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書籍紹介『発達障害児の偏食改善マニュアル』

『発達障害児の偏食改善マニュアル(山根 希代子/藤井 葉子)』という本の紹介です。

支援学校はじめての給食

忘れられない思い出です。

僕はエビが嫌いで、小学校のときも食べたら吐いていたし、「メガネくんが食べ終わるまで6年4組は昼休みなしです!」なんて担任から言われたので給食にはいい思い出がありませんでした。

そんな僕が支援学校で働くことになり、はじめての給食は、入学お祝いメニューの『エビフライカレー』…。

(画像は大阪教育大学付属天王寺小学校より)

正直、食べるかどうか迷ったのですが、子どものお手本にならないとという想いから、最低限咀嚼し、牛乳で流し込みました。今もエビ嫌いを公言しつつ、頑張って流し込んでいます笑(2日目には相担任の先生が「私お肉あかんねーん」と言いながらガッツリ残してしましたが…笑)

と、メインは僕のエビ嫌いの話ではなく、そのエビフライカレーの話です。

ごはんの上にカレールーをかけ、エビフライをトッピングして配膳すると涙ぐんでこちらをにらむ子が一人…実は、彼女は白ごはんが大好きで、「ごはんはごはんだけで食べたい派」だったのです。カレールーのついたご飯を全て食べて除去すると、その子はニコニコ笑顔で大好きな白ごはんを食べたのでした。それ以降、その子にはカレーやハヤシライスのルーは別皿で提供していました。

(画像はGoogirlより)

忘れられない給食の思い出です。

息子の好き嫌い相談

僕の3歳半の息子は好き嫌いが多く、から揚げとポテトとごはんとパンとお菓子が大好きですが、野菜や汁物をほとんど食べてくれません(果物やコーンスープは好き)。繊維質をあまり取らないからか便秘気味です。そのことを3歳半検診で保健師さん、栄養士さんに相談したときの内容です。

  • 食べなくても食卓に並んで慣れておく方が、心理的なハードルが下がると聞いたことがあります。本人が食べなくても毎食、少量でおみそ汁などは配膳していますがそのままでいいですか?→そのままでオッケーです。

  • 比較的食べる人参をすりおろして、ハンバーグやチャーハン、カレールーなどに入れています。→負担のない範囲でそのまま継続しましょう。

  • ミニトマトを育てて食卓に出してみました。…結局生では食べず、ケチャップにして大好物のポテトにつけてしか食べてくれませんでしたが…。保育園でも食育の一環で育てた野菜を給食でちょうりしてくれています。→慣れ親しむという意味でいい取り組みです。育てる苗を選ぶときや、スーパーで野菜などを選ぶときに、本人が「選んで」みると食べようという意欲が出てくるかもしれません。

  • 調理すると食べてくれるときもあります。→いい取り組みです。本人が調理に関わることで、「食べてみよう」という意欲がアップすると思います。また調理する前に、「どの野菜にする?」など本人に選んでもらうのも1つです。

  • 保育園の給食では比較的食べているようですが、家ではあまり食べてくれません。→保育園でお友だちと一緒という状況なら食べられるという子はたくさんいます。保育園と同じレシピで調理してみてはどうでしょうか?

  • 身長が低い方なので、きちんと栄養がとれているか心配なのですが…。→(医師から)成長曲線内に十分入っているし、果物などが食べられているので大丈夫ですよ。

  • 最近は一口食べたら、大好きなから揚げをおかわりなど交渉しています。小さな一口をほぼ噛まずにお茶で流し込んでいますが…これでいいのでしょうか?→提案・交渉したりのやりとりの中で、少しずつ「食べられた経験」を増やしていければいいですよ。

  • 便秘が気になるのですが…小児科でお薬を処方してもらっています。数日でないときは、病院で浣腸してもらうこともあります。→そろそろ3大栄養素や、野菜を食べるとうんちが出るよなんて伝えるのもいいかもしれません。

全体的によく取り組んでいらっしゃいますとほめていただきました。ほめられるとモチベーションもアップしますよね。

ここにあげた内容も参考にしてもらいつつ、そろそろ本の紹介に入っていきます。

そもそも偏食とは?

