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#映画感想文256『コロニアの子供たち』(2021)

映画『コロニアの子供たち(原題:A Place Called Dignity)』(2021)を映画館で観てきた。

監督・脚本はマティアス・ロハス・バレンシア、出演はサルバドール・インスンザ、ハンス・ジシュラー。

2021年製作、99分、チリ・フランス・ドイツ・アルゼンチン・コロンビア合作。

舞台は1960年代初頭のチリ。ナチスの残党によって設立された「コロニア・ディグニタ」という新興宗教のような団体の生活が描かれる。

12歳の少年であるパブロはチリ人でスペイン語しか話せないが、歌がうまく、健康で運動神経がいいことを理由に奨学生として学校に入ることが許される。しかし、そこには自由はなく、監視カメラにより徹底的に管理されている。(懐かしのVHSテープが出てくる)夜間の外出が発覚しただけで、大人が衆目の中、裸にされて、殴られたり、辱めを受けて罰せられたりする。

教祖的な存在のパウル・シェーファー(ハンス・ジシュラー)は、アメとムチの恐怖政治で人々をコントロールしている。優れた子どもは「スプリンター」と呼ばれ、夜、テレビを見ることが許されている。テレビを視聴した後は、老人であるパウルの夜の相手をさせられていることが、パブロの視点で明らかになっていく。彼は児童を性的虐待していたのである。

ただ、『コロニアの子供たち』というタイトルはミスリードであると思う。支配下にある共同体のさまざまな人々が登場しており、子どもたちだけが主人公というわけではない。邦題のせいで、違和感が残ってしまった。

「聞かれているから話しちゃいけないよ」という子どもたちの萎縮した姿が妙に生々しく、それは被害妄想ではなく、本当に盗聴されているのだから、恐ろしかった。そして、閉鎖された世界というのは、どこもかしこもよく似ている。

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