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「施設運営費の圧縮及び財政負担の軽減」への反証 ~単独学童編~

※この記事は民営化の怪しい成果の続きです。

さて、民営化の実績で一番大きいのがこれです。財政負担軽減。

一区民としては、仮にサービスなどが多少下がったとしても、財政負担軽減になるなら許容しても良いかもしれない、とは思っています。

では、本当に財政負担軽減になっているか見ていきましょう。

まず、学童の費用についてですが、その多くが「人件費」です。施設にもよりますが、人件費は運営費用全体の8~9割を占めます。つまり、民間の人件費の方が公務員よりも安いという前提で、学童(および保育園)の民営化は進みます。

公務員の給与って民間の平均じゃなかったっけ? というツッコミは置いときます。

さらに、その施設に障がいなどで配慮の必要なお子さんがいると、「加配」といって、基準を上回る人員を配置します。もともとが数名規模で運営されている学童が多いので、加配が起きると費用が増えます。

加配については、目黒区では民営の場合も同じ基準で運営されています。その分、区から補助が出るので、民間企業の財政負担が増えるわけではありません。

区の説明

目黒区では、当初削減額を出して無かったのですが、私などが質問をしたところ、後になって(質問したタイミングでは計算されて無かった)次のような回答が出ています。

委託化した場合としなかった場合の施設運営費を比較したところ、施設平均で年間約1,300万円程度、削減できる結果となりました。今後の委託化においても同水準の削減ができると考えています。

これまた酷いまとめ方です。ここまで来ると隠蔽と言えるかもしれません。私の方で詳細を説明します。

施設平均1300万円削減

まずは、この数値がどこから出てきた方説明をします。各施設の費用は目黒区のHPにあるので、そちらから取得しました。

下記が、対象学童を年度別にまとめた数値です。赤字のところが民営化された年です。

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その前後の数値を比較すると、下記のようになります。

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これを足し上げると、確かに1施設平均で約1300万円の削減ができてますね。これが根拠です。

ちなみに、各施設の公営の時の人件費ですが、実際に掛かった費用ではなく、公務員の平均給与×人数計のような計算がされているようです。行政内でも、この数値を使って説明されていました。

では、中身を精査していきましょう。

費用の中身の精査

費用には幾つか項目があるのですが、今回は目黒区が施設運営をするので、費用的に影響のある「人件費」だけ比較したいと思います。

下は宮前小内学童の数値ですが、この中の「施設運営」が委託事業者に払われる金額です。その費用と公営の時の「人件費」を比較してみましょう。なぜこのような事をするかと言うと、例えば、宮前小内学童は民営化前年に事業費684万円という一時的な費用が出ています。中身は分かりませんが、このような費用の影響を無くしたいと思います。

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また、不動学童は児童館と合算になっていて、こちらは別の問題がありそうなので、まずは学童単独で計算できる3学童についてみてみます。

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最初にも書きましたが、配慮の必要なお子さんが居る場合に加配が起きるので、費用の上下はそのような環境の影響もあります。

まずは、目黒区と同じように民営化前後の年で人件費関連だけを比較してみると下記のようになっています。

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宮前小内学童は削減できていますが、中根小内学童は、逆に費用増となっています。合算でギリギリ費用削減出来てます。

単年だけで見ても分からないので、手元にある資料の2015年度~2019年度で3学童の公営の時と民営なってからの費用の平均の差を見てみます。

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平均の差では3学童を合算しても費用増となっています。宮前小内学童は、あれだけ苦労して民営化したにも関わらず、平均で年間7000円の削減という、悲惨な結果になっています。中根小内学童に至っては、かなりの費用増となっています。

「利用者が増えたのでは?」という疑問もあるので調べてみました。利用者と利用者あたりの単価となります。

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 この3学童に関して言えば、利用者の増減は大きくありません。

時系列だけでは分からないので、2019年度の3学童と同規模の学童の人件費を比較してみます。

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こうやってみても、民営の費用の優位性は見受けられません。

また、比較している学童の中に児童館併設の学童がありますが、公営の場合は児童館と学童の職員が完全に別で配置されるので、人件費としては単独学童として見ることができます。

ここからは推測です。

まず烏森学童が比較的安く運営できてるのは社会福祉法人だからかもしれません。ただし、同じ法人が運営している烏森第二学童では、他の同規模の学童と比べて費用優位性はありません。

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一方、中根小内学童・宮前小内学童がコスト削減につながってないのは株式会社であることが大きいかもしれません。おそらく、民営の職員に支払われている給与は公務員より安いのだと思いますが、利益を出すためのマージンや管理コストが上乗せされ、場合によっては公営の時よりも費用増となるのだと思います。

結論を言うと。

単独学童の場合、株式会社が受託すると費用は下がらない。社会福祉法人などが受託すれば下がる(場合がある)。

というのが3学童を見た結果です。

※根拠となっている数値はすべて目黒区が公開しているものです。時間が経過すると目黒区のHPから削除されるので、下記にコピーが置いてあります。
https://app.box.com/s/a1sq7kfbz5vklf8qjt80vign74n4224v

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