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特別支援学校からの発信「課題を楽しいゲームに変えてみよう」

僕自身の話ですが、普段子どもたちと接する中で、厳しい指導よりも子どもたちが楽しみながら取り組めることや、自分たちで考えること生活の中で活用できることを大切にしています。

今回はそんな関わり方の1つ、「課題をゲームに変える」方法を紹介します。

課題をゲームにする…とは??

課題をゲームにと言われてもわかりにくいかもしれません。普段子どもたちと関わる中で、子どもたちにこうなってほしい、あるいはこうなってほしくないという想いから、「●●しなさい!(してはいけません!)」と厳しく注意や指導することがありませんか。

(画像はダイヤモンドオンラインより)

こちらは良かれと思っての関わりですが、子どもたちの心の中は「僕たちのことを思って注意してくれてるんだ、よし、気持ちを入れ替えてこれからは気をつけよう!」…とはなかなかなりません笑。むしろ反発したり、繰り返し注意されることで意欲を無くしてしまったりという子が少なくないのではないでしょうか。

僕たち大人が上司に指導される時もそうです。厳しい指導のおかげで成長できた、厳しく指導してほしいという方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらく、そういう方は小数でしょう。

厳しい指導はエスカレートしていく怖さがありますし、子どもたちの思考は停止してしまいます。詳しくは過去の記事で紹介しています。

それよりも楽しいと思えるものの方がいいよね、みんな意欲が湧いてくるよねというのが今回のゲームの発想です。

①服を着替える

具体的な内容を紹介していきます。

僕の働く支援学校では、毎日、登校後に校内服に着替えて活動し、帰る前に登校服に着替えて下校します。1日2回更衣の機会があります。

場面の切り替えが苦手なことから更衣するのが嫌いな子もいますし、服の前後を間違えてしまう子や間違えた服の前後を直すのをとっても嫌がる子もいます。

(画像はPinterestより)

ある時に「ここに頭入れて」とズボンを差し出してみると、「・・・」と沈黙してからこちらを見てニヤリと笑う子が。そこから僕とその子の服の間違い探しゲームが始まりました。

「ここに足入れて」「なんでやねん!」「あぁ間違えた、ごめんごめんシャツやったわ笑」なんてわざと間違える僕とそれに引っかかるまいと集中して衣服を見るその子。さらにシャツとズボンだけでなく、シャツやズボンの前後もゲームになり、いつしか自分で服前面のプリントやズボンのポケットを確かめてから着替えをするようになってしまいました。

嫌だった更衣の時間が楽しいゲームの時間になり、その子が自分から「着替えるよ」と声をかけてくれる日もでてきました。

②顔を上げて先生を呼ぶ

朝の会や帰りの会で先生や友だちを呼ぶときにうつむいたままでいる子がいました。

「顔を上げなさい!」「相手の顔を見ないといけません!」と毎回注意され、その度にうつむいてしまいます。そんな空気を変えたくて僕ことメガネ先生は先生からのお話で呼ばれるタイミングでかくれんぼを始めました。

余談ですが、相手の顔、特に目を見るのが恥ずかしい子はよくいます。そんなときには「相手の目を見て緊張しちゃうなら、鼻やマスクを見て話せばいいよ」と伝えるようにすると、気負わずに相手の方を向けることがあります。

(画像はミックスじゅーちゅより)

まずは机に隠れます。いつもの席にメガネ先生がいないことに気づいた子は、キョロキョロと辺りを見回します。そして、僕の方を指差す友だちに気づいて机の後ろまで回りこみ、僕を発見して「メガネ先生見つけた!」と嬉しそうなその子。

席に座っている友だちの後ろでチューチュートレインみたいにグルグル回ったり、相担任の先生と席を交換したり、掃除ロッカーに隠れたり、教室から廊下に飛び出したり、ひょっこりはんのように半分顔を出してみたり、僕の席の上にメガネ(本体)を置いて「どっちにあいさつするの?」と問いかけたり、僕とその子のゲームの時間になりました。顔を上げることを言わなくても僕を見つけるために自然に顔を上げて探してくれます。

というか僕を呼ぶ前に自然と顔を上げてニヤリとするようになり、相担任の先生方も真似をして隠れてくれるようになりました。

③片付ける

片付けが苦手な子はたくさんいますよね。僕も得意ではありません(やる気スイッチが入ると徹底的にしちゃいます…試験の前日とかにスイッチ入りがちですが笑)。

(画像は漫画家ゆきち先生のHPより)

溜まりに溜まったプリントや道具、おもちゃ片付けるのは気合いを入れてないといけないので、なるべくこまめに片付けておきたいところ。

わが家の子育てについての記事でも紹介しましたが、片付けるためにはまず下準備が必要です。具体的には「どこになにを収納するのかを決めて共有すること」と「写真やイラストなどでわかりやすく視覚的に示すこと」です。

(画像は環境づくりのリゾームサイトより)

(画像はごゆっくりさんより)

(画像は学校ロッカー整理より)

(画像は総和南中学校より)