食べ物の好き嫌いといえば、僕のエビのように好みに合わないものを避けて、好きなものばかり食べるとイメージされるかもしれません。

発達障がい児の偏食はそのような選り好みとは次元が異なり、特定の食品(料理)しか食べることができないことがあります。

そして大人になったら食べられるようになるという趣味嗜好による好き嫌いとは異なり、原因が解消されなければ改善されることはありません。逆に、食事での嫌な経験を重ねることでますます拒絶してしまう可能性もあります。

そのように食べられるものが限定されると、例えば野菜を食べなければビタミンや食物繊維を必要量摂取できず、なんらかの疾病状態になるリスクが高くなります。またお菓子など高カロリーなものしか食べられない場合は、肥満などのリスクが生じます。

偏食の原因

主な原因として次の4つが紹介されていました。

1 口腔機能「上手に食べることが難しい」

噛む力が弱ければ、硬いものや繊維質のものを食べることが難しくなります。飲み込むことが苦手なら拒食や誤嚥の恐れがあります。そうなると子どもたちが「食べたい」と思っていても食べられるなくなり、食事が嫌な経験となり、ますます偏食が強くなりかねません。

食事を摂るときの口の動きは、食べ物を噛んで塊にする「咀嚼」、できた塊を喉へ送る「送り込み」、送り込んだ塊を飲み込む「嚥下」の3段階に区別することができます。

(画像は看護roo!より)

2 感覚「感覚の過敏/鈍麻」

特定の感覚に対する強いこだわりがあり、濡れたものを口にしない、カリカリした食感のものしか口にしないなどその特徴は人によってさまざまなです。極端な例では、フライの衣が「口に刺さる」ように感じて食べられないなんてこともあります。

口腔内の感覚が過敏…「コロッケの衣が棘のように痛い」「しいたけやナスを噛んだ感触が気持ち悪い」など
聴覚が過敏…「物を噛む音が気持ち悪くて耐えられない」など
嗅覚が過敏…「マヨネーズなど特定の匂いがするものが食べられない」など
TEENS「【図表でわかる!】発達障害 × 偏食 | わがままではなく体質. 理由と対応方法を解説します」より)

3 特性「発達のバラつき」

発達障がいのある子どもたちは、言葉の指示が伝わらなかったり、集中して座っていられないなど発達の凸凹から食事が進まないこともあります。また同じ食材であっても、形がかわると別物と認識してしまって手が出ないなどのケースもあります。

4 栄養状態「お腹がいっぱい」

運動量などから必要エネルギー量が少ない傾向があるそうです。そのためわちょっとしたおやつやジュースなどの摂取によりおなかがいっぱいになってしまい、食事の時間になにも食べられなくなっているということがあります。

もちろんこれらの原因がそれぞれ重なり合っているパターンもたくさんあります。

偏食への対応

偏食への対応は、情報収集、栄養管理、食事の支援、家庭との連携の4つの柱からなります。

1 情報収集

いわゆる実態把握ですね。「情報収集はあらゆる対応のスタート地点であると同時に、その効果を測定するといういみでゴール地点でもあります」と書かれていました。口腔機能や感覚、苦手な理由や好きなものを活用するための情報を集めます。聞き取りの際は、子どもの特性や保護者の方の今までの苦労や工夫を聞くと、対処のヒントや子どもの難しさがわかります。

●簡易チェックリスト
【子どものこと】
☑︎名前
☑︎生年月日/年齢/性別
☑︎身長/体重
☑︎障害/疾患
☑︎生育歴 など
☑︎発達状況、言語理解や認知 など
【食事の状況】
☑︎朝食、昼食、夕食の内容
☑︎おやつなど食事以外で口にしている物の内容
☑︎飲んでいる物の内容
☑︎食べられないもの
☑︎食事の時間
☑︎食事時の状況
☑︎食事の提供状況 など
【その他】
☑︎起床・就寝時間など生活リズム
☑︎子どもが好きなもの
☑︎家庭の状況 など

そして子どもの状態を具体的に把握していきます。
1.食べられるものの情報収集

①食べられるものを把握する

今現在家庭で食べられている食事の内容について、食材(料理)の名前だけでなく、材料、調理方法、盛り付け方、食事のあげ方、食事のタイミング・状況など可能な限り詳細に聞き取ります(例えば、レトルトカレーを食べられるように見えていても、「プリキュアカレー」だけが食べられるという場合もあります)。

