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わたしがクレーマー戦士になった日

「クレーマー」が好きな人はいない。

わたしもこれまで大なり小なりクレーム対応の仕事をしてきたので、クレームによってメンタルが削られることも、よく知っている。

しかしながら、生きていると、クレームを入れるべき場面に遭遇することもある。

平日の夕飯時に、某なか○に行くと、店の中の空気が澱んでいた。テーブルの上には、片付けられていないお盆がたくさん置かれていた。雰囲気が悪いなと思いつつ、親子丼が食べたかったので食券を買って待つ。

席につき、店内を観察していると、すぐにあることに気づいた。

いわゆる、ワンオペ状態だったのである。

外国人の店員さんが、あたふたしながら、一人で調理に片付けにと店内を駆け回っていた。そのうえ、待ちくたびれたお客さんの返金対応などの突発的な業務も発生。泣き面に蜂、どうにもこうにもてんやわんやであった。手伝いを申し出ようかと思ったぐらいだが、勝手にキッチンとか入ると問題になるだろうから、おとなしくしていた。

それにワンオペって、いろんな意味で危険。セキュリティの問題もあるし、トイレにも行けやしない。返金を求めるおじいさんも「長く待てないから返金してよ。一人でまわすのは無理だよ」と店員さんに同情していた。

そんなわけで、わたしは店内の様子を眺めながら、スマホでその店のホームページのお客様お問い合わせフォームから、サクッとクレームを入れた。

「忙しい時間帯にワンオペで店員さんがかわいそうです。労働環境をもっと整える努力をされたらいかがでしょうか」と。

30分以上待って、親子丼が来た。黙々と食べていると、なんと助っ人の店員さんがやって来たではないか!

助っ人店員さんは「大丈夫?」みたいな感じで店に入ってきた。すでに制服を着ていたので、近隣店舗からのヘルプか、あるいは自宅からやって来たのかどうかはわからなかったが、ワンオペをしていた店員さんがちょっとほっとしているように見えた。

助っ人店員さんの休日が奪われたのかもしれない。そもそも出勤する予定だったのかもしれない。もちろん、一つのクレームだけで、物事が動くとは考えにくいので、複数のクレームが入り、本部の誰かが動いた。あるいはワンオペの店員さん自身がSOSを出していたのかもしれない。

とにかく、目の前で、状況が改善されたので、やってみるものだな、と思った。単なる偶然の可能性も高い。だとしても、客が20人以上は入れるお店で一人で働かせるのは危険だとも思うから、クレームを入れたこと自体は後悔していない。

(まあ、ワンオペだから安い価格で提供できるとか、安いファーストフードを利用する客がいるから労働環境が良くならないのだ、と言われてしまうとぐうの音も出ないのだけれど)

「万国の労働者よ、団結せよ」などというマルクス気分でクレームを入れたわけだが、労働組合がある国の方が賃金も上がり、労働生産性も上がっているとかいう話もあるぐらいなので、それほど見当違いな行為ではないだろう。

わたしは経営者でも資本家でもなく、まごうことなき労働者である。ゆえに、必ず労働者側に立つ。労働環境の改善を求めるのは当然のことなので、これからも、困っている労働者を見かけたら、地道にクレームを入れていこうと思っている。

チップをいただけたら、さらに頑張れそうな気がします(笑)とはいえ、読んでいただけるだけで、ありがたいです。またのご来店をお待ちしております!