実録!モラハラサバイバー3

食洗機事件

 問題は、食器洗い乾燥機の中への包丁のセットの仕方だった。
 食洗機というのは、食器を効率よく洗う為に、なんとな~く食器の置き場みたいのものが決まっている。
我が家の食洗機には包丁をセットできる溝みたいなものがあって、私は深く考えもせずに取説の絵の通り、そこに刃を下に向けて包丁を入れていた。
かれこれ1年以上もその使い方でやってきたある日、夫がこの世の終わりみたいな声で叫んだ。
「なんで、包丁の刃、下に向けて入れてるの!?こんなのさぁ~、中プラスチックだよ?刃が当たったら傷になって、そこに細菌とか溜まるよ?食器洗う所だよ?」
なんにしろ、私の無神経が信じ難いという風で、えらい剣幕だった。
取説の絵では刃は下を向いていたけど、下向きにしろと説明がある訳じゃないし。とにかく、言ってることにも一理ある。
そんな言われ方をされるほどの事かと、悲しくはあったけど、刃を下に向けようと、上に向けようと、私にとっては大した問題じゃない。そんなに気になる人がいるんなら、入れ方を変えましょう。
と、その日以来、我が家では包丁の刃は上向きに食洗機にセットするようになった。

 事件はその1年半後くらい経った頃だった。ある日、夫がこの世の終わりみたいな声で叫んだ。
「なんで、包丁の刃、上に向けて入れてるの!?こんなのさぁ~、どう考えても危ないでしょ!オレ何度も手ぇ切りそうになってるよ。」
何度も手を切りそうになるほど、夫が食洗機にまつわる「お手伝い」をしていない事は、今は置いとくが。なにしろ、そのセリフは「この常識知らずめが」というニュアンスを含む、本当に酷い言い方であった。
 ちょ、ちょっと待ってくれよ。刃を上にしろと言ったのは誰だよ?と、私はこの時、本気で夫の解離性同一性障害を疑った。
別の人格が言った言葉はきっと覚えていないんだ。
 多少不条理でも、一緒に暮らすパートナーが、その方が気分良く過ごせるなら、そして自分が譲れることなら、望み通りにすることは、やぶさかではない。でも、でもね、人格はどれか一つでお願いします。
望みがコロリと修正され、更には、都度私がヒトデナシみたいな言われ方をされるのは正直しんどい。
「気が変わったから、これからこっちで」
「やっぱり、このやり方じゃない方がいい」
じゃ、ダメなのかな?何かを修正する時には、徹底的に攻撃し破壊しつくさないといけないのかな?
 これが、ストレス発散のための粗さがしの結果なのか、多重人格者には起こり得る「あるある」なのか、真偽のほどは実はまだ判断できないでいる。


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