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カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』の読書感想文

カル・ニューポートの『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』を読んだ。著者はジョージタウン大学の准教授である。わたしは、2019年に出版された単行本で読んだ。

世界中の人たちが、こんな悩みを持っているのではないかと思う。

「実行に移したいアイデアがたくさんあるのに、いざ腰を下ろして、取りかかろうとすると、なぜかスクリーンにネットフリックスが現れるんです」
p.86 『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』

著者は、緑を眺めながら散歩をすることで頭を整理することができると言っている。人間は退屈すると、脳の中のデフォルトモードネットワークが活発になり、そこからアイデアが生まれてくるのだという。

印象的だったのは第6章に出てくる夫婦だ。若いうちに資産形成し、引退をした(いわゆるFIREの)夫婦は、人里離れた田舎に移り住む。仕事もしているのだが、自然の中で暮らしているため、そのメンテナンスに膨大な時間を費やしている。彼らは砂利の手入れ、雪かき、暖房のための薪集めなどの重労働に時間を使う。それをする理由を夫のピートは「経済的な負担が少なく、エクササイズになり、心の健康にもよいから」だと述べている。妻のリズも「精神の解放に繋がります。コンピューターの前に座ってする仕事とはまったく違いますから……問題を解決しなければならないのは同じだけれど、方法はまったく違うんです」と言っている。

体を動かす労働や自然の中での作業が精神によいのは、なんとなくわかる。外仕事をしていると、作業に集中できる。暑さ、寒さ、湿気、雨とさまざまな要素があり、思い通りにはいかないことも多い。自分のコンディションや天候など、考えなければならないことは必然的に多くなる。

著者は、週末に何かを作ったり、修理したりするといった手作業を推奨している。

わたし自身も、スマホ依存だし、己のスマホ認知症を疑い始めている。1日1時間程度の使用に抑えたいのだが、なかなか実行できない。

スマホを使っていて、精神的にもよくないと思うのは、わたしが作り上げた、わたしのお気に入りのスマホの世界に、どっぷり浸ることは、とどのつまり、自家中毒状態に近い

そのうえ「不倫カップルの末路」「こんなことをする女は男に嫌われる」「仕事のできない人の特徴」といった記事、毛穴や脱毛、エロ漫画の広告などが、嫌でも目に入ってくる。

ときどき、広告がいくつも入り、何ページにも分割された記事を読むが、果たして次の日に読んだことを覚えているだろうか。その記事について、考えることはあるだろうか。これらの記事や広告で、わたしの人生は豊かになっているのだろうか。

ただ、SNS企業は、わたしたちの脳みそからドーパミンを出す方法を知り尽くしており、何倍も上手(うわて)なのだ。

だから、上手に逃げなければならない。

引用されていたアンソニー・ストーの『孤独』も、読んでみたいと思っている。


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