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キーワードは「つくる側への参加」。コミュニティが食を、農を、地域を加速する。めぐるめくプロジェクト宮崎拠点始動

2022年12月16日。場所は宮崎県高岡町。
食と農を通じて地域の活性化を目指す「めぐるめくプロジェクト」の宮崎拠点が始動しました。
めぐるめくプロジェクト詳細についてはこちらの記事から

オープンに際して、帖佐副市長・三菱地所吉村の挨拶から始まり、三菱地所広瀬・エコッツェリア協会の田口さんの基調講演、一平ホールディングス村岡さんがモデレーター役を務めるトークセッションに九州テーブル内村さん・三菱地所広瀬・70seeds岡山が登壇と盛りだくさんなイベントを開催しました。会場には宮崎の生産者や加工者、また地域を活性化させる食や農の関係者に留まらない多くのプレイヤーが集いました。

なぜMUKASA-HUBがめぐるめく拠点に?

九州で飲食店を展開する一平ホールディングスが、廃校を活用した地域のハブ・MUKASA-HUBの一部を改修してできた新拠点。従来からあったシェアスペース・コワーキングスペースの機能に加えて、シェアキッチンとプロジェクトルームを整備しました。

2017年のオープンから5年、地域におけるスタートアップの成長支援の場を提供してきたMUKASA-HUB。更なる地域の活性化を目指し、めぐるめくプロジェクトと連携することで食や農のコミュニティ拠点としていく、その想いを一平ホールディングスの村岡さんが語ります。
 
村岡さん:地域の食と農のコミュニティが育まれ、新しい「宮崎らしい商品」が生まれる場になればと思っています。例えば、地域でクリエイターに出会うというのはすごく重要です。農家さんはすごく素敵なものを作っているのですが、東京に持っていって売り込んでいくときにちょっとパッケージのデザインが弱かったり、もっとかっこいいウェブサイトはないのか、とよく言われます。そうした生産者の悩みや、クリエイターを含む食産業を取り巻くプレイヤーとの接点になりたいという思いがあります。
めぐるめくプロジェクトは始まったばかりで、このMUKASA-HUBは全国でも先行拠点となりますし、まさに実験場です。

台湾で販売中の「九州パンケーキのワッフル」

「めぐるめく」を体感!伝統野菜の黒皮かぼちゃをどうする?

モデレーター村岡さんの「黒皮かぼちゃ、知っていますか?」との問いかけからスタートしたトークセッション。「めぐるめく」はこんな風にお題を持ち寄り、みんなで意見を出し合い、みんなで課題解決をする場としての機能をもちます。
 
黒皮かぼちゃは1542年にポルトガルから持ち込まれた、宮崎県で生産されている伝統野菜。現在では、作っている農家さんは2軒のみという希少なかぼちゃです。

黒皮かぼちゃを使った試作のプリンを食べながらセッション。左から村岡さん、広瀬、岡山、内村さん

そんな黒皮かぼちゃをこれからどんな風にPR・ブランディングしていけばいいか。登壇者だけでなく、会場の方も巻き込みながら議論が行われました。
 
広瀬:私が大事にしているのは「参加する」ことです。例えば東京ではトマトひとつでもスーパーには何種類も並びます。その中で一つの商品を選ぶ基準が「価格」となる場合、自分が何か関わったことがある、つまりは「参加性」が選択の一つの理由になるのではないでしょうか。
 
田口さん(会場参加者):関心を持ってから、購入できるという経路を作っておけるかどうかが重要ですよね。ECサイトがなかったり、その動線が煩雑だと途中でやめてしまう。いかにアクセスしやすい環境を構築できるかがポイントだと思います。

会場を巻き込みながら進むトークセッション

宮崎県農林水産局担当者(会場参加者):PRって本当に難しくて。農家さんが作り続けるためには、もっと高くなければならない。できれば一玉1,000円くらい(現在:約500円)になってくれたら、もっと作ろうと思ってくれるんだろうなと。そこに持っていくための仕組みをいろんな方法で作っていく必要があります。
 
