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どんな結末を迎えるかわからないから、面白いし楽しい

インタビューをなりわいとして数年。クライアントからよくいわれることがある。

「伊藤さんは本当に楽しそうにお話しするよね」
「伊藤さんが楽しい雰囲気をつくってくれて、相手も楽しそうでした」

元来、ひねくれ気質が強めなので、こう言われると「いやだって誰だって不機嫌そうな人と話たくないじゃん?」と返したくなるものの、確かにインタビュー音源を聞き返すと、とにかく私の声は基本的に笑っている。本当に笑い声を上げていることもある。ちょっとおおげさすぎやしないかい?と思いつつも、手前味噌だが演技じみた感じもあまりしない。記憶を振り返っても、確かに「楽しく話ができた」と思い出せるから、やっぱりその瞬間は、楽しく会話していたのだと思う。

オーバー気味の明るいリアクションは、インタビューに携わるようになってから、もっと遡れば社会人になって間もない頃から意識してきたと思う。小さな頃、親から「暗い」だの「不機嫌そう」だの「言い方がキツい」だの言われてきた。だから仕事で接する人には努めて明るく、多少オーバーくらいがちょうどいいと考えたのだ。

インタビューをするようになって、加えて意識するようになったのが「流れ」をつくること。どういった質問であれば、相手は自然にお話しできるか、自分も楽しく聞いていけるか。そんなふうに考えながら準備し、本番を迎えるとその時の流れに身を任せてアレンジしていく。その日、その時の状態に合わせていく感じ。

音楽のセッションに近いかもしれない。相手の出方次第でどう進んでいくかわからないし、どんな結論に落ち着くかは、終わらないとわからない。終りがあるのもまた、インタビューの良いところなのかも。

どんな展開になるのか、わからないから面白い。だから自然と楽しんでしまうのだと思う。

ライターとして駆け出しの頃、取材をした方に帰り際「気づいたら取材が終わってたよ。楽しかった!」と言われたことがあった。その方はコミュニケーションに悩みを抱えていて、取材中に自身の悩みを吐露する場面があった。とっさに「愛情の裏返しで、怒ったり強く言ったりしてしまうこともありますよね」と口にしたら、その方は「そうなんだよぉ」とホッとした表情で返してきた。

思ってもみなかった。内心驚いたし、もっとその方のことを知りたいと思った。そこから、どんどん会話が弾んでいった。

最後に「楽しかった」と言ってもらえてすごくうれしかったし、先輩ライターにも「良い取材ができたね」と言われて、さらにうれしくなった。

今でも、そのときのインタビューを追い求めているのかもしれない。

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