備忘録14.インフルエンザで隔離される

私が今でも忘れられない、転勤先でインフルエンザにかかった時のお話。

「熱が出てる。この熱の上がり方と関節の痛みから、もしかしたらインフルエンザかもしれない」

そう伝えた次の瞬間に

「お前何勝手にインフルエンザにかかってるんだよ。ふざけんなよ、絶対に俺にうつすな、絶っっっっ対にこっちの部屋に入ってくるなよ」

間髪入れずに返ってきた言葉に、私は何も言えなくなったことを思い出します。少しは心配してくれるものと信じて疑わなかった私は、石で殴られたような感覚がしました。

こうして私は茶の間に隔離され、一日中カーテンの掛かった部屋に布団を敷いて、ただただ横になるだけの生活を余儀なくされました。痛みと熱で眠れないのをゲームのプレイ動画を流してごまかしていましたが、ずっと唸り続けていたように思います。この時に見ていたゲームは、癒しでもあり辛い記憶を思い出すものにもなり。

薬を飲んだ記憶もなく、食べ物を運んでもらった記憶も一切なく、丸数日間放置され。病院に自力で行くこともできなければ、なぜか連れて行ってもらうこともありませんでした。その間、一度も様子を見に来ることはなく。一度だけ差し入れられたポカリスウェットは、扉の隙間をほんの少しだけ開けペットボトルだけが通れる道を経て「ここに置いておくね」とだけ伝えられました。入り口からヌッと押し込まれたそれは、布団から1センチも動けない私には手を伸ばして手に取ることもできず、ただそこに佇むだけでした。布団から入り口までの50センチがこんなに遠いと感じたのは初めてのことでした。

トイレに行った記憶すらないまま寝続けて、何とか起き上がれるようになった頃。自分で車を運転して病院にいきましたが、既にインフルの反応など出ず。

この時のことを思い出すと、よく私死ななかったな。インフルで亡くなる人だっていないわけではないのに、よく様子を一度も見に来ることもなく人を放置できたな、と思うのです。そのまま死んでしまっていたら、何かしら刺さるものにでもなったのかしら、と。

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