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体験記事「ブラインドサッカー 地域リーグ2022」

先日、ブラインドサッカー 地域リーグを観戦してきました。

(画像は日本ブラインドサッカー 協会より)

ブラインドサッカーとは

ブラインドサッカー(ブラサカ)は、別名「5人制サッカー」としても知られる、視覚障がいのある選手を対象とするサッカーです。1チームは4人のフィールドプレーヤーとゴールキーパーで構成され、ゴールキーパーは晴眼(視覚障がいの無い選手)、または弱視の選手が務めるのですが、フィールドプレーヤーは視覚障がいのある選手でなければなりません。

フィールドプレーヤーは個々の見え方による有利不利をなくすため、アイマスク(目隠し)着用の義務があり、視覚を遮断した状態でプレーします。チームにはフィールドプレーヤーの目の代わりとなる「ガイド」と呼ばれるメンバーがいて、相手ゴールの裏に立ち、ゴールまでの距離や角度などの情報を声や音で伝える役割を担います。それ以外にも視覚障がいのある選手がプレーできるよう工夫されています。

例えば、サイドライン上には選手やボールが飛び出さないよう、高さ1メートルほどのフェンスを立てます。フェンスは選手が触って自分の位置を知る目安にしたり、ボールを意図的に蹴ってバウンドさせ、その跳ね返りを利用してパスしたりする目的でも使われます。

またボールを持った相手に向かっていくときは衝突を避けるため、守備側が「ボイ」と声をかけるルールがあり、違反するとファウルになります。

フィールドプレーヤーに情報を与える役割は味方チームの3名が担います。ゴール裏から「8メートル、45度、シュート」のように、ゴールの位置などを伝えるガイド、主に守備に関する情報を与えるゴールキーパー、そして、監督(コーチ)がサイドフェンスの外からピッチ中盤の選手に指示を出します。それぞれ声をかけられる範囲が決まっており、範囲外の選手に声をかけるとファウルになるのです。

ボールは中に鉛が仕込まれた特製のボールで、転がると「シャカシャカ」と音が鳴ります。選手はボールの音やガイドの声などを頼りにプレーするのですが、想像以上に激しく、スピーディーなプレーに驚かされます。

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(画像は日本ブラインドサッカー協会より)

周囲の音声に耳を傾ける選手を妨げないよう、観客にはプレー中、静寂が求められます。ただし、得点が決まったときは大きな歓声で選手を称えてもオッケーです。このメリハリある観戦スタイルも、ブラインドサッカーの醍醐味です。

日本ブラインドサッカー協会のブラインドサッカー観戦ガイドや日本障がい者スポーツ協会の「かんたん!ブラインドサッカーガイド」を参考にしてみてください。

以前の練習体験記

以前にブラインドサッカーの練習を体験させていただく機会がありました。もう3年近く前ですが、そのときのことを少しだけ。

一応、盲学校歴10年で、フロアバレーボールやグランドソフトボール、などの視覚障がいスポーツではアイシェードを着用して全盲プレイヤーとしてプレイしてきました。

ボールに鈴が入っているので、グランドソフトボールやフロアバレーボールよりはボールの位置はわかりやすかったです。

でも、ブラインドサッカーはボールに触れられるのが足だけなので面がすごく少ないんです。位置は分かっているのに股抜けしてしまうことがめちゃくちゃありました。フロアバレーボールも、グランドソフトボールも、ゴールボールも、スライディングしながら全身でボールを止めにいきますから、その感覚の差が出ました。

トラップやドリブルも、足でタッチした後は足から離れるとボールが消えるのですぐに位置を確認しないといけません。特にドリブルはこまめにタッチしないと、本当にすぐどこかにいっちゃうんです。簡単にやっているようにみえて大変だと実感しました。

ピッチは40メートル×20メートルでフットサルコートくらいです。

広い空間で触って確認できるのはサイドラインの壁くらいなので、空間把握がすごく大切になります。自分が今どこにいて、そこからどこへ移動するのかや、パス・ドリブル・シュートをするのかがわからないといけません。

僕の見学したチームでは、ピッチを自チームコートから見て、奥・真ん中・手前に3分割し、それぞれ相手ゴールに向かって左から、1・2・3(奥の相手ゴール付近)、4・5・6(真ん中のセンターライン付近)、7・8・9(手前の自チームゴール付近)と数字で場所を区切り、そこへ移動やパス、ドリブルをしていました。

コート図と番号の位置関係をあらわした図

ゴールも自分がシュートする位置から、左・真ん中・右に3分割し、それぞれ上から1・2・3(左上・左中・左下)、4・5・6(真ん中上・中央・真ん中下)、7・8・9(右上・右中・右下)に数字が振られています。

