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男は20歳の誕生日を迎えた夜、今までの人生を後悔していた。 まだ20歳だと周りは言う。しかしもう20歳、人生の4分の1は過ぎているのだ。高校でもっと勉強しておけば良かった。中学で好きな娘に告白しておけば良かった。小学生の間にもっと楽しんでおけば良かったと。 「ああ、過去に戻りたい。」 男はそう呟いた。時計が12時を回った。 男はベットの上で目が覚めた。あれ、俺はいつの間に寝たんだ。昨夜の記憶を思い出そうとしていると、携帯にメッセージが届く。 『明日お前誕生日だろ?
・・・目が覚めると、真っ白い部屋にいた。 天井は円型のドーム状になっていて、部屋の中央に円卓が置かれている。 僕は円卓の一席に座っていた。 僕以外にも、円卓のそれぞれの席に人が座っていた。 いや、よく見ると彼らは人間じゃなかった。 恐竜のような見た目の鎧を着た生物、スライム状の有機生命体、テレビでよく見かける絵に描いたような宇宙人。 中には、かろうじて人型をした生物もいたけど、全身が真っ赤だった。 他にも奇妙な生物達がテーブルを囲んでいた。 ・・・これは夢だろうか。記憶の最
私は目を疑った。 しかし、目の前の光景は現実である。 あの、憧れのアイドル歌手が、酒を飲んで酔っ払っているなんて……。 赤い光に照らされ、窓ガラス越しにうつる顔は、テレビやグラビアでは決して見ることが出来ないものだった。 何より、彼女はまだ十九歳だったはずである。明らかに違法行為だ。 私は意を決して声をかけた。 「あのう、すみません。あなた、ひょっとして、アイドルの……」 憧れの乙女は、ほろ酔い気分の緩んだ声で答えた。 「あれ、バレちゃった?」 何ら罪悪感は覚
駅前商店街の十字路にある、8台分のスペースの月極駐車場。 ここには姿の見えない住人がいる。 木島の人生は、婚約者の女性の実家で、25歳の誕生日を祝ってもらった日に終わった。 気が付いたら駐車場で、花と線香に手を合わせる家族や友人の姿を眺めていた。声をかけても触れようとしても、誰も気づかない。 彼らの話から、酒に酔って歩いていた所を車にはねられ、この駐車場で息絶えたことを知った。 死んだら無になると思っていた木島だが、絶命した地に留まり続ける『地縛霊』となっていることに
ある朝、ネコの鳴き声で目が覚めた。 うちにネコは居ない。 近所で時々見かけるが、そんなに多くはない。 気になって窓を開けると、よく晴れた空からネコが降っていた。 意味がわからないと思うが、オレにもよく分からない。 三毛、黒、白、キジ、茶トラ、さばトラ、、、などなどなど、 あらゆるネコが空から、 キャットタワーの上から降りてくるように軽やかに、雲を足蹴にひょいひょいと、 降ってくる。 昔、ブタが降る絵本だかなんだかあったなぁ。 それのネコバージョンかな、なんて、 寝ぼけ
時間って奴は、消費すればいいだけのものだ。 そのうち無くなって、自分がこの世から消えれば、それでいい。 スナック菓子の袋を新たに開けながら、欠伸をした。 もう何時だ。 パソコンの画面には大量の文字。 くだらないモノから役立ちそうなモノまで情報が散乱している。 適当に摘み上げて、時間を消費するための道具として再利用する。 この画面の世界は、まるで自分の部屋と同じだ。 居心地がいい。 スナック菓子を食べながら、文字を摘み上げていた。 その時だった。 「おい」 何処からとも
月に一度、僕の地元では骨董市をやっている。 駅の近くにイベント広場って場所があって、そこに市が立つ。 古着物に古い置物、掛け軸に食器。確かに骨董品だと思う古い物からそうでないものまで、若干フリーマーケットも混ざったような、そんな市だ。 僕はその市によく足を運んだ。何か面白い物に出会えそうな気がして。 古びた空気が広がった世界の一角で、僕は足をとめる。 硝子細工の置物が目についた。 干支の動物を象ったものから、一角獣に麒麟など、透明な動物たちが紫色の布の上で遊んでいた。
