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ゴールドバーグ(2019)『書けるひとになる!魂の文章術』の読書感想文

ナタリー・ゴールドバーグの『書けるひとになる!魂の文章術』を読んだ。翻訳は小谷啓子さんで、2019年に扶桑社から出版された本である。

原著はアメリカで1986年に出版され、2005年に増補版が出されている。

この本は、文章の書き方の本ではない。文章を書き続けるための心の持ちよう、動機づけを維持する方法、怠け心との付き合い方、書くこととは一体何なのか、ということが断片的なエッセイで描かれている。

著者は書くことを愛しているが、時々、書くことが嫌になる。

私はひと月おきに、もう書くのはやめようという気分になる。そのとき心の中ではこんな会話が行われる。「ばかばかしい。ちっともお金にならないし、詩を書いたってキャリアになるわけでもない。詩なんてみんなにとってはどうでもいいのよね。孤独。もうこんなのいや。ばかみたい。私もふつうの生活がしたい」。こういう考えは拷問と同じだ。疑いは拷問。(中略)疑いはあなたの忍耐力を常に試している。
p.160 『書けるひとになる!魂の文章術』

何かを続けようとしている人なら、誰もが、この気持ちを知っているのではないだろうか。

著者の結論は常に「書き続けよう」で、いつか報われると断言している。続けないことには、次につながっていかない。正直なところ、わたしは報われるとまでは思えないのだが、書くという行為は、基本的に楽しいことだ。ただ、始めるまでが、どうにも腰が重い。始めてしまえば、そこそこ楽しめるのだが。

著者は、書き方がわからない人には「描写をすればいい」とアドバイスをし、書きたくない日があること、書くことを続けられない日があることを正直に告白している。

陰鬱な話題のときでさえ、筆致は明るい。それが著者の生来のキャラクターなのだろう。

原著『Writing Down the Bones: Freeing the Writer Within (English Edition)』 Natalie Goldberg

英語ではどんな風に書かれているのだろうと原著のペーパーバックも、手に取ってみたくなった。

何かを続けるためには他者評価に委ねるではなく、常に自分に問いかけながら、自分を満足させるしかないのだと思う。書けない日や書けなかった自分を責めるのではなく、今日少しずつでも書けばいい。そんな気分にさせてくれる一冊だった。

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