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美容師とエンジニアのお客さんに対する熱量の差

Webサイト作っていると相手が人間だということを忘れがちだなと思ったので自戒としてメモしておく。

今、弊社ではTHE SALONSという美容師のシェアサロンサービスをやっている。美容師の人たちが気軽に独立できるように個室のサロンが月額で借りられるサービスだ。

そのサービスをWebを通じてどう広げていくのかという部分を僕はエンジニアとして担当して考えている。美容師の方々の地位を上げるようなサービスにするためには、当たり前だが業界のことを知らなくてはならない。

しかし、自分には美容師のことはわからない。このままだと良いサービスなんてできるわけもない。ということで、知り合いの美容師2人に会って話しを聞いてみることにした。

改めて業界や仕事のことを聞いてみると、まったく別世界で仕事をしているのだとということを実感した。

表舞台に立って自分自身を含めてブランドとする美容師と、裏方から大勢の人間を動かそうとするエンジニアだと見えているものがまったく違うのだ。

美容師は給料が安いうえに、髪の毛を切れるようになるまでのアシスタント期間が長いというのは有名な話しだ。そして髪を切れるようになるために自分自身の時間を使って、居残りで練習をしなければならない。休みもセミナーに行くのだ。そうなってくると自分の内側に閉じこもる修行のような期間が長くなる。もちろん社内で教えあうこともあるだろうが、基本的には自分自身と向き合って技術を伸ばしていく。なぜなら社内の人は仲間でありライバルという過酷な環境だからだ。そのため自分で身につけた技術というのは大事な財産となる。簡単に技術を社外や知らない人に教えるようなことをしないという気持ちが生まれてくる。秘伝のタレ的な感じ。

もちろん最近はアプリなども多くあって動画で公開している人も多いが、まだそういったクローズドな慣習が多く残っているのだ。(※ あくまでここで話す美容師はその友人の場合である)

逆にエンジニアは仕事についたらコードをすぐに書き始める。研修期間中に動いているサービスのコードを書くことなんて当たり前だ。「練習期間だから本読んで1年はプログラムの勉強してね」なんて言われた2秒でそんな会社辞めたほうがいい。そしてエンジニアは自分の技術やソースコードをオープンに世界に公開するのが当たり前だ。

話しを聞くなかでこういった考えの違いが美容師とエンジニアでは多々あったのだけれど、同じ部分ももちろんあった。それは「技術職」であり「お客さんがいる」ということだ。

ああ、なんだ美容師もエンジニアも似たようなところあるじゃん!

と思ったのだけれど、やはりそこに関する考え方は根本的に違う。美容師は1対1で常にお客さんと向き合わなければならないため、その1人のお客さんに対する熱量が異常に高いのだ。その1人が常連になるかどうかの勝負だ。毎日がオーディションだ。そしてそのお客さんに「〇〇さんに会いに来ました」と言われることが最上の喜びなのだ。

ここにエンジニアと美容師では大きな溝があるように感じた。そして見習わなければならない点だ。

エンジニアは画面越しの1対多であるため、どうしても人間として捉えられず数字というデータで見てしまう。サービスが大きくなればなるほど「お客さん」という感覚はどんどんと失われていく。それは仕方ないと思う反面で、常に意識しなくてはならない箇所なのだとも思う。「私あなたの作っているサービス使ってますよ!」と言われて「ああ、あざっす」くらいの反応ではやはり感覚がおかしくなっているのだ。

また、エンジニアはデータを信じてものごとを進めがちだ。言ってしまえば人というものの優先度が低い。インテリのサービスをスタートアップで立ち上げるとなったとき「インテリアが好きな100人と会ってどんなサービスがいいか聞き取り調査をする」という泥臭いことをするようなエンジニアはかなりの少数派だろう。会ってもせいぜい2〜3人で、他は過去の傾向やデータから予測する人が多いんじゃないだろうか。「そんな人に会うなんてリソースを使うのはエンジニアのやる仕事じゃない」というのは言い訳だ。その業界を知っているほうが良いサービスになるとは限らないが、知っている方がどんな機能を入れればいいかというアイディアは多く湧き出てくるはずだ。

リーンスタートアップ的な「まずはユーザ1人に徹底的に意見を聞き、それをサービスに取り入れていく」ようなやり方を時代遅れだという見方もあるが、実践したことのあるエンジニアも逆に少数のように感じる。やってみたら自分が作るサービスには泥臭いやり方のほうが合っているかもしれない。そもそも自分がやろうとしているサービスは、Webでやるべきことなのではないかもしれないという抜本的な考えに行き着くかもしれない。

結局はどれだけ技術が突き詰められていっても使うのは人間だ。ということを美容師と話してもっと意識しなければならないなと思った。他業種の人と話すのはおもしろい。

ただ当たり前だけれど、もっと僕自身が美容師のことを知る必要がある。もしこの文章を読んで会って話しを聞かせてくれる美容師の方や、そういった知り合いの方がいる人がいたらご連絡ください。


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