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清正ー! | 『真田太平記(九)二条城』

加藤清正の無念が…。

第8巻からすっかり加藤清正に魅了されっぱなしの私。9巻では豊臣の行末を慮り、徳川と豊臣の間を取り持つために尽力をつくしに尽くした先には、まさかの毒殺とは。

戦国の世とはこうも苛烈に天下取りに執着するのかと、徳川、いや人間の醜い部分が如実に描かれている。

真田幸村などの視点からも推理しているように、秀頼の威風堂々としたオーラ、これに一層焦りを感じた家康。こういった心理描写がとても興味深い。

何よりも二条城での面談を成し遂げた清正らの平和を願う思いと徳川家康の天下平定への欲望がぶつかり合う内容に読み応えを感じた。

また淀殿の背景を知ると、徳川に対する態度にも納得がいくところがある。

なるほど、淀殿には織田家の血筋が流れている。そもそも豊臣も徳川も織田の一大名にすぎない、というおごりもあったのではないか、という見方は自分にとって目から鱗の捉え方だった。この時代、家系・血筋の価値を加味すればこういう見方ができるのかと。

 淀君は、秀吉の貴重な跡継ぎである秀頼を生んでいるばかりではなく、伯父の信長の血も引いているし、戦国の武将として誇り高い最期をとげた浅井長政を父にもっているだけに、気位が高く、豊臣秀吉でさえ、寵愛しながらも淀君には非常に気をつかっていた。

 淀君には、伯父が信長であったという誇りが、いまも消えぬ。

 この偉大な伯父の下に、家康も秀吉も屈服し、懸命の奉公にはげんでいたものなのである。

 伯父が生きていたなら、秀吉も家康もない。
「織田の天下……」

 に屈従した一大名にすぎなかったはずだ。

真田太平記(九)二条城より

戦国の世を武運により生き抜いてきた武将がとうとう命尽きて散り逝く中、家康も自分の命が尽きる前に何とか徳川の体制を盤石に固めておかねばという焦り、それを成し遂げるためには豊臣の根を絶やしておかねばという苛つきや焦りが家康の言動から読み取れるというのも興味深い。

豊臣に気を取られすぎた家康にいよいよ真田幸村が一泡ふかす時が迫る!真田太平記、いよいよクライマックスへ!

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