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受賞作品【ヤマムラメグミノエッセイ】#4 はじめてのひとり旅

公益社団法人 日本理学療法士協会
理学療法の日(7月17日)にちなんだ
第10回「笑顔をあきらめない。」写真コンテストにて
優秀賞を受賞させていただきました。

「メグちゃん、リハビリの時間だよ。」

毎朝、同じ時間にカーテンが開く。
抗がん剤治療の真っ只中でも容赦ない。ベッド上でぐったりした私の足が力強く掴まれ、先生の手によって勝手に動き出す。

(スパルタだ...鬼だ。)

気持ち悪さに耐えながら、そんなことばかり頭を巡る。

23歳で右腸骨骨肉腫と診断。
身体障害者になる自分を受け入れられないまま、手術で骨盤の1/3と中殿筋、小殿筋の一部を失った。

立ち方すらわからなくなった自分に震えが止まらない。
歩けない自分が悔しくて許せなかった。
リハビリのない日は先生に教えてもらったように一歩ずつ、声を殺して泣きながら階段を何往復もした。

ついに歩けるようになったとき、自分事のように喜んでくれた先生とは、今でも友人のように仲が良い。

あれから18年、ひとりでは何も出来ないと思って生きてきてしまった私が、はじめてひとり旅に出た。

自分の足で自由に歩き、美しい景色を見る。

生きるって最高だ。

ひとり旅先 静岡県南伊豆町にて

18年間、私の担当PTであるリエちゃんへ。愛を込めて。


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