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朝井リョウ「正欲」
震えた小説「正欲」備忘録
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朝井さんの書く文章が天才的に鋭くて震え、
テーマとなる多様性という言葉の魔力にまた震え、
各登場人物の結末に向かって絡み合う人生のもつれ方に
またもやぶるぶる震えた。
この小説、どこもかしこも「多様性」っていってることが当たり前になってる社会への強烈な不意打ちの一撃だな。
読みながら
あーそれ私です
ごめんなさい
すいません
許して下さい
と懺悔したくなる。
そうなの。
多様性っていっときながらなんだかんだでね、
出来れば枠からなるべくはみ出ないようにってね。
“正しい命の循環”のなかを、多数派や世間から真っ当とされるモノたちに
ちゃっかりもたれ掛かりながら生きてるし、生きてたいの。
楽だもの。
それで理解の及ぶ範囲で納得できる多様性を
うんうんそうだよね、大事だよねって分かった気になってる。
多様性はマイノリティのなかのマジョリティにしか当てはまらない
言葉の織りなし方が切れ味鋭くて深すぎる。
人は結局、その人の経験、知識、思考、感覚をもって理解の及ぶ範囲でしか納得できないのかもしれない。
自分の見えている範囲のせまさを思い知らさせれた。
自分の尺度で自分以外の物事を測ろうなんてお門違いなんだよな。
見えているものが全てではないし見えないものの方が多い。
目に見えないから存在しないではない。
見えないものを尊重することが出来るかな…
"多様性について寛容になりたい"
その考え自体がマジョリティの傲慢なのかもしれない。
無意識的に、簡単に人をカテゴライズするラベルを貼るのは良くないな。
人のふり見て我がふり直せだな。
傑作です。
あまり大きな声でいえない類の傑作です。
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