そしてポイントは「片付けなさい!」と叱るのではなく、「どこに片付けたらいいの?教えて」と頼み、お片付けゲームにすることです。

大人も子どもも「やりなさい!」と言われるとやる気が出ないのに、「どうしたらいい?」「教えて」と言われるとまんざらでもなくなってくる不思議。ぜひ「どこになおすのかわかる?じゃあよーい…スタート!」とお片付けゲームに変えてみてください。お片付け競争にするなんて方法もありますよ。

(画像はHugKumより)

④間違いを探す

子どもたちは友だちや大人の間違いを指摘するのが大好きですよね笑。そんな彼らのために僕はよく間違えます。…天然で間違えるときもあるのですが、ボケのようにわざと間違えて子どもたちに突っ込んでもらい、その後に「じゃあどうしたらいいの?」と問い返します。

(画像はばぶちゃんぷより)

昔研究授業で「最後のまとめや振り返りを先生がするんじゃなくて、子どもたちの口から発表して欲しかったな。その方が子どもたちの心に残るのにな」と言われたことがあります。

間違い探しゲームから、「じゃあどうしたらいいか、どこに気をつければいいのか」を子どもたちが考え意識できるなら、こちらから一方的に発信するよりも効果的なのじゃないでしょうか。

余談ですが大人の研修会でも、「●●してください」「●●はいけません」なんて指示するように伝えるよりも、「この指導案のどこを直せばいいでしょうか?」なんて間違い探しゲームみたいにするとみなさんの取り組む姿勢が変わってきますよ。

⑤脳内でツンデレキャラに変換

子ども同士でのからかいは学校でもよくあります。からかう子にはなんらかの理由があって、その話を聞いたり、こう言った方がいいよと具体的な伝え方を確認したりします。

今回紹介するのは、からかわれた側の子の話。その子は受け流せず、反応して怒ってしまいます。もちろん嫌なことに対して「嫌だからやめて」と伝えるのは大事なことです。でも感情的にならずに伝えるスキルや、受け流せるスキルをその子には身につけてほしいなと思っていました。

その男の子はアニメ好き…なので、からかってくる男の子をアニメのツンデレキャラみたいなものだよ。君のことが気になるからからかってくるんだよなんて話してみました。

(画像は旅する亜人ちゃんより)

(画像はピクシブ百科事典より)

最初は「えぇー」と言っていたその子も、僕の適当なアフレコや「(その子の好きなアニメのヒロインキャラの)一花に言われてると想像してみたら〜」なんて言葉かけで乗り気になってきて、「もー●●は俺のこと好きやねんからーしゃあないなー」なんて言うようになりました笑

⑥ポイント(トークン)を活用する

トークンとは、ABA(応用行動分析)の手法の1つです。良い行動に対してトークン(ポイントやクラス通貨みたいなもの)が与えられ、そのトークンは後でいろんなご褒美と交換できるのです。

(画像はhaffyより)

(画像はIllustACより)

トークン制度を導入すると、嫌な課題がポイントをゲットするためのゲームに変わります。

トークン制度には賛否両論あるかと思いますが、僕たち大人も給料があるから仕事を頑張れる面もありますよね。個人的にはポイントを貯めるゲーム感覚で取り組んでいることが、気づいたら周りから感謝されることだったと気づいて(こちらも感謝や評価をフィードバックして)、ポイント云々は関係なく取り組んでくれるようになれたらいいなと思います。

周りの人を手伝ったりって、そりゃ親切心からできればいいんだと思いますが、親切心を持つきっかけが実際にやってみて周りから感謝や評価されて、それがモチベーションになって親切心が育っていくような面もあるんじゃないかと思っています。トークンについてはまたどこかでお話しできればと思います。

まとめ

わが子も含めた子どもたちとの日々の関わりを振り返ってみて、ゲーム感覚で遊びを通して取り組んでることって結構あるなぁと思い、いくつか紹介してみました。いや、家でも学校でも変わり者なメガネくんなんだと思います。

でもそんな遊びやゆるーい感じが心地いいと感じてくれる子たちもたくさんいます。ここに紹介したのは一部の成功例で、失敗作の残骸は山となって重なっていますが笑。

なにより自分も楽しい方がいいですもんね。前の職場で「メガネ先生はトトロみたいに大きな口を開けてよく笑っていますよね」と言われたことがあります。

(画像はレザークラフト&オーガニックコスメ Atelier Dice(アトリエ ダイス)の気まぐれ日記より)

普段子どもたちと関わっていて、怒りそうになることもそれはそれはたくさんあります。でも、怒って、叱って無理矢理やらせても、長い目で見たらあんまり意味ないんじゃないでしょうか。だったら、童話「北風と太陽」の太陽のように、気づいたら子どもたちが楽しんでやってるようになりたいな。そんなのを目指しながら日々試行錯誤しています。

この記事が、そんな大人と子どもの笑顔のお役に立てれば幸いです。


参考にしたサイト

1.LITALICO発達ナビ「子どもが自分で考えて動けるようになる「トークン表」とは?」

2.静岡市発達障害者支援センター「きらり」
静岡済生会総合病院 療育小児科 前田卿子「気になる子の「できる」を増やす ポジティブ支援」



表紙の画像はくらげのゲームイラストブログより引用しましたゲームに取り組む男の子の写真です。