、指名されなかったりするのが現実だ。

この映画のラストで、ルーマニアの選挙風景が映される。若者の投票率は、10~20%とものすごく低く、与党が大勝していく。

開票速報を聴きながら、国を変えようと必死に頑張っていた保健相は「ぼくは少しでも何かを残せたのかな」とつぶやく。そこで、思わず泣いてしまった。頑張っても、頑張っても、報われないことがある。

この映画の観客は無力感を覚えて、席を立つ。

失礼かもしれないが、ルーマニアは旧ソ連なので選挙が本当に公正に行われているかどうかは定かではない。

日本は投票用紙の改竄や廃棄を行うほどは腐っていないと信じている。ただ、選挙に行かないと、現状追認になってしまう。今の社会に問題があると思っている人は、変えようとしている政治家に一票を投じてほしい。棄権をしないでほしい、と総選挙を前に切実に思う。

わたしは個人の努力には限界があり、社会のシステムによって、人々は生きやすくなると信じている。だから、選挙には必ず行き、一票を投じている。民主主義は国民次第なのだから、国民も頑張らないといかんのよね。

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!