ゴールと1〜9の位置を示したあらさま

ピッチ上では、自ゴールの裏のコーラーとゴールキーパー、監督の声を頼りに、「頭の中のイメージ」とリンクさせて、広い空間を動かないといけないのです。

フロアバレーボールのネット、ゴールボールのライン、グランドソフトボールのベースのようにこまめに触って位置を確認できるものがないので、空間認知や位置感覚がすごく大事だなと感じました。てか難しい…。

ゴール裏のコーラーも体験させてもらいました。

(画像はスポ育キッズより)

ゴール付近12メートル以内になると「ゴール、ゴール」や距離、ゴールからの角度などの声かけが可能になります。

距離は8メートル辺りで一旦声かけをし、選手がトラップして6メートルくらいからシュートするのがセオリーだそうです。

選手が近くなると「ゴール、ゴール」の声かけをしながらよく観察し、8メートル付近で「8メートル」、人によっては「6メートル」の距離の声かけや「45度」「正面」「角度なし」などの角度の声かけ、さらに先ほどのゴールの番号に合わせたシュートコースの位置も…と伝える内容が多くて混乱します。

それ以外にキーパーやディフェンスの位置や空いてるシュートコースなんかも声かけできるそうですが、そんな余裕はもちろんありませんでした。

また選手によってしてほしい声かけも違うそうで(シュートまでのスピードで、声かけのタイミングも変わるそうです)、実際体験してみてコーラーの大変さがよく分かりました。

そんな感じで体験を終えました。その後はなかなか参加できず、気づけばコロナ禍に…そんな中で読んだ本『マイノリティデザイン』を通して、ブラインドサッカーを観戦したい気持ちが湧いてきました。

そんな過去を思い出しながら、今回観戦しました。

ウチの子たちの観戦

さて、子どもたちとブラインドサッカーの試合を観に行くのは2度目。とはいっても、前回は息子2歳と娘4歳で試合よりも会場内に咲いているタンポポの綿毛を探すほうに夢中になっていました笑。

今回は息子3歳、娘5歳です。成長は見られるのでしょうか?笑

事前に子どもたちには、「(アイシェードを着けて)目が見えない状態でプレイしていること」「声やボールなどの音を頼りにプレイしていること」「だからゴールしたとき以外は静かにしておくこと」「パパの教え子があること」を伝えています。

「パパのチームはどっち?」「●●くんは何番?」「ほんまに見えてないの?」などと興味ありげな二人。

しばらく観戦していると、娘から「見えないから、聞いて動いてるねんな」「だからあそこ(ゴール裏)で声出してるの?」なんて質問が飛び出してきます。タイムのときに、両チームがサイドラインをバンバン叩くのを見て「試合中やのに叩いたらあかんやん!」と怒ったり(音で「ここに集まって」と伝えているんだよと解説)、点数を見て「今は●●が勝ってる」「あと1回ゴールしたらパパの(応援している)チーム勝ちやな」なんて言葉がたくさん出てきて、めちゃめちゃ考えてるやん!と驚かされました。

僕自身の観戦

僕自身はバスケットボールは小中高9年間やってきましたが、サッカーには縁がなく、観戦などもあまりしません。大学時代の友人と年数回フットサルandバーベキューをするくらいです(コロナになってからしてないけれど…)。

なので戦術的なことはわかりませんが、ドリブルで突破するときの方向を伝えられたり、それを聞いたプレイヤーが逆サイドに進むフェイントをしてから切り返したりしたら面白くなるのにな(できるのかどうかは知りませんが…)なんて思ってました。バスケットボールも、フロアバレーボールもフェイント好きなもので。

推しのチームは押され気味でしたが、教え子のドリブル突破とシュートで押し返していました。

3年くらい前には、ボールへ向かって走っていく姿には少し恐怖心が見られました(もちろんあって当然だと思います)。でもかつて日本代表メンバーだったという僕の先輩がボールへと突き進んでいく姿には、恐怖心なんてなく、ただがむしゃらにボールを求めているように感じたのです。

それがこの試合では、教え子には恐怖心は見られずがむしゃらにボールを求め、攻撃に守備にと八面六臂の大活躍でした。

試合後に少し声をかけれたのですが、そんな成長を見ることができたのが一番の収穫です。

まとめ

オリンピックやリーグ決勝戦とはまた違うのかもしれませんが、じっくり生での観戦、楽しませてもらいました。

別のコートでの試合を終えたサッカー少年やボランティアの学生さんたちが、試合を見ながら「すげぇ…」となっているのを観ると、同じ観客のはずなのになんだか嬉しくなってしまいます笑。

どんどん大きくなる子どもたちと一緒に、また観戦したいなぁと思います。