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塾と学校の違いとは

連日、たくさんの方がリプライをくださり感謝しています。教育には正解が無いということを、皆さんからのリプライを読んで改めて実感しています。こういう形の交流が生まれて、僕自身が一番刺激を受けています。

さて、今日のテーマは「塾と学校って何が違うの?」です。学校で働いていたらわりとよくされる質問なのかなと思ってお題にも選ばせてもらいました。

学校とは一体なんでしょうか。現在の役割で言うのなら、学校は「セーフティーネット」なのかなと僕は考えています。すべての子どもに(国籍の事情などで入れていない子どももいますが)一定水準の教育を与えることは、子どもの本来持つ権利そのものです。そのように考えると、学校と塾を比べることはナンセンスです。成り立ちも存在意義も全く異なる両者を比べることなどできません。

では、なぜ、比べられるのか。それは「同じようなことを教えているから」でしょう。塾というのは(もちろん様々な形がありますが)、希望する学校へ進学するための補助をしてくれるサービス業です。日本では希望する学校へ進学するために必要なことは「ペーパーテスト」で求められる水準以上の点数を取ることが一般的です。その方法を効率よく身につけさせてくれるサービスを提供してくれているのが塾です。

学校はどうでしょうか。学校は「すべての子どもに一定水準以上の教育を与えるセーフティーネット」と説明しましたが、実は学校教育の中でも「ペーパーテスト」の持つ意味が大きいのです。

教育の成果とは数値がしにくいものです。自分が「適切な教育を行なっているか」という問いに対して、すべての教員が自身を持って「yes!!」と答えられるのならば、そしてそれをすべての保護者に納得させることができるのなら、テストなんてものは必要ありません。学習指導要領に定められた内容を粛々と実践していけばいい。

でも、それらが子どもたちに身についているのかを客観的に説明することはやはり難しい。そこで、単元ごとにペーパーテストを行なっています。子どもたちの理解度を測るという意味も、もちろんありますが、何よりも先生方が子どもたちに学習指導要領の内容を教えていますよという客観的資料こそがペーパーテストなのかなと考えています。

これは先生自身のためでもあります。先生自身の指導内容がしっかりと子どもたちに残っているかを測る資料としてペーパーテストはわかりやすい。しかし、ペーパーテストで測れる力というのは子どもたちの身につけた力の中の極々一部分に過ぎない。このことが抜け落ちてしまうことが多いです。つまり「ペーパーテストさえ点数が取れていれば子どもたちは学習内容が身についている」という誤解が起きてしまう。

この誤解による学校での指導と、進学におけるペーパーテストが見事にマッチした結果、学校と塾での学習内容が似てきてしまっている。僕はそう考えています。

上記の質問に戻りましょう。「塾と学校って何が違うの?」。答えは「今の君たちからみたら、同じに見えてしまうよね」です。いや、同じなんて塾関係者の方々に申し訳ありません。日々の忙しさに教材研究もろくにできない労働環境の中で、毎日様々な教科を6時間分教えている小学校教員の授業は、塾の講師の方々に及ばない部分も多いでしょう。

塾はサービス業です。サービス業は提供するサービスが悪くなれば客は離れていきます。常に競争の中に身を置いている分、我々教員よりも授業研鑽についてはより必死に行なっていると言う分析はあながち外れていないとも思っています。

さて、小学校教員である僕がここまで書いてしまうと何だか虚しくなります。学校とは一体、何のためにあるのか。しかし、不登校の児童生徒が16万人を超えている今、すべての子どもに一定水準以上の教育を提供する役割を持つ公教育としての学校の位置づけはどんどん怪しくなっています。

塾がサービス業であるのなら、そこにはお金が発生します。これは、すべての子どもに開かれたものではありません。我々公教育にいる公立学校の教育は、お金がなくてもすべての子どもに開かれています。この意味を考えた上で「ペーパーテスト」に頼らない評価基準を持って、すべての子どもたちに提供する「教育の中身」の議論をしていかなといけません。

と、ここまで書いてもやはり虚しい気持ちになってしまいます。中身のない空虚な言葉でした。

来年度、おそらく担任になりそうです。僕は、目の前の子どもたちにどんな教育を提供できるのか。ペーパーテストの結果だけに満足しない教育を提供できるのか。そして、子どもたちから「塾と学校って何が違うの?」と聞かれないような教育を提供し続けられるように。学び続けます。