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創作》山田くん

会社の後輩である山田くんは、ちょっと変わっている。

なぜなら、いつも違うのだ。

服装だけじゃない。
髪型も髪の色も違う。
瞳や肌の色、身長から体格に至るまで、全てが違う。

変わらないのは、性別と性格、そして『山田』という名前だけ。

僕は隣のデスクなので、毎日カメレオンも脱帽する変わりようの彼を観察しているのだが、見ている限りは同じ人とは思えない。

しかし、彼は彼なのだ。

昨日話した内容は覚えているし、卒業した学校に恋愛遍歴、住所や電話番号は同じ。
山田くんであることを証明する諸々に変化はない。
山田くんの外側だけが変わる。

しかも、それについて誰も指摘しない。
僕にだけ違って見えているのかと思ったが、そうではないらしいし、本当に不思議だ。

「鈴木さん、昨日言ってたお店、今夜連れてってくださいよ」

昨日は細っそりしていたのに、今日はまたお相撲さんのように巨大化した山田くんにそう言われた。
彼の言うお店とは、美味しいちゃんこをたらふく食べさせてくれるお店のことだ。
昨日の山田くんがあまりにもガリガリに細かったから、つい言ってしまったのだけど、今日の山田くんと行ったら、お店のメニューを食べ尽くしてしまいそうだ。

「……ごめん、今夜は予定があるから、また今度行こう」

山田くんが程よい体格くらいの日に、連れて行こうと思う。

朗読版



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