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数学雑感

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数学についての記事のまとめです。生徒に質問されたことや出会った問題を掘り下げます。
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記事一覧

時系列データの読み方

数学ⅠやBで扱われていないけれど、データを扱う上で重要な考え方である時系列データの読み方を簡単に解説します。数学Ⅰと情報Ⅰの棲み分けとして、このあたりが狙われるのじゃないかなって思っています。 時系列分析時間とともに変化するデータの系列を分析します。 傾向変動(トレンド)、季節変動(シーズン)、循環変動(サイクル)、不規則変動(ノイズ)の4つに分解でき、これらの和や積としてモデル化されます。 傾向変動は成長している・衰退しているなどの大きな流れのことです。 季節変動は1年単

公開鍵暗号の仕組みと数学的背景

公開鍵暗号の代表のひとつであるRSA暗号の仕組みを見ていく。 まずは暗号化の手順を見ていき,次に数学的な仕組みを解説します。 RSA暗号の手順RSA暗号では、公開用の鍵として2つの整数の組$${\left(N,E\right)}$$を作り、秘密鍵として2つの整数の組$${\left(N,D\right)}$$を用意する。 以下、$${N,E,D}$$の作り方を説明する。 まず、$${N}$$は大きな2つの素数の積である。 この素数を$${p}$$と$${q}$$とする。

プロジェクタで板書を省略したい!

中学部の英語の先生がプロジェクタで本文を直接黒板に投影しているのを見て,自分もしてみたい!って思ってやってみました。 黒板灯を消すともう少しきれいに見えるのですが,前の席の生徒の手元も暗くなるので,悩みどころです。 黒背景,白文字にすると,きれいに見えますね。 白背景,黒文字だと,スクリーンなしでは見にくいです。 そもそも,電子黒板なら,こんな苦労はいらないのですが…… 解答部分を映して,注釈を付けていくというスタイル授業をしてみたのですが,正直,やりにくかったです。

三角比の問題(解説動画付き)

 Youtubeを初めて2ヶ月ほど経ち,それなりに動画数も増えてきました。  今年度は高校1年生を教えているため,それに合わせて動画を作っていっています。  次の定期考査に向けて,演習プリントを作りました。せっかくなので,動画で解説した問題を集めてきて,QRコードで動画へのリンクをつけてみました。  生徒がどの程度活用してくれるかはわかりませんが,好評なら他の動画についても,同じように問題を集めて見ようかと思います。  noteに問題を載せて,Youtube側からnot

いかにして問題をとくか。

 数学を解くときの基本的な考えをまとめた大著、『いかにして問題をとくか』略して『いか問』。その基本的な発想を説明します。  数学だけでなく、あらゆる問題解決の場面で役に立つ考え方です。  実際、『いか問』は数学書というよりもビジネス書として有名です。  『いか問』では 4 つのパートにわけて問題を解決していきます。 1.問題を理解する。 数学であろうとなかろうと、問題を解決するためにはまず問題を理解しなければなりません。  なにを当たり前のことをと思うかもしれませんが、意外

連分数を使って不定方程式を解く

 センター試験から共通テストになり出題の傾向が変化しました。センター試験のときよりも数学的な背景がある問題を出そうとしているように思います。もちろん,まだ第 1 回の共通テストは実施されていませんので,共通テスト向けの問題集を解いた感想です。  さて,そんな共通テスト向けの問題を解説していると連分数で不定方程式を解くという問題に出会いました。  そもそも連分数とは何なのか。なぜ不定方程式を解けたのかを解説したと思います。 1.連分数とは 連分数とは,分母に更に分数が含まれ

受験で使ってはいけない? ロピタルの定理のほんとのところ

 数学Ⅲで知っていると便利なロピタルの定理ですが,受験では使ってはいけない,裏ワザだというふうにも言われています。  実際のところはどうなのでしょうか。  結論からいいますと,ロピタルの定理を受験で使っても構いません。  ただし,以下の 2 点に注意する必要があります。  ロピタルの定理を使ってはいけないという主張がなされる原因は上に挙げた 2 つの注意点を守れる人が少ないからだと思います。  この 2 つについて解説したいと思います。 ロピタルの定理の正確な内容 まず

フェルミ推定―間違えることを恐れない練習―

 一時期持て囃されたフェルミ推定ですが,最近はあまり聞かなくなったように思います。  地頭力を鍛えるのに向いているなどと言われていますが,私はこの地頭力というものに対して懐疑的です。仮に地頭力というものがあったとしてフェルミ推定で鍛えられるとも思いません。  なぜならば,フェルミ推定は練習さえすれば誰にでもできるテクニックだからです。  一方で,フェルミ推定を授業で取り扱うことには賛成しています。表題にもしましたが,フェルミ推定は間違えることを恐れない練習になるからです。

¥200

普通の問題は解けるが共通テストが解けない

 盆休みの直前に「普通の問題は解けるのですが共通テストの問題になると全然解けません」という相談を受けました。  この時期の受験生から毎年聞く相談事です。これだけでは状況がわからないので最近解いたマークの問題集を見せてもらいました。  このような問題でアイは埋まるのですが,ウエができないということでした。  それでは次の問題なら解けるかと聞いてみました。  すると,この問題なら難なく解くことができるということでした。  この 2 つの問題は形式こそ違いますが聞いていること