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素晴らしき哉、サントラ7:『王妃マルゴ』

地味に続けています、今回のサントラは、『王妃マルゴ』。この映画の存在自体、今どのくらい知られているのか…はビミョーですが、イザベル・アジャーニ主演で、この時点(制作は1994年!)でのフランスの名立たる俳優がたくさん出演しているコスチュームもの(歴史もの)映画です。監督はパトリス・シェロー。

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このジャケ写からも想像がつくように、16世紀末頃のフランスで、陰惨、悲劇、惨劇、みたいなことだらけの王室の人間たちの話です、なにしろ主役のマルゴは、悪所で名高いカトリーヌ・ド・メディチの娘ですから(笑)。本当に悪女だったかどうか知りませんが。ストーリーのハイライトのひとつは、聖バルテルミーの大虐殺だし。さらにこの頃のイザベル・アジャーニは、演じた役のエキセントリックなイメージも強く、このマルゴもはまり役、でした。

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しかしこの映画のサントラは、独自の魅力が詰まっていてホントに好き。これも、映画本編を見た回数より、サントラを聴いた回数の方が格段に多い作品。音楽を担当したのは、ゴラン・グレコヴィッチという作曲家の人だそうで、この方について詳しいことは何も知りませんが、サラエボの生まれ。父がクロアチア人、母がセルビア人。なので、祖国のセルビアからスラブ系、イスラム系、など多種の民族音楽を取り入れたサントラになった、というのがライナーノーツからの情報です。

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このサントラのメイン、というか、ハマる人は一発でハマるのが、1曲目とラスト14曲目の「Elo Hi (Canto Nero)」(バージョンは違う)。これは、オフラ・ハザというイスラエルの人気女性歌手なのだそうですが、柔らかくて透明感もある声が気持ちいい。メロディーが、宗教的な匂いもしつつ、またもっと別の、異世界の雰囲気もある。ちょっと違うけど、のちのち『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのエンディングで流れていた曲に近い。でもエンヤとはまた違う、もっと切羽詰まった印象もある。コレが好きかどうかで、この映画の音楽がハマるかどうかが分かれる気がします。私はスラブ系やアラブ系などの音楽にはまったく詳しくないですが、この女性の声は本当に好き。

ちなみに上の写真の男性は、この時はまだまだ美形だったヴァンサン・ペレーズ~。今でいえば超絶イケメン、のはずなのですが、割とすぐに頭の毛の方が寂しい感じになられて…。

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2曲目「Rondinella」も、男性の声のみで祝いの席で歌われる、いかにも古い民族音楽、という印象で面白いけど、やっぱり盛り上がるのは、3曲目「La Nuit De La Saint Barthélémy」(聖バルテルミーの夜)、ですよね。遠くで鳴っている鐘の音も不気味。緊迫した雰囲気と、だんだん大きくなってくる男性声のコーラスも盛り上がる。元々グレゴリオ聖歌とかが好きなので、そういうの好きな人にはオススメ。4曲目「Le Matin」の声だけ、も気持ちいい。

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ギターの生音で始まる5曲目「Lullaby」は鎮静、心休まる、みたいな曲。7曲目「U Te Sam Zaljubia」も男性声で、宗教曲っぽくてよい。主役の名前が曲名の9曲目「Margot」のコーラスも美しいし、婚礼の曲、12曲目「Le Mariage」のイントロは、監督が参考にしたという『ゴッドファーザー』も彷彿とさせる。そして13曲目「La Nuit」からまた14曲目のオフラ・ハザの声に戻っていって、環が完結する、というようなイメージ。完璧。

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私も普段は、いわゆる欧米、特にアメリカと、日本の音楽を主に聴いてはいますが、なかなか触れることのなかったり、自分でもどう探せばよいのかわからないスラブやイスラム方面の音、なんていうのにパッと出会えるのがサントラの魅力のひとつでもある。すごく詳しい人もいるんだろうけど、ごく普通に日本で暮らしているとなかなか機会がないので、サントラでビビッと(古い)くれば、それがどの地方の音楽だろうと買っちゃいます。

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