②食べられるものを実際に提供し、子どもの様子を見る

観察結果は本の巻末にある資料『食事記録票』に記録して共有すると便利です。食べたもの/食べなかったものや残した量、おかわりしたものなどを記録します。

③「食べられるものリスト」を作成する

①②を参考に子どもが食べられるものをまとめてリスト化します。対応初期はこのリストをもとに、子どもが食べることができる食事を用意し、食べることそのものに慣れさせていきます。家庭以外でも安心して食べられるものがあるのだと実感してもらうのです。

また食べられるものリストの内容を参考に、偏食の原因を推測します。推測をもとに対応し、子どもの食が広がったらリストに追加する、を繰り返していくのです。

2.口腔機能の情報収集

その子の口腔機能を把握して、その状態にあった食事を提供することが大切です。子どもの「よくある」姿を紹介します。咀嚼、送り込み、嚥下のいずれかに課題があるとうまく食べることができず、「うまく食べられない経験」が偏食のもとになることがあります。

【咀嚼が原因となっていそうな場合】
・噛めるしすりつぶせるが、力が弱く固い物が噛めない
・噛めるがすりつぶせない
・前歯では噛めるが奥歯で噛めない
・歯ではなく舌でつぶしている
・噛めていない(丸呑みしている)
→咀嚼の動きを体験したり、「奥の方でかみかみして」など声をかけたり、ガーゼ食カリカリ食ねりむすびなどの食形態で練習したりする。

【送り込みが原因となっていそうな場合】
・粒のあるものを送りこめず、嫌がったり、だしてしまう
・粘りの強いものを送り込めず、嫌がったり、出してしまう
・舌で送り込めているが、とろみが少し強いと難しそう。
・食べたものが口の端からこぼれてしまう。
→ペースト食で舌の動きを引き出したり、とろみ剤で付着や粘りの強さを調整したりします。送り込みの練習にはつぶし食(ムース状のもの)、きざみ食(きざんでとろみをつけたもの)、軟固形食(握力鍋で煮た根菜など)を活用します。

【嚥下が原因となっていそうな場合】
・サラサラの水分が飲みにくい、むせる
・スパウトや哺乳瓶でないと水分が飲めない
・どの状態でもうまく飲めない(誤嚥の疑いがある)
→哺乳瓶から、ペースト状(ヨーグルトやベビーフード)、ゆるいとろみ(とろみ剤を使ったものや、飲むヨーグルト、ポタージュスープなど)、さらさらの水分を飲む、味の薄い水やお茶でも飲めるのように段階的に対応します。

ガーゼ食:スティック状に切ったニンジンを煮て、煮汁に湿らせたガーゼでくるんだもの。
カリカリ食:ジャガイモをスティック状に切り、小麦粉をつけて揚げたもの。
ねりむすび:ごはんを粒がくっつくまでつぶして、棒状にしたもの。

(画像は特選街webより)

3.感覚を確認する

本で紹介されている一部を紹介します。まずは好みの感覚に合わせ、徐々に広げていくことが基本方針になります。

①触覚

  • 濡れるのが苦手で、味噌汁やスープなどの汁物、煮汁に浸した煮物などが食べられない

→水遊びや花の水やりなど濡れることになれ、楽しむ機会をつくる。汁物などは汁と具材の皿を分けて提供し、気に入った味の汁を少量からなめるなど徐々に取り組む。また好きな具材から取り組む。

  • コップや食器が唇に当たるのを嫌がる

→口にあたる面積が少ないストローを試す。生活の中でシャボン玉遊びなど、唇にものが触れる遊びを取り入れ、感覚に慣れさせる。

  • ねっとりしたもの、カレーのような形状のものが食べられない

→ねっとりした感覚を極力なくすよ、腹巻きの皮などに薄くルーを塗って揚げたものを提供する(食べられるようになってきたら徐々にルーの量を増やしていく)。甘いものが好きなら、ヨーグルトやクリームのようなデザートから慣らしていく。

