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#映画感想文『最後の決闘裁判』(2021)

映画『最後の決闘裁判(原題:The Last Duel)』を映画館で観てきた。

監督はリドリー・スコット、脚本はマット・デイモンとベン・アフレック、出演はマット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック。

2021年製作、153分、アメリカ映画。

アカデミー賞には、あまりノミネートされておらず、これも一種の政治かな、という気もする。

リドリー・スコットといえば、『テルマ&ルイーズ』などからもわかるように、フェミニズムを昔から描いている監督である。だから、今回のテーマもそれほど違和感はなかったが、マット・デイモンから持ち掛けられた企画だったらしい。

マット・デイモンが「羅生門スタイル」を採用して、脚本を書いている。舞台はフランスの中世、三章で物語が進み、最後に決闘が描かれる。

中世フランスでの妻や娘(女性)は、男性の私有財産に過ぎない。これこそが、家父長制である。1830年代に書かれたスタンダールの『赤と黒』のレナール夫人の葛藤のすべてもそこに起因していたように思う。(日本は、古来からの儒教的家父長制と、近代化した際に導入したフランスの民法における家父長制とが二重にあるため、より面倒くさいことになっているような気がする)

この映画はもちろん、真実はどこにあるのか、というテーマなのだが、家父長制の中で生き抜かなければならない女性の葛藤、苦しみが余すところなく描かれている。夫がスコットランド遠征で不在のとき、妻は生き生きと仕事をして、家を切り盛りする姿もあり、この奥さんは優秀で個性的な人だという側面も描かれる。

決闘に至る過程でのマルグリットの気持ちを類推するに「二人とも死なねえかな」と思っていたはずだ。

そして、最後の説明書きで、彼女のその願いは叶ったかのようにも見えた。

荒々しいアダム・ドライバーを目撃してしまい、映画館を出るとき、『パターソン』の文系アダム・ドライバーに会いたい、と思ってしまった。

マット・デイモンとベン・アフレックは映画の中では敵対関係にある。『グッドウィルハンティング』で一緒に脚本を書いた二人が、二十年以上、ハリウッドで生き残り、また脚本を共同で執筆し、同じ目標に向かって頑張れる、というのはちょっと夢のような話でもある。仲良きことは美しきかな、である。

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