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天使になでなでとハグを

7年ほど前までボストンテリアと暮らしていた。彼女は網戸を壊して脱走するほどのパワフルガールだった。人への愛情表現もパワフル。ほねを咥えながら激しくくねくねダンスを踊り、隙を見つけては顔べろべろ攻撃をお見舞いした。

そんな彼女がお空にさんぽに行ったあの日からぱったりと犬に触れる機会がなくなった。
べろべろ攻撃もダッシュ体当たりも幻のように遠い世界の話になっていった。
散歩しているわんちゃんを公園で見かけても「触っていいですか?」と中々いけない。いつもよだれをぐぅっと飲み込んで離れた木陰から見つめることしか出来ない。 

そうか、犬と暮らさなくなるとこんなに犬に触れる機会はないのか…と驚きと寂しさを感じながら7年を過ごした。

そんな私が最近カナダのランドというところで家主の女性と彼女の3匹の犬たち(こちらも全員女の子)と暮らせることになった。
待望のわんだふる天国。

登場犬はこちら
・シュクラ
15歳のゴールデンレトリバー。甘えんぼで元気なラブリーおばあちゃん。なでるのをやめると鼻でぐいぐいと腕を上げさせてくる。なでると微笑みかけてくる。

・タウラとタスピン
姉妹のように仲良しなケアーンテリアの2匹。
1歳のタウラはしっかり者のおねえちゃん。タスピンとの戦いはもちろん彼女が勝つ。他の犬と友だちになるのが好き。ひざに乗るのも好き。
0歳数ヶ月のベビベビなタスピン。寂しがりやのマイペースで色んなことに興味津々。人大好きだけど犬には犬見知りしてる。夜さみしくなったらきゅんきゅん言いに来る。

彼女たちは初めて会った時から、
「なでてなでてっ!」と押し合いながら私のところにやってきた。
沢山の人に撫でられ愛されて育ってきた子たち。久々に触れた犬たちの温かさ。
手触りは違うけどそうだ、あのパワフルガールもこんな温かさだった。
私は腕を広げてみんなをぎゅうっと抱きしめた。


こうして私の犬生活がまた始まった。
家主の女性はいつも彼女たちの意思を尊重する。
雨の日も風の日もどんな天気でも散歩に行く。森の中の夜は真っ暗なので頭にライトをつけて散歩にいく。
私も彼女について毎日散歩に行くようになった。

ラブリーな3匹の犬たちはいつも気持ちの良い真っ直ぐな愛情表現をしてくれる。
私のひざを取り合い本気の争いをするタウラとタスピン。私の腕に手を置いてなでてと言ってくるシュクラ。朝きゅんきゅん言いながら私のスリッパをくわえて起こしにくる犬たち。
かわいい。かわいすぎるぞみんな。


それはつい一昨日のことだった。
その日の夜は雨と風が強く、いつもなら寝ているシュクラがぜえぜえと息切れをして何かを訴えている。シュクラは小さい頃から風が苦手でいつも誰かの後ろに隠れていたそうだから今日も怖くて仕方がないらしい。
いつも真っ直ぐ見つめてくる彼女の目はどよんとどこか遠くを見ていた。私はあのパワフルガールも歳を重ねてからたまにこんな目をしていたことを思い出した。
そうだよ、怖いって苦しいよね。
みんなここにいるよ。
タウラとタスピンは心配そうに彼女を見ていた。家主と私はシュクラが安心して眠れるようにいつもより遅くまで起きて撫で続けた。

犬たちがみんなハッピーな気持ちばかりの犬生を送れたらいいのに。
おいしいご飯とおもちゃ、撫でる手がそばにあって痛いことや苦しいことからずっと遠くかけ離れたところにいれたらいいのに。

私はシュクラにパワーを送りたくてきゅっとハグをした。

次の日の朝、雨も風も止んでいた。
シュクラはいつもの穏やかな顔に戻っていた。 良かったシュクラ。よくがんばったね。
あなたの苦手な強い風はどこかにいったよ。

頭を撫でると彼女はいつものように微笑んでいた。

マッチ売りの少女みたいなシュクラ


じゃれるタスピンとタウラ




さて次は何を書こう。
ここでの暮らしについてか、カナダに来るまでのことを書こうかな。

それではまた。

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