地域のデザイナーの方からも「のぼり」のデザインに対して「もう少し可愛いこのかぼちゃの写真が目立つデザインの方が」との意見も上がりました。
 
村岡さん:これから起きていくのは、まさに今のような議論が起きることですよね。めぐるめくプロジェクトは、生産者だけではない多様な主体が関わりながら、課題に対してソリューションを見つけていく。美味しいものを作っても、どうやって売るかが難しい。それをみんなで対話しながら具体の解決策を創造していく場です。

マスの時代からコミュニティの時代に。これからの商品開発やブランドの広がりとは。


黒皮かぼちゃの話に続き、「作ってから、どう広げていくのか」や「どうすれば応援してくれるか」が議論のポイントになりました。
 
九州パンケーキの事例から学ぶ、地域商品の広げ方
各所から評価を受け続ける「九州パンケーキ」を販売する九州テーブルの内村さんは、重要なのは、①地域だけに閉じた商品にしなかったこと②世界観を広げていく地道な活動であると話します。

九州テーブル内村さん

内村さん:地域だけに閉じ込めた商品にしなかったっていうのがポイント。流通コストを考えると、近くの道の駅で売るのが一番簡単。東京で売ろうとするといろんな手間やコストがかかる。九州パンケーキの一番の強みは、最初から「私たちは海外や東京を目指して行こう」としたことだった。
また、地域の商品って一定の売り上げを越えるとどんどん下がってくるんですが、僕らは九州中の小学校を回ってパンケーキ教室をやったり、フレーバーを広げて楽しみを広げたり、丁寧に世界観を広げていったことが事業拡大には大きかったのかなと思います。大きなマーケットを見ながら、地域を大事にしていくのが重要だと思います。
 
コミュニティで消費する時代に。コミュニティの旗印となる「めぐるめくプロジェクト」
最後に盛り上がったのは「応援される商品とはどんなものか」という問いでした。

70seeds岡山

岡山:一番は心からそれを応援したくなる人がいるかどうか。とりあえずバズらせて売るという方法もあるけど、メディアはそういうものを取り上げなくなってきているというか。10年続いてきた九州パンケーキの華々しい実績の裏側にパンケーキ教室という地道な活動があることこそファクトの1つですよね。
 
広瀬:これから九州パンケーキが1,000億売り上げるとか、そういう大量生産大量消費の時代ではないですよね。地域のストーリーがあるとか、そういった商品の背景や想いを大切にする消費者は一定のボリュームで存在していて、それをコミュニティとして可視化できるのが今回のめぐるめくプロジェクトだと思っています。自分達の作る商品だけじゃなくて、他の商品にもリーチできる。同じ思想を持っている人たちがみんなで支える。コミュニティのなかで消費する時代がきているんじゃないかなと思っています。

村岡さん:「高品質×大量生産×安い」という時代を経て、情緒的価値に引き戻される現象が起こっていますよね。そういう時代の流れを感じるものってありますか?
 
岡山:NFTってまさにそういうものだと思うんです。データって結局どれも一緒なんですけど、誰から買ったかがとても重要ということがデジタルの社会の中でも出てきている。どういう価値観の人たちがいいと言っているか、どういう仲間がいるかが、価値になっている。価値観を共有できる仲間の中に、マスと接続できる人がいたりもするわけですよ。そうなればコミュニティで評価を受けたものがさらにマスに広がっていく。コミュニティで熱烈に支持してくれている人がいるからこそ起きる広がりです。見せかけのブランドではなく誰かが支持してくれている、ファンになってくれていることが、本質かなと思います。
 
 
大量生産大量消費の時代を経て、本当にいいものを選んで購入する時代に。モノが豊かな時代には、「商品のもつストーリーが本質的なものであり、ファンになってくれるかどうか」が重要になります。
めぐるめくプロジェクトによって、そのような生産・消費を求める人たちのコミュニティの輪がどんどん広がっていきます。

 「今日ここにいる人はもう、めぐるめく宮崎のメンバーです。
村岡さんの地域を巻き込む推進力が、イベント最後のこの一言に詰まっていました。
食を起点に繋がりが育まれ、みんなで商品を考え、そして消費する。
これからめぐるめく宮崎拠点が、新たな生産・消費の在り方を示す起点となっていくのを楽しみにしています。

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