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素晴らしき哉、サントラ9:『チャーリーとチョコレート工場』

しれっと再開。本日のサントラは、映画の方から『チャーリーとチョコレート工場』を。最近すっかり精彩を欠いている印象だけど頑張ってほしいジョニー・デップ×ティム・バートンのタッグの一作。

物語は一応子供向けの物語ではあるけれど、美術面はもちろんのこと、見た時に音楽の完成度の高さに驚いた一本です。2005年公開なんて、もう結構前の作品だったんだ。

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1曲目の「Wonka's Welcome Song」が、いかにも遊園地のアトラクション、それもコースター系の激しいやつじゃなくて、浦安のあそこの「小さい世界」でかかっていそうなオルガンのフガフガした音で始まる、一応可愛らしさも感じる曲。映画の世界観がすぐ伝わる。

で、そういう遊園地っぽい曲ばかりかと思ったら、チャーリーと一緒に工場見学に行く4人のキツイ子供たちそれぞれのテーマ曲のようなものを、工場にいるウンパ・ルンパ族が歌っているという、サントラとしては結構意外な方向に。主人公たちが歌って踊るミュージカル映画ではないんだけど、その楽曲どれもをウンパ・ルンパたちが歌いながら動くことで、楽しいし音楽の印象がどうしても強くなるように作られてる。ウンパ・ルンパの悪ふざけ感が個人的にめちゃくちゃ好き。見た子供はそのシーンを一発で覚えるんじゃないかな(怖がる場合もあるかもだけど)。

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その子供たちのテーマ曲の完成度がどれも高いっ。2曲目はオーガスタスの「Augustus Gloop」で、妙にリズミカルでドラムというかボンゴとブラスが鳴ってるような曲だと思ってたら、作曲者コメントによると「派手なインド映画からヒントを得た」そうな。でもさらにダークな匂いもする結構暗い曲だと思う。ウンパ・ルンパたちのダンス最高、チョコの海でのシンクロナイズドスイミング的なところもサイコー。

次の3曲目がガムを噛み続けてるバイオレットの曲で「Violet Beauregarde」。これは前の「Augustus Gloop」のメロディーがちょっと入ってくるけど、70年代レトロファンク風になってるということです。「チュイーンチュイーン オーダロング♪」(わざとカタカナ)のところが楽しくて口ずさみたくなる。ウンパたちのファッションもレトロフューチャーというかスペイシー。

さらに次、4曲目はベルーカがダストシュートを落ちてく、ていうのが歌詞の内容の「Veruca Salt」で、この曲の無駄なハッピー感が異様に笑えるなー、と最初に見た時から感じていたら、作曲者いわく「60年代ヒッピー的なハッピーさのある、サイケ調ラブ・ソング」ってことで合点がいきました(笑)

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その次5曲目は、ビデオゲーム中毒のマイクの歌「Mike Teavee」で、TVの害を歌いあげているハードロック調でスピーディーな曲。後半は若干、あれ?クイーン?ボヘミアン?ってところもある。ウンパ・ルンパも長髪ハードロックバンドの扮装。

と、そこまでがそれぞれ世界観が強すぎて、どうしても映画を見た第一の印象がウンパ・ルンパになってしまうのはやむなし。そもそも原作の中で、作者のロアルド・ダールが作った詩があって、ウンパ・ルンパがそれを詠唱する。その詩を多少アレンジしながらもそれぞれのテーマ曲のように仕上げた、ということだったみたい。サントラにもその4曲が先に入ってて、いかにもサントラっぽくなってくるのは6曲目の「Main Titles」から。

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音楽を担当したのがミュージシャンのダニー・エルフマンで、ティム・バートンとのコラボをずーーっとやっている人だそうで、(デビュー作の『ピーウィーの大冒険』から! 途中抜けてる作品もあるけど)、だから「Main Titles」だけでも、そうそう!ティム・バートンの映画!ってすぐ伝わる暗さとゴスの雰囲気と、ちょっとだけふざけてる印象がすぐわかる。もちろんアカデミー賞にも何度もノミネートされてるみたい(でも受賞していないっぽい、なぜだ! 1回くらいあげたい、よく見たらドラマの方の『デスパレートな妻たち』でエミー賞は受賞してる)

し・か・も、上で紹介してるウンパ・ルンパの曲は、全部彼がひとりで歌ってるんだそうな、すごい、笑 ちょっとYouTubeで探したら、吹き替え版では全部日本語吹き替えの歌になってたけど、雰囲気はそのままだったけど、やっぱし一度は元曲で聴いてほしいです。

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で、そんなクセの強すぎる4曲のあとに、きっちり16曲も入っているのですが、それらは正直サントラらしい場面を邪魔しない曲が多いので、突出して耳に残る曲は少ない(それが悪いという意味ではありません)。13曲目、『Loompa Land』が、またちょっと2曲目のメロディーのマイナー版がうっすら聞こえてウンパたちの雰囲気で楽しい。

16曲目『First Candy』も『Main Titles』を踏襲したようなゴスなワルツで、黒・ボルドー・紫・深緑、みたいな色が浮かぶ。ちょっとどこかの部族のダンスみたいな15曲目『The River Cruise』がさらにパート2として18曲目にも繰り返されるのも、遊園地音楽っぽい。えーとジャングル・クルーズかな?

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そしてちょっと切なさのある優しい『Finale』のあとに、ダメ押しで21曲目『End Credit Suite』は、オープニングのウォンカの曲のちょっとだけアレンジからまたあのウンパたちのメロディーへ。

と、どうやってもウンパ・ルンパの魅力に勝てない感はあるんだけれど、それを含めても映画の世界観がすぐ伝わる、良い一枚です♪

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