  • スプーンを嫌がる

→スプーンを嫌がる場合は、金属が苦手な場合が多いので、シリコン、プラスチック、木製のものに変えてみる。好きなキャラクターのものを使用する。

  • おかずが少しでも冷めると食べない

→まずは子どもの好みに合わせて温度を調節する。その後、温め方や冷まし方を徐々に弱めていく。食べる量を調整してお腹をすかせておく。

②固有感覚

  • ポテトチップスやスナック菓子などサクサク、カリカリしたものしか食べられない

→揚げ物しか食べない場合、苦手なものは揚げて提供する。食べにくい場合は食材を細かくし、徐々に大きくしていく。揚げる→焼く→煮ると段階を踏んで提供していく。

③聴覚

  • 大人数で食事をすると、周囲の音に反応して食事に集中できない

→静かな別室で食事を提供し、しっかり食べられるようになってから、徐々にほかの子どもと近づけていく。ほかの子どもよりも早く食事を始める(後からほかの子どもが食べ始めてうるさくなっても、気にせず落ち着いて食べられる場合もある)。音の原因を説明すると気持ちを切り替えて食事へ向かうこともある。

④嗅覚

  • 魚の匂いが苦手で食べられない

→調理後に匂いの苦手な食材を取り除けば食べられる場合は、できるだけその食材を一緒に調理し、調理後に取り除いて提供する(食べ慣れれば、少しずつ苦手な食材を残したまま提供する)。一緒に調理したものが食べられない場合は、調理段階でその食材を取り除く。例えば魚のにおいが苦手な場合は、魚介出汁や練り製品など元の食材に近いものから取り組む。

⑤味覚

  • 味がないと飲めない/味が強いと飲めない

→ミルク、牛乳、ジュースなどを好み、水やお茶などを飲めない場合は、現在飲んでいる水分を10ml単位で水と差し替える。月単位で取り組み、抵抗なく飲めるやつになってからさらに薄めていく。味が強いと飲めない場合は、反対に水にかすかに味がつくかどうかというところからスモールステップで始める。

  • さまざまな味が不安

→新しい飲み物を試す場合は、食事の好みに近いものから始める。今飲めているものとは別の容器で提供し、最初は少しなめる程度から始め、「ミルクだよ」など名前を伝えていく。

⑥視覚

  • 食材を覚えにくく、形状で食べるかどうかを判断する

→この状態の多くは食材の種類ではなく形状で見て噛みやすいかどうかを判断していることが多い。好きな形状の中に食べたことのない食材を同じ形状にして入れていく(せん切り状だと食べられる場合、ひじきに人参、春雨、玉葱、糸こんにゃくなど)。口にしながら、形が違っても給食にあるものと同じだとわかるように取り分けていくと、理解して食べられるようになることが多い。

  • 同じ容器でないと食べない

→まずは慣れた食器を利用しながら、他の食器も見慣れさせて、いい印象を持ってもらう。しばらく継続して慣れてきたら、おかわりを別の食器に入れて提供し、おかわりを別の食器から、慣れた食器に移し替えるところを子どもに見てもらいながら食べさせる。別の食器にあっても同じものだも分かると、給食など別の食器から食べられるようになっていく。

  • 同じメーカーの既製品でないと食べない

→本人の目の前で食器に移して食べてもらう。これに慣れてきたら、子どもの見えないところで同じ食器に盛り付ける。それにも慣れてきたら、盛り付けていたものを少し減らし、違うメーカーのものを別皿で、横に置き続ける。見慣れ、お腹がすいたときに別皿に手が出るようになると、他のメーカーのものも食べられるようになる。

2 栄養管理

実際の対応では食事量のコントロールも行います。減らしすぎやろ増やしすぎを防ぎ、栄養状態を管理することが大切になります。

①食事記録を提供してもらう

②摂取エネルギー量を計算する

日本食品標準成分表を参考に、エネルギー量を算出します。アプリやソフトを使うと便利です。

③栄養状態を確認する

栄養・子どもの発育に関するさまざまな数値を用いて、現在の子どもの栄養状態を確認します。

●推定エネルギー必要量

体重×年齢の基礎代謝基準値×活動レベル+エネルギー貯蓄量で算出します。発達障害児は活動量などの関係で少ない場合もあるそうです。

(画像は母子栄養協会より)

●成長曲線

過去の身長体重からの変化も記録します。偏食への対応をすすめると同時に、指数が適切な数値になるよう食事内容を調整することで、子どもの健康が保持されます。

(画像はすくコムより)

●カウプ指数

体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出します。乳幼児のBMIのようなものです。

(画像はすくコムより)

④集めた情報をもとに、対応をすすめる

②の摂取エネルギー量と③の推定エネルギー必要量を比較し、大きく異なる場合や体重過不足がある場合は、どう調整していくかを検討します。また身長体重の変化や偏食の改善状況とあわせ、適宜、必要エネルギー量を設定していきます。

