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【フェムテック通信#21】Femtechと法改正の関わりを知り、ビジネスのヒントにつなげよう

フェムテックは、女性の健康やウェルビーイングに関連する製品・サービスの総称で、女性の健康課題の解決や、女性の社会進出を後押しする可能性があることから、近年注目されている。

2022年4月から段階的に随時施行されている育児・介護休業法改正や、2022年4月からの女性活躍推進法改正は、フェムテックの普及・拡大に大きな影響を与える。

例えば、育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業取得が促進されることで、男性の育児参加が進み、女性の負担が軽減される可能性がある。

また、女性活躍推進法の改正により、企業が女性の活躍を推進する動きが活発化することで、フェムテックへの需要が高まる可能性が考えられる。

このように、フェムテックと法改正は、相互に影響し合いながら、女性の健康やウェルビーイング、そして社会全体の活性化に貢献できる。フェムテックビジネスを考える上で、法改正の動きを知っておくことは、企業向けサービスを推進するための重要な観点となることから、法改正のポイントを紹介したい。

1.育児・介護休業法の改正(2022年4月から段階的に施行)

育児・介護休業法は、1991年に「育児休業法」として施行開始された。
この法律は、労働者が子育てや介護を行うために休業したり、短時間勤務などを認め、企業に一定の義務を課すものとなっている。
2022年4月に施行された改正育児・介護休業法では、男性の育児休業取得促進が強化された。

(1)育児休業の取得状況の公表義務付け

注目すべき1点目は、2023年4月1日施行「育児休業の取得の状況の公表の義務付け」である。

<育児休業の取得の状況の公表の義務付け>
改定後の制度の概要
・常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf

「義務付け」というのがポイントであり、「努力義務」ではなく義務付けすることにより、企業の取り組む姿勢が格段に違ってくる。

具体的には、「育児休業等の取得割合」または「育児休業等と育児目的休暇の取得割合」のいずれかの割合を公表する必要がある。
企業は、「自社ホームページ」や「両立支援のひろば」などのインターネットなど、一般の方が閲覧できるように公表しなければならない。

「両立支援のひろば」は厚生労働省運営のウェブサイトで、両立支援に取り組む企業の事例検索や、育児休業取得率の公表も行うことができる。

(2)くるみん認定基準の改正

企業が、次世代育成支援対策推進法に基づいた一般事業主行動計画の策定・届出を行い、その行動計画に定めた目標を達成するなどの一定要件を満たした場合、「子育てサポート企業」として認定している。

くるみん認定制度が設立された背景として、日本の深刻な少子化問題がある。夫婦共働きが7割以上を占める日本においては、企業の取り組みが重要であり、仕事と育児の両立がしやすい環境を整えるため、くるみん認定制度が誕生した。

くるみん認定を受けることは、企業のイメージアップや人材定着率向上につながる。

認定制度は、くるみん認定・プラチナくるみん認定・トライくるみん認定があり、認定基準は、女性の育児取得率75%以上、労働時間数はフルタイム労働者の月平均時間外・休日勤務が45時間未満、全労働者の月平均時間外労働が60時間未満となっている。

さらに、不妊治療と仕事とを両立しやすい職場環境整備に取り組む企業には、「プラス」認定もある。

民間企業の男性の育児休業取得率は、現状13.97%(2021年)となっており、2025年の目標値は30%となっている。

2.改正女性活躍推進法の義務化(2022年4月全面施行)

女性活躍推進法は、2016年に施行。女性が仕事と家庭を両立させやすくし、女性の活躍を促進することを目的としている。

女性が活躍できる行動計画を策定・公表するように義務付けているが、2022年4月に全面施行された改正女性活躍推進法では、女性活躍推進に関する情報公表企業の範囲が拡大し、大手企業中心だった取組から中小企業までが対象となっている。

<女性活躍推進法の対象企業>
・2022年3月31日まで:常時雇用の労働者数が301人以上
・2022年4月1日から:常時雇用の労働者数が101人以上

<女性活躍推進法の行動計画の策定・公表>
1.女性労働者の「活躍状況の把握」と「課題分析」
2.行動計画を「策定」「社内周知」
3.行動計画の「公表」「届出」

世界から見ても、日本は女性管理職の割合が低いこともあり、女性活躍に関する現状把握や課題分析、数値目標の設定や公表などを国が義務付けることにより、企業の職場環境を整える体制を作ろうとしている。

まとめ:法改正の動きをいち早く掴み、企業側のメリットを把握しよう

筆者は多くのフェムテック企業から事業に関する相談を受けるが、特に多い内容が、「フェムテック事業を福利厚生事業として展開したい」というもの。法改正により「企業が何に取り組む必要があるのか」を、いち早く知る必要がある。

例えば、2023年4月から育児休業の取得状況の公表が義務付けられているが、公表期限は「事業年度終了後、3ヶ月以内」となっている。
3月決算の場合、2023年3月末までの育児休業の取得状況を、2023年6月末までに公表する義務がある。
つまり、法改正がはじまってから取り組むのでは、遅れをとってしまう。

法改正の動きを把握する方法は、政府のウェブサイト、業界団体からのニュースレター、メールマガジンを定期的にチェックすることなどがある。
法改正は、既存のビジネス慣行や運用方法を変更する必要も出てくることから、新しい規制や変更された規制に準拠しながら、法改正の潜在的なリスクを把握して、機会を活用していきたい。