あしたからほんきだす

「ねむすぎてはきそう」
起床後だいたい毎日そう思っている、私。

病院で測定する機会があるたびに「えっ」と言われるのだけどどうやら私血圧が異常に低いらしく、関係あるのかないのか知らんけど朝起きるのがとにかく苦痛で「ああよくねたスッキリ!」という目覚めを経験したことがほとんどない。
その上夜中には何度か寝たきりの娘に寝返りをさせたり呼吸器をなんやかんやしたりなどのケアで起きなければならないし最近は猫の夜泣きがひどく何度も何度も起きてはなだめ寝かしつけし(これはもう本当に書いていても意味がわからんのですけど猫の夜泣きって何?)朝起きるのは本当に本当に、毎日心の底から「ねむすぎてはきそう」。

とはいえ、いくら苦痛だとぼやいたところで毎日朝は来るし大体赤ちゃんでもない限り毎朝嫌でも起きなければならないのが大人の人間ってやつの営みであり、我が家でいえば娘のケアに休みはないし猫は夜泣きしたくせに朝ご飯はきっちり要求しお腹が膨れるとさっさとあたたかい猫ベッドで「もう眠たーてしゃあないわ」と眠っているのを見ると夜寝てくれりゃいいものをコノヤロウと思わなくもないですが説得したところで聞くはずもなく、だって猫ですもの、猫様ですもの。

それでも毎日なんとか起きねばと策を練り練りした結果、何重にもかけられたスマホのアラームと、もうひとつ机の上にセットしiPhoneと同じく何重にもかけられたiPadのアラーム、そしてダメ押しで毎朝掃除機をかけるには少々早すぎる時間に動き出すようスケジュールをセットされたルンバのガーーーーという音を「ご近所迷惑にならないうちにサッサと止めねばならない」という精神的圧力を利用して、来る日も来る日も無理矢理体を起こしルンバを止めて、体さえ起こしてしまえばまるで起きていない頭も後を追いかけるようにだんだんハッキリしてくる、そして程々の時間になったらルンバをまた動かす、はずだったのですが。

今朝のこと。
アラームが鳴った瞬間の記憶は微かにあるのに、その後一瞬で時計の針はヘルパーさんの来る1分前をさしている。

なに?ワープした?どういうこと???きょうなんようび??????

アラームはどうした!ルンバは!?とあたりを見渡すと全てのアラームはきっちりご丁寧にスヌーズまで切られていて、ルンバもご丁寧に止めてあり中途半端な場所で行き倒れていて、猫はご飯の催促もせずにもうすっかり猫ベッドにおさまっていて

な ん で や 

まったく身に覚えのない自分の行動の形跡に混乱した頭と目覚めきらない体とでフラフラと、インターホンが鳴るまでの1分で私にできたのは娘の顔を覗き込むことくらいで、覗き込んだその顔はそれはもうニコニコで、すっかり起きている、ごめん…
ヘルパーさんが来るまでにいつも終わっている朝の栄養剤の注入もお薬の注入も浣腸もガス抜きもまだで、いつもなら既に離脱しているはずの呼吸器もついたままで、いつもならルンバがピカピカにしてくれているはずの床もルンバをご丁寧に止めてあったため散らばる埃も猫の毛もそのままに、布団は今私が飛び出した形のままで温いままそこにあり、ああああなにもかもが手付かず…無情にもピンポーンとインターホンが鳴った。

「おはようございます…今起きました…」

起きたままの薄汚れた親子と起きたままの薄汚れた部屋でお出迎えするとそこには
「私も今日出発ギリギリに起きてめっちゃ焦りました…間に合った…」
すっぴんのヘルパーさんが立っていて、勝手にまたひとつ距離が縮まった気がしたのでした。

その後、押しに押したケアのあれこれはヘルパーさんの手を借りながら爆速で巻き返し、娘は慌てる大人二人に囲まれガハハと笑いながらとても楽しそうで数年ぶりの大寝坊は春休みの学校もデイもお休みの今日の、ちょっとした思い出のひとつにでもしておくことにします。
(あしたからほんきだす)

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