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【読書】台湾の一大ブーム「文創」とは? 文創の魂に触れられる1冊『TAIWAN EYES GIDE FOR 台湾文創』


2020年10月27日、待ちに待っていた本が発売されました!
『TAIWAN EYES GIDE FOR 台湾文創(小路輔さん監修・トゥーヴァージンズ刊)』


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私も翻訳で参加させていただいたのですが
めちゃくちゃ熱い本だったので勝手にではありますが紹介させてください!

台湾好きだけでなく、全てのクリエイターが刺激を受けるだと思います!


・台湾でブームを起こした「文創」とは


同書はタイトル通り台湾の文創をテーマにしたガイド本、です。
文創に関わる51組のクリエイターが営むショップや事業の紹介、そして彼らにとっての「文創とは何か」が語られています。

そもそも「文創」とは何でしょうか?

文創の正式名称は「文化創意産業」。簡単に言うと

「古き良き」を生かして「新しい文化や価値をクリエイト」していく「産業」。

……と言われてもピンとこないですよね。

具体例を挙げると、たとえば

「日本統治時代の歴史的建造物をリノベーションしたカフェ」
「伝統的な中医学を生かしたハーブティー屋さん」
「昔から台湾に伝わる料理をとりそろえたレストラン」

など、
昔から伝わるよいものがクリエイターの手を経て現代人のライフスタイルに合った形に昇華されているという感じです。

その他の具体例は『TAIWAN EYES』や前作の『TAIWAN FACE』に詳しいのですが他、民宿、理髪店、醤油職人、文房具店、展示会のキュレーターなど
文創の守備範囲はメチャクチャ広いのが特徴だと言えます。


・文創が単なる「伝統の継承」ではないワケ


さてこの文創の興味深いところは

ムーブメントであると同時に政府が推している政策であるということ。
そしてこの動きがアートにとどまらず「産業」である点です。

アートと産業(商業)の関係性はひと続きのものなのか、相反するものなのか……これは長年議論されているテーマです。立場によってとらえ方は変わってきて、正解はないでしょう。

名称に産業をかかげる台湾の文創ではどうとらえているのか、
台湾のキュレーター集団「INCEPTION」の創業者・Ocean氏の言葉が非常に印象的でした。

抜粋すると


「産業と言うからには商業性を兼ね備えているはず」
「商業を文化の敵だとは思っていません」
「商業や産業には文化に過去、現在、未来をひもづける力があります」
「健全な産業こそが文化を悠久の存在にしているのです」(『TAIWAN EYES』より引用)

つまり、商業化が文化を伝える鍵ということ。


確かにどんなに良いものも、ただ一部の人が継承しただけで大衆の手や目に触れないようでは「歴史的産物」としてしか残りません。ここが伝統の継承の先にあるのが文創ではないでしょうか。その文創の目的を考えると産業であることが重要なんだと胸にストンと落ち、なぜ台湾では文創が重要視されているのか、なぜブームが来たのが「今」だったのか、日本にいながら台湾の文創スピリットに近づいた気がしました。

・『TAIWAN EYES』から見える日台の未来

実は似たような言葉を日本でも聞いたことがあります。
富山県のある伝統工芸の継承者で、伝統工芸技術を用いて斬新なプロダクト(製品)作りにチャレンジされている方の言葉です。

「伝統は伝統のままだと死ぬ、商業化して初めて世に伝わるものだ」

このように日本でも文創的な動きはあります。
ただ日本の場合「伝統」とつくと高尚で敷居が高いイメージがないでしょうか。
私も富山の若手伝統工芸職人のチームと知り合うまで
敷居が高いという印象を持っていました。

その点が政府推しの政策であり大衆に広く認知されている
台湾の文創との違いではないでしょうか。

文創には日本が学ぶことが多くあるのではないか…と感じました。


さて日本と台湾の関係は、台湾は日本のトレンドをリアルタイムで知っているくらい日本のことを知っているのに日本の方は……という一方通行な時代が長く続いていたように思います。


「現代の日本人に台湾が『発見』されたのは2011年」

という言葉を長く台湾と交流のある方から聞いたことがあります。

東日本大震災の際、台湾からの温かい支援により、台湾そのものそして台湾社会が日本に大変関心を持っていることが日本で認識されたということです。(『親日』という言葉とともに)

もう9年も経ちます。
そろそろ親日ワードに頼らない双方向の交流が活発化してもいい頃です。

私は文創と『TAIWAN EYES』に「日台が学び合う未来」を見ました。

読めば、台湾好きだけでなく全てのクリエイターが刺激を受けるはず!


そして文創カフェや文具店など個人旅行で訪れることができるお店もたくさん紹介されていてガイドブックとしてもお役立ちです! 私も「次の旅行ではこのお店に絶対行く!」と旅の楽しみが増えました。次の台湾旅行までにぜひ手にしておきたい1冊です。


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