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【会葬礼状】#5 あの海で会いましょう

物静かで絵を描くことが何よりも大好きだった姉。暇さえあればいつも漫画を描いてた姿が今でも私の心に色鮮やかに映し出されます。どんなに辿ってみても、言葉を多く交わした記憶はないけれど、一緒に過ごした最後の年、私の運動会とピアノの発表会にひとりで足を運び、物陰から静かに見守っていてくれていたあの眼差しは、姉の精一杯の愛情表現だったのだと今ならわかります。
しつけの厳しい家だから、口を開けば叱られることがたくさんありました。家族とぶつかった時、いつも自分の意見を主張していた姉をよく覚えています。あれから私も何度も家族とぶつかってきたから、もし生きていてくれたら私の唯一の味方なのかもしれないと思わずにはいられません。

あの日、佑子ちゃんが最後に見た海に、言葉にならない程、美しい夕日が沈んでいくのを目にしました。あの景色は今日も変わらず私の心の中で温かく輝き続けています。私が命を生き切ったら、あの海で再会しましょう。もう声も思い出せないけれど、話したいことが山積みで、どれだけ時間があっても足りません。美しい波の音に包まれながら語り合える日を心待ちにしています。

平成七年九月二十五日、姉 〇〇 佑子 は、満十六歳にて生涯をとじました。
生前心通わせ支えて下さった皆様へ、深く感謝申し上げます。
略儀ながら書状をもって謹んでお礼申し上げます。


11回目の命日の空

大切な友人、ルリちゃんのお姉さんが亡くなってから28年経ちます。
時を超えて、どれだけ時間が経ったとしても、このような形にすることで大切な人との思い出を色鮮やかに蘇らせることが出来ると知りました。

もっと命を書きたいです。
ルリちゃん、ありがとう。

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