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創作》めんどうな人の話

僕が小さい頃、テレビ画面の中でその人は顔をしかめて言った。

「救急隊員がコンビニに寄るなんて、もってのほかよ!」

僕には言ってる意味が分からなかった。
救急車に乗って働いているのは人間なのに、仕事中は水すら飲んではいけないらしい。

でもこの考えの人が当時はとっても多くって、当たり前になってきた。
そしてそのうち、そう言った人間に何かを施す立場は全てロボットがやるようになった。
救急隊員はもちろん、消防も、郵便も。宅配便や飲食店のウエイトレスだって、今はロボットが当たり前だ。

そんなある日、僕は自宅でうっかりケガをしてしまい、大量に出血してしまった。
血が止まらないので救急車を呼んだ。
するとオペレーターはこういった。

「救急隊員はロボットと人間、どちらを向かわせますか?」

この緊急事態にどっちだっていいだろう!
するとすぐに救急車がやってきて、病院に搬送された。

そこまで酷くはなかったらしく、治療してもらってすぐ帰れることになった。
待合室で会計を待っていると、すぐ近くの救急搬送口が騒がしい。

「なんでロボットの救急隊員なんて寄越したんだ!ふざけるな!」

今しがた運ばれてきたおばあさんが、なにやら暴れている。
よくよく見ると、小さい頃、僕が見たテレビの中で不思議なことを言っていた人にソックリだ。

「仕方ないだろ。今は人間の救急隊員は少ないんだから」

その人の息子と思われる人が懸命に宥めている。
息子さんの言う通り、あらゆるクレーマーのおかげで、休む間もなく人間にサービスを提供する人間は今殆どおらず、ロボットが主流の時代なのだ。
息子さんの言葉を聞いたその人は、見覚えのあるしかめっ面で、

「血の通ってない、愛情のかけらもないロボットが救急隊員なんて、もってのほかよ!」

めんどうな人だなぁ、と僕は病院を後にした。


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