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デザイナーになる

デザインの会社を初めて16年目になりました
毎日デザインに向き合ってお仕事をしていますが、
日々「デザインとはなにか」について考えさせられています。

デザインになじみの無い人も居ると思うので簡単に説明すると
デザインとは自己表現である「アート」とは違い、
他者の抱えている問題を解決する為のプロセスと、その結果であると言えると思います。

ようするにデザイナーは「課題を定義する者」であり「問題を解決する者」であるのです。
(エンジニアリングとも似ているなと思います。)

例えばイスのデザインについて考えてみましょう。
なぜイスが必要なのでしょうか?
『ずっと立っているのは疲れる』
という課題はすぐに見つかるかもしれません。
ではこの課題を解決するためには『座ったら疲れるイス』はデザインとは呼べません。
『座ったほうが楽』
この程度の課題を解決すればよいのであれば腰の高さの四角い体重を支えられるモノ、で解決出来るかもしれません。
こうした思考はもちろんデザインのプロセスの1つです。

ただし課題を見つける事が出来て、解決策の仮説を立てられたとして、『疲れないイス』をデザインするためには知識が必要です。
例えば人間工学だったり、素材の知識や素材加工の知識も必要でしょう。そして見た目の美しさに関する知識も重要だと思います。

こうした知識は基本的には「学ぶ」事でしか得る事はできません。センスで得られるものではないからです。
確かにヒトは感覚的に「良い物」を知っていると思います。
しかし仕事でデザインをする上ではこうした『良い製品(ここではイス)を作るための理論と知識』が絶対に必要なのです。
その理論を持たない人はイスのデザイナーとは呼べないと思います。

よく話題に上がる議論で「3ヵ月でデザイナーになれるのか」というものがあります。
デザイナーと名乗るに当たって資格は必要ありません。
しかし、1つの基準として大学で学んだかどうか(学位)があります。

4年間大学で140単位を取るとしたら、座学だけで約1300時間程度です。
レポートやゼミ、卒業制作の時間もあるので、トータル2000時間位勉強しているかもしれません。
仮に3ヵ月一睡もせず勉強したとして約2160時間。
センスのレベルが同じだったとしても、4年間と3ヵ月ではさすがに成長できる幅が違うのは明らかです。

それからちょっと脇道にはそれますが
デザインとよく並列に語られる「ブランド」について。ブランドはそもそもは付加価値という意味です。
モノそのものの価値があって、そこに自己に有力なイメージ戦略を行うのがブランドです。

例えば「ロゴデザイン」というとき、ブランドも勿論デザイン対象です。
しかしロゴの美しさそのものの価値というのは、やはりセンスでは生み出せません。これは上で述べた様に「良いイスを作るには理論と知識が必要」だからです。ロゴだって同じです。

国民総クリエイター時代とも言われ、デザインというものが人びとにとって身近なものになっています。
個人的には誰もがデザイナーであると思っています。
デザインは日々の生活や学びで得た知識を自分の中に貯めておいて、それをよせ集めてアウトプットする作業なので誰でも出来るからです。

しかし、日々の生活や学びで得ていないものはアウトプット出来ません。だからこそデザイナーはデザインの理論を学ぶのです。
エンジニアがプログラミングを学ぶのと同じだと思います。

だれもがデザイナーだし、エンジニアになれます。
その為には製品を生み出せる知識と理論が必要であり、
そのための勉強は3ヵ月では全然足りなくて、一生学び続ける長い道のりだということをどのデザイナーもエンジニアも知っているのだと思います。

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