3 食事の支援

子どもが食べられるように食事の形態を変更したり、味や見かけを整えたり、子どもと提案・交渉などの駆け引きするなどさまざまな方があります。具体例はもういくつか紹介しましたね。この先でもいくつか紹介します。

子どもの実態に合わせること、好きなものを活用すること、スモールステップで取り組むこと、じっくり時間をかけることが大切ですね。

食べることができる食材が広がるためには、

①好きな食材のおしまいがわかる支援
②次の食材に手が出るタイミングを待つ


の2つが大切なポイントだと書かれていました。

4 家庭との連携

子どもたちのことを一番よく知っていて、子どもたちが最も長い時間を過ごす場所である家庭との連携なくして偏食の改善は見込めません。偏食改善という目標に向けて家庭と足並みをそろえていくことが大切です。

具体的な支援の手立て

1 食材に手を出しやすくする

①食材が、目の前の「それ」がなんなのか、こどもたちにわかりやすいように調理、盛り付け等をを工夫する。

→食材が混ざった酢の物などは食材ごとにわけて提供する。形態食は元の食材と似せて提供すると次の段階へ移行しやすい。汁物は汁と具材を別で提供する。

②「間の食感」を用意する。

→揚げる、焼く、煮るのような段階をふむ。丼ものなどは一皿で完結せず、複数の皿に分けて提供する。大好きなメニューの量を減らし、少しずつ品目を増やす。

③とろみを利用する。

2 間食への対応

①袋や箱から直接ではなく、容器に入れて提供し、そこから食べるようにする(空の容器を見ると「おしまい」がわかる)。

(画像はTHE ANSWERより)

②泣いて要求しても応じない(泣いて暴れたときにお菓子をあげてしまうと、そうすれば要求が叶うと勘違いしてエスカレートしてしまうことも)。

③子どもの目に入らない場所にしまう。

3 立ち歩きへの対応

①食事の時間を決める

食事時間を3食と間食の4回に決めて、それ以外の時間はお茶や水などにし、食事の時間があること(いつでも自由に食べられるわけではないこと)をわかってもらいます。子どもが泣いたり暴れたりしてもあげずに、一緒に遊びます。

(画像はオリーブオイルをひとまわしより)

②食事の長さを決める

最初は1時間半かかっているなら、次は1時間20分で食べなかったら片づけるなど、だんだん食事時間を短くしていきます。子どもたちはウロウロしていると片づけられることと、食間があいて空腹を経験することで、食事の時間に食べておかないと大変ということがわかり、食事に集中するようになります。保育園や学校の給食時間を見越して練習していきます。

4 早食い・かきこみへの対応

早食いやかきこんで食べると窒息の危険性があるほか、口の中に多く詰めこみすぎてうまく噛めないこともあります。適当な量をゆっくり噛んで食べることを継続します。

①すくいやすい食器に少しずつ入れて、口が空っぽになったら次をあげる。

次々に口に入れてしまったり、口の中に食べ物があるのに飲み込んでしまう子には、このようにして口の中が空っぽになる感じを意識してもらいます。わんこそばスタイルですね笑。

②鏡で自分の姿勢を意識する。

動画の操作が上手でなく、前かがみになってかきこんだり、流し込んだりしてしまう子に有効です。

③言葉がわかるようになってきたら、数などでよく噛むことを伝えながら、だんだん目の前に置く量を増やしながら、ゆっくり食べられるように声かけなどをしていく。

5 飲み物への対応

①味を一定にし、慣れてきたら別の味に挑戦する。

新しい飲み物にチャレンジする場合、普段は好きなものを飲み、練習する時だけ別のものを飲むという対応だと、なかなか味覚が安定せず定着しません。普段飲んでいるものから味を一定にして、様子をみながら少しずつ変えていきます。好きな味のものは間食の一部として提供すると、もらえる時がはっきりして子どもにとってもわかりやすいです。

②お茶や水を飲めるようにしていく

お茶や水といった味のしないものに慣れておくと、糖分などの栄養管理が簡単になり、集団への対応にもつながります。こだわりの強い場合には、あらかじめメニューを提示したり、空っぽシール帳を利用するなどが有効です。

6 果物への対応

①最初はしぼり汁からはじめる

大人が子どもの目の前で果物を絞り、そのしぼり汁を子どもの口につけることから始めます。子どもが自分から汁をなめたりするようになるまで続けます。

(画像はClub Tablero de Comandoより)