「ねえ、知ってる? 発売直後に即完売しちゃった話題のワンピ、今週末に限定で再入荷するんだって。 早い者勝ちだから、急いでGETしてね!」 そんなメールが届いた。 アパレル関係の仕事をしているこの友人は、流行のファッションにとっても詳しい。 オススメアイテムやセール情報を定期的に送ってくれるので私はいつも助かっている。 今回教えてくれた情報にももちろん感謝! 私は彼女のメールに書かれていたURLを迷わずクリックした。 「お久しぶりです! 前回ダイエットサプリ「スグヤセール」
SNSで仲良くしていた人と会うことになった。 最初は好きな音楽で意気投合したんだけど、好きな本とか食べ物とかも似てて。 お互いにオススメし合う感じになったんだ。 さらに話していたら、近くに住んでるっていうから、会ってみようって話になったわけ。 待ち合わせのカフェは、お互いに行ったこともある場所。 『先に着いたので、席とってますね』 そんな連絡がきたので、カフェに着く前からワクワクしていた。 「待ち合わせです」と言ってカフェに入る。 しかし、通された席には、誰もいない
「やれやれ、困ったものだね」 そろそろ定年という壁が見えて来た男は、軽く溜息を吐く。 実はその業界では成功をおさめた会社の人事部長だ。 今日は戦力増強の為の面接日。 しかし、困った事に面接を予定している人間が来ないのだ。 遅れるとの連絡は受けているのだが、その後一行に来ない。 「もういい。彼の携帯に連絡して、伝えろ。不採用だ、と」 しびれを切らした部長はそう部下に言う。 もう次の面接者が来る時間だ。 とりあえず、お茶を飲み、気を落ち着ける。 面接者が来るはずの時間。
「ただ、SNSで『イイネ』が欲しかったんです。 最初は頑張ってバイトして、 可愛いお洋服やネイルの写真を上げて、 『可愛いね』 『ステキー❤️』 って言われてたんですよ。 構図とか、光の当て方とかも研究したから、 すっごく盛れる写真が撮れてたと思います。 でも、フォロワーそんなに増えないし、 イイネも頑張って3桁って感じで。 SNS疲れるなーなんて思ってたんですけど、 ある日、バイト終わって帰る途中、近所のお家が燃えてたんです。 火がすっごく
「我がイナバ社は、ウサギの勝利を応援します」 長きに渡る因縁、兎と亀のリベンジマッチが行われようとしていた。その話題性は抜群。両者にはスポンサーがつくことになった。 前回のウサギの敗因を分析した、「イナバ社」は高麗ニンジンで作った眠気覚ましのエナジードリンクを提供すると言い出した。 カメを支援するのは、ネットショッピングの大手として有名な「ウラシマ社」。通気性の良い素材を使いながら、車に引かれても大丈夫な耐久性。従来と比べて10分の1までの軽量化に成功し、収納
それはちょっとした待ち合わせの時の話。 小粋なジャズの流れる喫茶店。 待ち合わせに指定されたその店には初めて訪れた。 相手は少々遅れるらしい。 人気のない店内に歩みを進める。 ガランとした空間にジャズだけが響く。 テーブルはそこそこあるが、食器の下げられていないテーブルが目立った。 店員が少ないのかなぁとぼんやり考えながら、空いているテーブルにつく。 アイスコーヒーを頼み、待っている間に周りを見渡す。 それぞれのテーブルの側の壁には、絵が飾られていた。 どれも違う絵
嫌なことがあった日は、美味しい食パンを買ってきましょう。 そして、嫌なことを思い返しながら、パンに美味しいジャムを塗りたくるのです。 嫌な言葉で殴ってくる、アイツの顔をイチゴジャムみたいに真っ赤に染めるつもりでさ。 もしその嫌なことが、誰にも知られたくないような、恥ずかしいものだったら、 食パンに小さく報告するようにジャムを塗って、 何度も何度も折りたたんで、 ひとくちで食べるといいでしょう。 大丈夫。 食べたら誰にも見えないから。 嫌なことは、食べて仕舞えば良いので