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【ロマン感じるフランス語】rivièreとfleuve、2つの川の違い

 この読み物では、私がおもしろいと感じたフランス語の表現や知識をお届けします。今回は、川という意味の「rivière」と「fleuve」の違いについてです。

 フランス語には「rivière」と「fleuve」、川と訳される言葉が2つある。
 2種類あると知ったのはだいぶ前であったが、あまり使わない言葉だったので深くは調べず、そのままおろそかにしてしまっていた。けれどもリヨンにフランス語の短期留学に行った際に、また授業で出くわすこととなった。
 というのも、リヨンにはソーヌ川とローヌ川と2本の川が流れていて、ソーヌはrivièreだがローヌはfleuveだというのである。リヨンならではの土地にちなんだ話題が提供されてというわけだ。
 授業で先生になんで違うのかわかる?と訊かれたが、勉強不足だったわたしはキョトンとした顔をすることしかできなかった。
 
 日本でフランス語学校に通っていたとき、同じく授業を受けていた生徒さんにrivièreは小川という意味だ、と聞いたことがあったのを思い出す。けれどもrivièreであるソーヌ川は例えば東京の目黒川なんかよりも川幅もあり水量も豊かで、決して小川と呼べるような代物ではない。そもそも大きさで区別しているのであれば、日本語と一緒で「大」だの「小」だの付ければ良いだけの話なのだから、それ以外の概念がなければおかしいのではないか。あぁでも、日本語の「川」と「河」の違いなのかな? そんなことを思いながら、お手上げだったわたしは誰かが答えを言ってくれるのを待っていた。

 すると、同じく授業を受けていたスイス人の女の子が知っていたらしく、教室の壁に貼ってあった地図を子どものようにばんばん叩きながら何かを言っている。早口な彼女の解答が聞き取れなくて困っていると、先生がわたしと目を合わせ、何を言っていたのか説明してくれた。その説明によると、この2つの川は、海につながっているかどうかで区別されているらしい。なるほどと思ってもう一度スイス人の女の子の方を見てみると、その手はla mer Méditerranée(地中海)を指していた。

 リヨンには合流博物館(フランス語だとMusee des Confluences)というおもしろい名前の博物館がある。その名の通り2つの川が合流する地点に建てられた博物館で、中には恐竜の骨やらミイラやらさまざまな歴史的資料がずらりと飾られている。
 留学ももうおわろうしていたある日のこと、わたしはリヨンの5つの美術館やら博物館をまわれるチケットを購入した。その中のひとつが合流博物館だったので、せっかくだったら合流地点を見てみようと思い、朝から路面電車に乗って足を運んだのだった。

 合流地点は公園のように舗装され、誰もが近くで川を眺めることができるようになっていた。わたしは一番先まで歩いて、そして視界の中は川と空だけになった。
 秋晴れが美しい、眩しい日だった。
 リヨンを流れる2つの川はとけあい、たっぷりとした水をたたえて大きくひろがり、さらに大気の霞で空とも一体となっていた。
 2つあった川のひとつであるソーヌはここで名前を失ったのだ。川はローヌとだけ呼ばれるようになり、そしてローヌもまた南に流れて行き着いた先でla mar(海)とひとつになり、la mer Méditerranéeと呼ばれるようになる。
 「rivière」と「fleuve」の違いを理解してそんなことを思って川を眺めていたら、わたしはなんだか壮大なものを見ているような気持ちになったのである。

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