②子どもに果汁を絞ってもらう

③汁に粒を混ぜてみる

7 道具の活用

①食育マット

黄・赤・緑に食材をグループ分けしたマットです。食べ物にはそれぞれの働きがあり、さまざまな食材をバランスよく食べることを伝えるのに使います。

(画像はAmazon.co.jpより)

②からっぽシール帳

食べる課題や食べるとができた記録をわかりやすくしてくれます。まずは少ない量からスモールステップで取り組みましょう。本に付属しています。

③食べるスケジュール

「1.ごはん、2.カリカリ…」などのようにどういう順番で食べていくかをスケジュール化します。子ども自身が順番を決めると食事に対する意欲も高まります。

④食材カード

食材カードで食材の見た目と名前を覚えることで、料理で形や色などの見た目が変わっても食材がわかりやすくなり、食べるきっかけになります。

(画像はAmazon.co.jpより)

(画像はASKULより)

8 食具の工夫

すくいやすいお皿、持ちやすいスプーン、口の大きさにあったサイズのスプーン、金属が苦手な子にはシリコン製のスプーンなど、便利な食具がたくさん市販されています。

(画像は楽天市場より)

(画像はアビリティーズより)

(画像はゴムQオンラインショップより)

9 市販品や残り物の工夫

偏食への対応を毎日毎日イチから準備するのはとっても大変です。前日の残り物や缶詰(サバ缶などなら骨を気にせず提供できます)などの市販品も利用していくことで負担が軽減できます。本ではレシピ例も紹介されています。

10 生活の工夫

①おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんなどが好きな物をあげてしまう

預けたりするときに、お菓子などをあげすぎてしまう場合は、あげるおやつなどを決まった容器に入れて、それを挙げてもらうようにするといいでしょう。

②お手伝いをしてもらう

料理を盛り付けてもらう、運んでもらうなど、お手伝いは身体の発達や心の発達に良い影響があるそうです。子どもたちが関わる機会をつくりましょう。

③クッキングなど

皮をむいたり、混ぜたり、卵を割ったりなどのクッキングは、食材の変化や食材の名前を知り、親しむ機会になります。感覚過敏のある子にとっては、慣れないものに触れる機会にもなります。

④運動

「空腹は最高のスパイス」とも言いますが、偏食を改善するには、お腹をすかすことが大切です。できるだけ、外で遊ぶ時間をつくり、お腹をすかせて食事時間を迎えましょう。

⑤一緒に食べる

偏食があると、子どもが食べるものだけを食卓に出したり、他の人と別の時間に食べさせていることが多いようです。周りの人がおいしそうにたべている姿を見ることも食を広げるきっかけになるので、たとえ食べなくても家族と同じ料理を子どもの分として少しでも食卓に並べ、一緒に食べるようにしましょう。見慣れてくると口にすることもよくあるそうです。

⑥大皿で食べる場合の注意

大皿にもった料理を家族で食べ分ける場合、自分の量がわかりにくく、家族の分もほしくなって要求し、要求が毎回になることも。お菓子の対応と同じで、あらかじめ個別のお皿に持っていると、自分の量がわかります。

まとめ

紹介した以外にも本では細やかな方法やマニュアル、レシピ、資料が写真やイラスト付きで紹介されています。

また別の記事でも紹介した『「自閉症スペクトラムとこだわり行動への対処法(白石 雅一)』には好きなキャラクターの型抜きなどを使ってパンやごはんが食べられるようになった子のエピソードも紹介されていました。好きなものの活用も大切ですよね。

今回改めて感じたのは、子どもの実態把握とスモールステップで目標を設定し、トライアンドエラーで取り組んでいく支援の基本となる関わり方の大切さです。当たり前ですが、食事でもその基本は変わりません。

それとみんなと同じ場所でみんなと同じものを食べれると言いながらという理想と、その子の実態を無理矢理に埋めようとはせず、その子の今いる位置からスモールステップで取り組むことの大切さも再認識できました。

偏食など食事で悩んでいる方にぜひおすすめの本です。

もちろん食事の時間が苦行の時間にならないように、楽しく食べられることも忘れないでくださいね。


参考にしたサイト

1.ななほし広場「白いご飯しか食べないなどの自閉症スペクトラムタイプの子どもの偏食。「不安」を取り除けば解決できる!」



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。