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常に「できる(できそうと思う)こと」を起点に

ライターとして独立するまで、いろんな業界・職種を経験してきました。
振り返ると、物心ついた頃から移り気な性分で、将来の夢をコロコロ変えるような子どもだったように思います。

大学でグラフィックデザインを専攻したのも、当時いちばん憧れていたのが「雑誌や本をつくる人」だったから。
(ちなみにその前は新聞記者とカメラマンにあこがれていました)
いろいろ興味があることに、一番たくさん触れられる選択肢を選んだと記憶しています。
(この予想は、あながち間違いではなかったと実感するのはそれからしばらく経ってからのこと)

大学卒業後、新卒で入社したデザイン事務所は絵に描いたようなブラック企業で、心身ともにボロボロになって1年で退職。夢だったブックデザインの仕事に関われたのと、見様見真似でインタビュアー・ライターの経験が積めたのは今思えば良かったと感じるものの、「もうデザインを仕事にしたくない」と思い、プライベートでデザイン物を制作するとき以外、手を動かすことはなくなりました。

「苦労して進んだ道を諦めた」という事実は棘となり、しばらく胸の奥に居座り続け、今でも少し疼くことがあります。
でも、30代に入って出会った「文章を書くしごと」を通じて、今まで経験してきたことは全部、一切無駄になっていないと思えるようになりました。

いつだって「やりたくないことはやらない」「興味を少しでも持ったら、できそうと思ったらやってみる」ことを心がけてきたからこそ、そう思えるようになったのかもしれません。

「できそう」と思ったものも、経験を重ねるとある分岐点に直面します。
ひとつは、「できるから、つまらない」。もうひとつは「できるから、もっとやってみたい」
初めての経験は何だって刺激的です。仕事となれば人間関係を含めた就業環境も関連してきますから、何事も新鮮に感じられると思います。
でもこういった刺激は一過性のもの。慣れてくると、心地よさと同時にマンネリ感も覚えるようになります。
「刺激よりも安心が大事」という人もいるでしょう。でも少なくとも私は、「つまらない」が勝ってしまう。だから、タイミングを見計らって後先考えずにいったん区切りをつけてきました。

じゃあなんでライターの仕事は続けられているのかといえば、「もっとやってみたい」の状態が続いているから。
そもそも、ライターの仕事に限らず今まで経験してきたことで「できる」と本当に確信できていたことは、実のところ多くありません。実際には「できそうと思うし、おそらくある程度できるだろうと思うけれど、苦労もしそう。でもやってみたい」と考え行動してきたのです。

「できそう」を「できる」にしたい。
そう思えることも大事な原動力だったのだと思います。

ライターのしごとは、一つとして同じものはないと思う反面、実際には似たような話題を似たような構成でインタビューし記事にまとめる、といったことも少なくないです。
正直なところ、飽きを感じる現場もあります。

でも全体を見ると、私個人にとっては、まだまだ新鮮さを感じる場面のほうが多いという印象です。
やっぱり、人との対話から学ぶことは多いですから。
学ぶことも、できることでありもっとやりたいことのひとつなのかもしれません。だからこそ常に鮮度を保ちたい、というモチベーションが生まれやすいのだと思います。


以前勤めていた会社を退職するとき、最後のあいさつでこんな言葉を口にしました。

「やってみたい」という気持ちを芽生えさせる出発点は、「できることをやる」だと思います。
できることに向き合っているうちに「こんなことにも挑戦したい」「今まで目を向けてこなかったジャンルに興味が湧いてきた」となる。
一人ひとりが持つ「できること」を尊重し、伸ばすことで、「やってみたい」という熱意を育て、さらなる成長を後押しできるような組織になっていってください。

……当時、「できることが増えていくのが楽しいから新しいことにも挑戦したいのに、上司がゆるしてくれない」と後輩から相談を受けることがあったので、何か一言ぶつけてみたかったのでしょうが、改めて文字にすると、いろいろ含んだ言い方をしてしまったなぁと反省したくなる内容です。
(結局、相談してきた後輩は退職してしまいましたが)

でも、自分が大事にしてきたスタンスが言葉にできているなぁ、とも感じます。自分のなかにある「できそう(ほんの少しだけれど自信がある)」を、伸ばしていくことが、次の「やってみたい」につながるのだな、と。それを今も昔も大事にしてきたのだな、と。

独立後も、イベント企画の仕事に携わったり、記事に使用する写真の撮影にも対応したりと、いろいろと経験の幅を広げてきました。
最近も、「対話する」「整理する」「言葉にする」といったスキルを生かして、何かお役に立てることはないかと模索しているところです。
特に、医療や福祉といった誰もが関わることになるジャンル、あるいは社会課題の解決の取り組みなどで、生かしていけたら……。

自分の興味を自分で伸ばしていけるように、その先で出会う新しい経験を通してより成長できるように。
そのためにも、まずは自分に何ができるのかを、もっともっと掘り下げていかなければ。そんなことを思い描く毎日です。

「自信もあるし、興味もある」はいちばん強い。そう信じて。


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